- 2.25点
- ( 海外 )
- 『精霊を統べる者』P・ジェリ・クラーク
- 2点
- ( 海外 )
- 『無限病院』韓松
- 『ロボットの夢の都市』ラヴィ・ティドハー
- ( 国内 )
- 『鹽津城』 飛浩隆
- 『地球へのSF』 日本SF作家クラブ 編
- 1.75点
- ( 海外 / 国内 )
- 『長安ラッパー李白 日中競作唐代SFアンソロジー』 大恵和実 編訳
- 1.5点
- ( 海外 )
- 『妄想感染体 上・下』 デイヴィット・ウェリントン
- 1点
- ( 海外 )
- 『銀河之心T』 江波
- 『時間移民 劉慈欣短篇集U』 劉 慈欣
- 『タイタン・ノワール』ニック・ハーカウェイ
- ( 国内 )
- 『一億年のテレスコープ』 春暮康一
- 『推しはまだ生きているか』 人間六度
- 『コード・ブッダ 機械仏教史縁起』 円城塔
- 『屍者の凱旋 異形コレクションLVII』 井上雅彦 監修
- 『死人の口入れ屋』 阿泉来堂
- 『死んだ山田と教室』 金子玲介
- 『知能侵蝕〈全4巻〉』 林譲治
- 『パンダ・パシフィカ』 高山羽根子
- 『ビブリオフォリア・ラプソディ あるいは本と本の間の旅』 高野史緒
- 『マン・カインド』 藤井太洋
- 『未来経過観察員』 田中 空
毛利 信明 さん
- 元日に能登半島地震で幕を開けた1年が終わりました。いろいろな出来事がありましたが右から左へと忘れていってしまいます。
- 齢のせいにはしたくはありませんが。ボケ防止のためクロスワードパズルをやっていても言葉がなかなか思い出せません、古い家電の起ち上げが遅くなるように。体の不具合は相変わらずですが、何とか入院もせずに1年を過ごすことができました。毎年神社で願うのは健康で過ごせるように、ということ。
- 令和6年のSF界の状況を箇条書きにしてみますと、
- @ 相変わらず中国(台湾)や韓国のSFの継続的な紹介が順調に。『台湾文学コレクション1近未来短篇集』『長安ラッパー李白』『派遣者たち』『無限病院』など。
- A 国内外の短編集やアンソロジーの出版も着実に。個人短編集では『射手座の香る夏』『ビブリオフォリア・ラプソディ』『わたしは孤独な星のように』『離魂心中』『生命活動として極めて正常』『銀河風帆走』『スメラミシング』『ミステリ・トランスミッター』『かめたいむ』『交差点の天使』など。アンソロジーでは『シリコンバレーのドローン海賊』『屍者の凱旋』『野球SF傑作選』『地球へのSF』『サイボーグ009トリビュート』『恋する星屑』『トウキョウ下町SFアンソロジー』『AIとSF2』『メロディアス』など。
- B 新訳本の刊行。訳文が今風にバージョンアップ。『歌う船 完全版』『10月はたそがれの国』『ロードマークス』など。
- C 若手作家では創元SF短編賞やハヤカワSFコンテスト出身の作家の短編集が多く出版される。なかでも坂崎かおるの活躍が目に止まる。純粋なSFとは言えないが独特の作風で『嘘つき姫』『海岸通り』『箱庭クロニクル』。SF界の立ち位置で言えば高山羽根子に近いか。
- D ノンフィクションの出版で目立ったもの。『SF作家はこう考える』『AIを生んだ100のSF』『ディストピアSF論』『SF評論入門』など。
- では、いつものように読んだ順に。突出した作品が少なく(言い換えれば粒ぞろい)、興味を持てる長編作品もあまりなく選ぶのに悩みました。短編集やアンソロジーにいいものが多かったような気がします。
- ○『マン・カインド』(藤井太洋著・・・連載完結後、すぐに単行本化されると思っていたが、その前に星雲賞とは。戦場ジャーナリストが取材していく中で遺伝子操作による出産が新人類の誕生に関係することがわかり・・・。藤井版『継ぐのはだれか』といえる)
- ○『推しはまだ生きているか』(人間六度著・・・タイトルからあまり期待していなかったが様々なジャンルのSF作品があり、それぞれに充実した内容で読ませる)
- ○『知能侵蝕 全4巻』(林譲治著・・・最近の作品には異星人とのコンタクトものが多いようだが、これも例にもれず。冒頭のつかみからぐいぐいと読ませる展開、4巻で終わるのかと心配されたが最後はSFらしい結末に。戦記物を得意とする作者だけに戦闘シーンは読み応えあり)
