ベストSF2018

★ 投票数:10







各投票者の推薦作

(到着順)


毛利 信明 さん

 あっという間の1年でした。仕事を辞めていると毎日が何とはなしに終わるせいか、月日の経つのが本当に早く感じられます。平成ももうすぐ終わりですね。メディアでは平成を振り返っての話題が目につきます。自分自身、平成になった頃からSFマガジンを定期的に読むようになり、いつしかお便りコーナーにも本の感想を投書することに。学生時代から周りにSFを語れるような友人もなく、ひたすら独りでSFを読む日々、誰かにSFの話を聞いてもらいたかったのかもしれません。 
 昨年もたくさんの本を読むことができました。働いているときはSF中心だったのが今はあれやこれやと乱読気味ですが。SFジャンルに限っていえば、昨年は新人の作品がいつもより出版されたように思います。たとえば『半分世界』『ランドスケープと夏の定理』『風牙』『トランスヒューマンガンマ線バースト童話集』など。

 では、いつものように読んだ順に。
『折りたたみ北京』(ケン・リュウ編・・・うれしいことに現代中国SF作品集。すべてが好みとはいいませんが予想以上の出来。中では『三体』のエピソード短編が中国らしい奇想天外なおおぼらの話でお気に入り。これからもっともっと中国SFが翻訳されるといいですね)

『飛ぶ孔雀』(山尾悠子著・・・久しぶりの長編というので期待して読みましたがストーリイを追おうとしたためか、なかなか小説世界に入っていけませんでした。浅い読みしかできていない自分ですが、言葉が喚起する、あふれるイメージの流麗さには圧倒されました。初期の「遠近法」がマイベスト)

『竜のグリオールに絵を描いた男』ルーシャス・シェパード著・・・雑誌掲載のままだった幻の作品が、初訳も含め、ついに文庫本に。竹書房文庫、なかなか健闘。ファンタジーなのでしょうが充分に満足しました。また大島豊氏の長大な解説に感激。そういえば『緑の瞳』は未だ積ん読状態)

『筒井康隆、自作を語る』筒井康隆著・・・エピソードの数々、楽しんで読みました。ずいぶん昔のことを細かく覚えていることに驚き。作家という人々はこういうものなんでしょうか。巻末のエッセイ集の内容も含んでの全著作リストの凄さ、まさに編者日下三蔵氏の労作です。近刊の『不良老人の文学論』は文学賞の選評があからさまで、さすが筒井康隆)

『零號琴』(飛浩隆著・・・雑誌連載からだいぶ経っての単行本化。例によってかなりの手が入った改稿らしいのですが、連載時には殆ど読んでいなかったので初読のようなものでした。氏には珍しくハリウッド映画の「アメコミ」のような活劇風。馴染みのない漢字の頻出に少々音を上げそうになりそうになりながらも紡ぎ出される物語世界にどっぷり浸かって分厚い長編も割合早く読むことができました。初期短編集『ポリフォニック・イリュージョン』は特に著者解題がうれしかった)
 上記以外にも記憶に残っているのは『ディレイ・エフェクト』(物語のつくりが上手い)『プラネタリウムの外側』(青春小説の趣)『工作艦間宮の戦争』(地味な展開だが好感)『うなぎばか』(ふざけた題名から予想されるより、内容はずっといい)『七人のイヴ』(前半の方が良かった)『オブジェクタム』(SFなのかな)『チェコSF短編小説集』(こんな風に英米以外の国のSF集が出版されないかな)『NOVA2019年春号』(粒ぞろいの作品集)など。今年もたくさんSFが読めるといいですね。

 




さあのうず(放克軒) さん

『飛ぶ孔雀』山尾悠子 2点
 火が燃えにくくなった世界、という着想が奇抜でそれを現出させる魔術的な手腕に唯一無二の作家であることを思い知らされる。
『竜のグリオールに絵を描いた男』ルーシャス・シェパード 1点
 パーソナルかつ超現実的という両面性が作品に奥行きを与えている。
『半分世界』石川宗生 1点
 ユニークなアイディアに加え意表をつく展開。なんともいえない独特のユーモアがあり、非常に今後に期待を抱かせてくれる。
『文字渦』円城塔 0.5点
 タイポグラフィックによる実験が楽しい作品。
『iPhuck10』ヴィクトール・ペレーヴィン 0.5点
 疫病の拡大で性行為をコントロールされてしまったディストピアが描かれるがそこにロシアのアートシーンが絡んでくるといういい意味で珍奇な作品。





nyam さん

めっきり国内のSFを読むことが少なくなりました。どうも海外作品と映画鑑賞でいっぱいいっぱいのようです。(以下各一点)