- ○『鹽津城』(飛浩隆著・・・文芸誌掲載のものが多い。そのせいか難読漢字が多用されたり、酉島伝法風の使われ方をしたり。どれもいいが特に表題作がある種神話のような作りで、異物に侵蝕され現実が変容していくさまが何とも言えず心に残る。寡作だが作風から残念ながら量産は無理だろうと推察される)
- ○『銀河之心T』(江波著・・・珍しや、中国版スペースオペラ。スペースオペラはとうに卒業した私も読んでみようという気になる。三部作なので評価はこれからだが一応満足。 翻訳に漢字が多用され、本家とは違う独自な感触の作品となっている。「銀河在上!」の言い回し、流行るか)
- ベスト5以外には 『一億年のテレスコープ』(若いころであれば宇宙の謎の探索というテーマにしびれ、迷わずベストに選んだのだが)『コード・ブッダ』(ユーモアある文章であちこちにくすぐりというかパロディがちりばめられていて部分的には楽しめたが自分とは相性が悪い)SFよりのライトノベルでは『未来経過観測員』『少女星間漂流記』『はじめてのゾンビ生活』などが印象に残った。巷では評判の『ここはすべての夜明けまえ』は水準作であるのは確かだが、平仮名づくしの文章の中、漢字の使い方に少々違和感をおぼえた。個人短編集でどちらもテクノロジーを中心に据えた『暗号の子』と『まるで渡り鳥のように』、大雑把な言い方を許してもらえれば前者はベースに流れるのは「悲観的」な哀しみ、後者は「楽観的」というか前向きな読後感を抱いた。
- さて、今年はどういう作品に出会えるのでしょうか。
木 海 さん
昨年ご紹介した作品の中から、『黄金蝶を追って』所収「日曜日の翌日はいつも」と『わたしたちの怪獣』所収「ぴぴぴ・ぴっぴぴ」は、すでに中国で翻訳出版されました。毎年、大いに盛り上がります! 順調にいけば、2025年には『2024年日本SF小説選(仮)』を出版する予定です。 同人誌やウェブ掲載のSF作品も非常に注目されています! 以下、各1点です。
- 『屍者の凱旋』(井上雅彦 監修)
- SFの世界では、死者を畏れすぎる必要はない。引き続き、多様な『死』と『屍』の世界が広がる。
- 『死人の口入れ屋』(阿泉来堂 著)
- 幽霊の力を借りて、善悪の報いが爽快! でも、たまに背筋が寒くなる…。
- 『死んだ山田と教室』(金子玲介 著)
- 彼は過去に残された。鮮やかで残酷な青春。予想を超える展開に、感動でつい夜更かし。
- 『長安ラッパー李白』(大恵和実 編訳)
- 歴史の魅力は国境を越え、唯一無二の趣を生む。侯景SFアンソロジーもぜひ頑張って!
- 『地球へのSF』(日本SF作家クラブ 編)
- 地球は無数の奇跡を育む。これこそが、私たちの広がる妄想だ。
さあのうず さん
1.『精霊を統べる者』P・ジェリ・クラーク 1.25点
- エジプトを舞台にしたスチームパンクというのが新鮮で、改変歴史SF・ミステリ・ファンタジーと様々な要素がしっかり融合していました。
2.『無限病院』韓松 1点
- 一種の病院ディストピアSFとも読めますが、まだ明らかにされていない背景の世界像などとにかくあまり似たタイプのものが思いつかない作品で、続きが楽しみです。
3.『ロボットの夢の都市』ラヴィ・ティドハー 1点
- 宇宙時代に取り残されたような都市「ネオム」が魅力的。紅海沿岸に現在実際に計画されている未来都市を舞台にしている着想もいいですね。
4.『タイタン・ノワール』ニック・ハーカウェイ 1点
- 裕福な人々が医療技術で長寿化する未来のハードボイルド。ハードボイルドらしい文体・会話が小気味よくきまっています。
5.『長安ラッパー李白 日中競作唐代SFアンソロジー』 大恵和実 編訳 0.75点
- 唐代を題材にした日中作家による競作アンソロジー。多少作品にバラツキがありましたが、ユニークな視点・試みの作品が多く、こうした新しいアプローチはこれからも続いて欲しいですね。
Takechan さん
年々、読書量が減っており、竹書房がSF文庫から撤退したので、文庫本では面白いものが あまりなかった。 以下の作品に一点づつ入れてください。