「6つの航跡」 ムア・ラファティ 東京創元社
うまく未来技術の暴走を描いていると思う。
「時空のゆりかご」 エラン・マスタイ 早川書房
ほのぼのしているが、もう少しひねりが欲しかった。
「七人のイブ」 ニール・スティーヴンスン 早川書房
本当にこれぐらいで宇宙規模の災害から生き残れるの?
「天才感染症」 デイヴィッド・ウォルトン 竹書房
スパイ小説としてのほうが興味深かった。
「トム・ハザードの止まらない時間」 マット・ヘイグ 早川書房
よくあるネタだが、ありきたりの落ちにがっかり。
いま、哲学はシェリング、海外ドラマは「グッドワイフ」、映画はリメイクされた「サスペリア」に、はまってます。10連休は日本SFも読んでみようかな。






大熊宏俊 さん

山尾 悠子『飛ぶ孔雀』(文藝春秋)は、超傑作。著者のこれまでの傑作群に比べても図抜けた傑作です。読み返せば読み返すほど新たな発見があり、新たな視点に気づかされます。私自身、出版直後から断続的にではありますが、再読を繰り返しており、いまなお読み返し続けています。しかしそれでも、もう満腹これで充分という気持ちにはなりません。読むほどにあらたな迷宮が、謎が、姿を現し、小説世界は拡大していくのですね。読了などとはとても言えません。
考えてみれば、本作は、前作「歪み真珠」直後からしても8年の時間をかけて創作されているわけで(実際はそれ以前から取り掛かっていると想像します)、それだけ手のかけられた小説を、いかに書くより読むほうが早いといっても、それを数日程度で読んで、十全に読み込めるはずがないのであります。やはり読者も数年くらいはかけて読み込むべき作品といえるのではないでしょうか。私もさらに読みを深めていきたいです。

さて、『飛ぶ孔雀』は屹立していますが、今年は日本SFの当たり年だったのではないでしょうか。なのですが、ここのところちょっと時間がなくて、感想は省略、タイトルのみにてお茶を濁します。

高野 史緒『翼竜館の宝石商人』(講談社)はミステリの括りで喧伝されましたが、本質的に幻想小説で、私は『薔薇の名前』を想起せずにはいられなかった。ライダー・ハガード的な伝奇小説の一面も感じられ、愉快でした。

あとは新人、新鋭の作品を並べます。というか結果的にそうなったということですね。

早瀬 耕『プラネタリウムの外側』(ハヤカワ文庫)
高島 雄哉『ランドスケープと夏の定理』(東京創元社)
石川 宗生『半分世界』(東京創元社)

この三作は、いずれも小説構造や世界観に趣向が凝らされており、堪能させられました。

以上5作品、各1点でお願いします。

上記のとおり、この五作品は、「小説構造や世界観」のオリジナリティが最大の魅力なんですが、SFでランキングしますと、どうしてもこういう傾向の作品が、一般的に上位を占める傾向があるのではないでしょうか。私もその例にもれないセレクションになりましたが、SFの別の流れとして、世界は既存のものをそのまま使い、あるいはそれを基礎にし、その中にSF的発想を盛っていく作品群がありますよね。エクストラポレーションという言葉が想起されます。このタイプのSFも、私は大好きであります。以下の3作品は、その流派の秀作でした。そっちに重点を置いた評価をすれば、この三作品が得点しても全然不思議ではなかった。と言い訳して、作家名タイトルを記録しておきますm(__)m

藤井 太洋『ハロー・ワールド』(講談社)
倉田 タカシ『うなぎばか』(早川書房)
柞刈 湯葉『未来職安』(双葉社)





小泉博彦 さん

昨年のSFは十数冊しか読めなかったです。
その中で、
「筒井康隆、自作を語る」筒井康隆 日下三蔵・編)
筒井さんの記憶力もすごいですが、話を引き出した編者の力業でしょうか。
「未来職安」柞刈湯葉
相変わらずの淡々とした語り口、のんびりした味わいが好きです。

ここまではすぐ決まったのですが、以下は選択に迷いました。
「風牙」門田充宏
「トランスヒューマンガンマ線バースト童話集」三方行成
「ダンデライオン」中田永一
いずれも、不満な点や残念な箇所もあるのですが。
もれたのは「バットランド」「徴産制」などです。





Takechan さん

年々、読書量が減っているので、日本人作家の長編はあまり読んでいない。期待外れの一作は、「七人のイヴ」であった。Sの部分はよく書けていると思うが、人物像に関しては面白くない。これでは大惨事を生き抜くことはできないと思う。口直しに新訳が出たので「未来のイヴ」を読んでみた。冗長であることと、女性観に問題があるが、「フランケンシュタイン」、「R.U.R」にならぶ人造人間SFの古典的傑作だと思う。その他の収穫としては、中国のSFやチェコのSFが紹介されたことと竹書房文庫の健闘である。以下の五作は面白く読んだ作品であり、必ずしも傑作ではないが、一点づつ入れてください。

「世界の終わりの天文台」 リリー・ブルックス=ダルトン
星に囲まれた静寂のなかで、捨ててきたはずの人生を思う。しんみりとした味わいのある佳作です。
「折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー」 ケン・リュウ
読んだ印象は、1950〜60年代のソフィスティケートされたアメリカSFの感 触に近い。
「長く暗い魂のティータイム」 ダグラス・アダムズ
「ダーク・ジェントリー全体論的探偵事務所」シリーズ第二弾。作者死亡により、 続きがないのが残念。
「天才感染症」 ディヴィット・ウオルトン
本作はエンターテイメントに徹しているが、人間の意識の問題、思考するとはどういうことかという根源的な問いにもふれていく。
「竜のグリオールに絵を描いた男」 ルーシャス・シェパード
単発では、昔SFMに掲載されたもの読んでいるが、まとめて読むとその面白さがよくわかる。






渡邊 利道 さん

今年は特に日本SFに傑作が多かった年でした。ことに文芸系というかスペキュラティヴ・フィクションというかスリップ・ストリームというかな作品に傑作が多く、こういった投票ではいわゆるいかにも「ジャンル」っぽいSFに贔屓してしまうのでありました。
『シルトの梯子』 グレッグ・イーガン(ハヤカワ文庫SF)
『折りたたみ北京』 ケン・リュウZ編(新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
『ランドスケープと夏の定理』 高島雄哉(東京創元社)
『六つの航跡』 ムア・ラファティ(創元SF文庫)
『零號琴』 飛浩隆(早川書房)






幸重 善爾 さん

『竜のグリオールに絵を描いた男』 ルーシャス・シェパード
『トリフィド時代 食人植物の恐怖【新訳版】』ジョン・ウィンダム
『零號琴』 飛浩隆
『オブジェクタム』高山羽根子
『その先には何が!? じわじわ気になるほぼ100字の小説』北野勇作
  (各1点)
読んだ本です。あれもあれもあれも入ってないのは読んでないからです。(;´д`)トホホ

昨年出た『チェコSF短編小説集』はまさにぼくの専門分野なのですが、正直「所謂「東欧SFっぽい(でもレムやストルガツキー兄弟のような「突き抜けた凄味」は感じられない)」という、こういう感じが苦手だから、1991年の革命以前のチェコ・ファンタスチカを敬遠してたんだよなぁ」と思う作品中心なので落選。

ぼくが共産党体制の社会という古きくびきから解放されている現在の若手作家の小説をもっぱら読み、それを日本の読者に紹介しようとしている理由が再確認できました。





森下一仁

  • 『折りたたみ北京』 ケン・リュウ 編(新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
  • 『言葉人形 ジェフリー・フォード短篇傑作選』 ジェフリー・フォード(東京創元社)
  • 『ハロー・ワールド』 藤井太洋(講談社)
  • 『文字渦』 円城塔(新潮社)
  • 『飛ぶ孔雀』 山尾悠子(文藝春秋)
 海外SFに目ぼしいものが少なかったなあと思っていたら、年末に『言葉人形』が出てぐんと充実感が増しました。この短編集はお気に入り。あと『折りたたみ北京』の出版は、やはり画期的でした。
 国内SFは傑作が目白押し。あれもこれもリストから落ちてしまい、残念でなりません。来年も期待しています。