- 『ロボットの夢の都市』 ラヴィ・ティドハー
- どこか懐かしいロボットの物語。
- 『精霊を統べる者』 P・ジェリ・クラーク
- 黄金仮面のくだりは、昔読んだ江戸川乱歩を思い出した。
- 『一億年のテレスコープ』 春暮康一
- 宇宙をテーマにしたSFは、センスオブワンダーを感じる。
- 『時間移民 劉慈欣短篇集U』 劉 慈欣
- 叙情的なものから、おバカSFまで楽しめる短篇集。
- 『未来経過観察員』 田中 空
- 人工冬眠から百年ごと目覚めて、未来を五万年観察するというぶっ飛びSF。
maria さん
今年も、2冊だけですが…
- 『妄想感染体 上・下』 デイヴィット・ウェリントン 1.5点
- SFホラー、感染性の「妄想」と戦う緊張感とユーモアが楽しかったです。
- 展開する謎とサスペンスに引き込まれました。
- 3部作の一部ということで、続きが気になります。
- 『地球へのSF』 日本SF作家クラブ 編 1点
- 22人の作家が、それぞれの視点で「地球との共存」を多角的に描いていて 個々の作品の詩的な雰囲気と未来への考察が光ります。
森下 一仁
ベテランの円城塔さん、藤井太洋さん、宮内裕介さんがそれぞれ2冊ずつ上梓されたのが記憶に残ります。『スメラミシング』の小川哲を加えて、充実した活躍ぶりだと感じました。 春暮康一さん『一億年のテレスコープ』、宮西建礼さん『銀河風帆走』は若交わしいSF魂が魅力的。第11回ハヤカワSFコンテスト大賞の矢野アロウさん『ホライズン・ゲート 事象の狩人』も華麗さと素朴さの入り混じった印象的なスペースオペラでした。
以下、1点ずつ。
- 『鹽津城』 飛浩隆(河出書房新社)
- テーマ、人物造形、描写、文体……どれも見事としかいいようのない傑作ぞろいの作品集。
- 『コード・ブッダ 機械仏教史縁起』 円城塔(文藝春秋)
- ユーモアと深遠さ。自在な境地の宗教哲学小説といいましょうか。
- 『ビブリオフォリア・ラプソディ あるいは本と本の間の旅』 高野史緒(講談社)
- 本あるいは文学をめぐる奇想と衝撃の数々。多彩な作風を堪能しました。
- 『パンダ・パシフィカ』 高山羽根子(朝日新聞出版)
- 出来栄え云々より、奇妙で、可愛くて、優しくて、面白い。ツボなんです。
- 『無限病院』 韓松(山田和子訳、早川書房)
- 三部作の第一部。具体的イメージにまとわりつく象徴性が想像力を刺激します。
ベストSF2024 投票募集のお知らせ
災害や選挙、政変など、さまざまなことがあった2024年。あなたはどんな読書生活を送られましたでしょうか。
この年に読んだSFで良かったものを教えてください。
どなたさまもお気軽にご参加を。2024年1月1日から12月31日までに国内で出版されたSF(奥付の日付で判断してください)で、あなたがおもしろかったと思うものをEメールで投票してください。要領は次のとおりです。
- 日本語で読めるもの(電子書籍のみで出版された作品は、活字デビューされている作家のものに限らせていただきます)。
- 最終集計で海外作品と国内作品に分けます。
- 1人5作品まで推薦可能。もちろん、1作品でも構いません。
- 点数集計:推薦者1人が5点を所有し、推薦各作品に割り振る。指定のない場合は、均等に配分します。
- 例1:オータニさん『50-50』―4点、はるか・北口『65m80』―1点
- 例2:タツ「ブフォーッ!」、ヘビ「ニョロニョロ」、ウマ「ヒヒ〜ン!」(配点指定がないので各1.667点)
- 投票期間:2025年2月28日(金)午後12時まで。
- 投票先:こちらのフォームを使い、タイトルに「ベストSF投票」と明記してください(スペースが足りない場合は、何通かにわけてお送りください)。
- 発表:投票があり次第、途中経過を発表してゆきます。
- ランキングとは別に、各人の推薦リストも掲載します。作品への簡単なコメントもぜひお書きください。お名前の他にSNSアカウントも併記できます(個人名を公表されたくない方は、その旨お書き添え願います)。
昨年の結果
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