らっぱ亭 さん

ルーシャス・シェパード/内田昌之訳『竜のグリオールに絵を描いた男』
1980年代に発表されたルーシャス・シェパードの傑作「竜のグリオールに絵を描いた男」が、今になってまさかの連作短編集として、そしてまた、まさかの竹書房から翻訳刊行されたのはひとつの事件ですね。翻訳はもちろんのこと、カバーイラストも解説(おおしまゆたか)も素晴らしい。めでたくも続編の刊行が決定したとのことで、この勢いで長編『Beautiful Blood』まで出ますように!
三方行成『トランスヒューマンガンマ線バースト童話集』
2016年にweb版「よいこのためのトランスヒューマンガンマ線バースト童話」を読んで思わずのけぞり、twitterやSFマガジンやSFが読みたい!で面白いぞ面白いぞ早く書籍化しろーと訴え続けていたので、ハヤカワSFコンテスト優秀賞を受賞して刊行が決まった時は感無量だったなあ。あまりに感無量すぎて、まだ書籍版では読んでいないのは秘密だ。
早瀬耕『プラネタリウムの外側』
有機素子ブレードの中で紡がれる世界。そして外側の世界もまた中から紡がれ、ゆらぐ。世界はクラインの壺の如く入れ籠となり、記憶と記録は書き換えられ、現実は泡沫の夢となる。本作はスタイリッシュに蘇った『声の網』であり、かつ極上の恋愛小説でもあるという奇跡。いやあ、本作のラストは最高に好きだなあ。そして、本編が気に入ったかたには、「十二月の辞書」(SFマガジン2018年6月号)を是非とも読んでいただきたい。ボーナス・トラックとして、こんなに鮮やかで素敵で恋愛ミステリなエピソードが! と驚くこと必至だ。
石川博品『海辺の病院で彼女と話した幾つかのこと』
カクヨムにて日々更新のweb連載されたSFライトノベル。町に墜落した異星人の船。やがて、蔓延する謎の死病と、生き残った若者たちに発現する中二病的戦闘能力。そして、静謐な海辺の病院で短くも濃密だった戦いの日々を振り返る少年と少女の癒えぬ病は...。こいつはしみるなあ。
伴名練、坂永雄一、皆月蒼葉、曽根卓『改変歴史SFアンソロジー』
内容の素晴らしさと入手の困難さで早くも伝説となった京都大学SF・幻想文学研究会OBによる同人誌。完売後に入手できなかった方々の阿鼻叫喚は凄まじかったものだが、要望に応えて待望の電子版が出たので安心だ。坂永雄一「大熊座」コロラド州の山中で熊が奇妙な行動をしているとの噂を調査に訪れた動物学者たち。文化人類学的な考察と蘊蓄を交えながら語り合うかれらが目撃したものは、そして浮かび上がる驚愕の改変歴史とは! あの熊SFへの見事なオマージュに、通底するラファティ節。私的に本年度ベスト短篇。伴名練「シンギュラリティ・ソヴィエト」1976年、技術的特異点を突破して冷戦を制したソ連はAIが支配する悪夢めいた世界となっていた。道路を這いずる赤ん坊の大群 、クローン量産されたレーニン、脳の半分を分散コンピューティングに供出する人民。状況を打破すべく潜入した米国のスパイが見たものは! 高密度に繰り出されるアイデアと改変歴史ならではの大ネタ・小ネタに呆然とすること請け合いの傑作だ。語り手はミグ25事件のベレンコ中尉(女体化)で、歴戦の勇士兄嫁グルリェヴァとのほのかに百合めいた感情も単なるファンサービスじゃなくってけっこう重要なファクターだったり。とにかく凄いぞ! こちらは公的に本年度ベスト短篇。そして日本史を緑茶=ドラッグとして語り直した抱腹絶倒の曽根卓「緑茶が阿片である世界」。鮮やかな花絵を咲かす変化朝顔と蜜蜂が彩るキッチュでパンクな江戸を舞台に語られる人情話、皆月蒼葉「江戸の花」を収めた好アンソロだ。
その他、『零號琴』『文字渦』『オブジェクタム』『折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー』などなど、今年も豊作でした!













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