ベストSF2017

★ 投票数:12








各投票者の推薦作

(到着順)


毛利 信明 さん

 またまた1年が過ぎました。昨年は身体面で調子が悪く、今更ながら健康の大切さを感じました。年齢のせいか次第に健康本を読むことが増えたように思います。ボケ防止のためクロスワードパズル雑誌を買って毎日解いています。

 さて昨年を振り返ってみますと山田正紀氏(『ここから先は何もない』)、神林長平氏(『フォマルハウトの三つの燭台』『オーバーロードの街』)荒巻義雄氏(『もはや宇宙は迷宮の鏡のように』)などベテラン勢が大健闘。もちろんSFの新人賞(たとえば『コルヌトピア』)からはこれからのSF界を背負っていくであろう新人たちが誕生しました。また編者日下三蔵氏の活躍(特にSF関係では今日泊亜蘭氏の著作の復刊、<筒井康隆コレクション>、<日本SF傑作選>の出版など)が目にとまりました。それに竹書房の意外なSF文庫本の出版(『猫は宇宙で丸くなる』『虚ろなる十月の夜に』)にはびっくり、今年は『パラドックスマン』が出版される? かな。

 さて、いつものように読んだ順にマイベストを。

『たゆたいエマノン』(梶尾真治 著・・・「おもいでエマノン」からずっと愛読のシリーズ、最後まで読者であり続けたいと願っています)

『母の記憶に』(ケン・リュウ 著・・・前作以上に作品の幅が広がる。アクション物といっていい中編「レギュラー」には驚く。やはり中国に絡んだ話が作者の持ち味だろうし、 自分としてもそこを評価)

『ゲームの王国』(小川哲 著・・・2作目にして大いに化ける。抜群のリーダビリティ、 カンボジアの内戦を一癖も二癖もある人物たちを登場させ、マジックリアリズムにより圧倒的迫力で描いた上巻、ゲームのルールを作るように国を立て直すことに全力を尽くす主人公たちを描いた下巻。とにかく2017年一番の作品といっていいかも)

『夢をのみ』(立川ゆかり 著・・・膨大な資料を基に「作家というより人間光瀬龍」を描こうと試みる、その姿勢には心打たれます)

『奇想天外復刻版アンソロジーと21世紀版アンソロジー』 (山口雅也 編・・・まさかこういう本が出版されるとは。編者の労力は並々ならぬものだったと推察される。懐かしさでいえば復刻版の方かな)
 上記以外にも引っかかる本(『無限の書』『5まで数える』『三惑星の探求』『書架の探偵』など)が多数ありました。まだ読めていないもの(『隣接界』)、途中で読むのを止めてしまったもの(『ジャックグラス伝』『わたしの本当の子どもたち』『構造素子』)なども。

 




下村 思游 さん

初めての投票となります。よろしくお願いします。
今年一年間は東北大学SF研究会の会長を務めていました。まだまだ絶対的な読む数が足りていないのですが、その中で特に面白かったのは以下の作品でした。
『ダーク・ジェントリー全体論的探偵事務所』(ダグラス・アダムス) さすがはアダムス、無茶苦茶な話がいつしかひとつのきれいな答えにたどり着く。噂には聞いてはいたものの原語には手を出せていなかった。その点もあって、非常に楽しく読んだ一冊だった。

『天球の音楽』(ケン・リュウ)  表題作に心を射抜かれた。正直に言って、ケン・リュウは中国の風味で評価されている作家だとたかをくくっていた。この短篇集を読んで、それに頼らなくてもこんなにも普遍的な作品をかけるのか、とケン・リュウに対する態度が変わった。申し訳なくなるとともに、改めて彼の作品を読んでみたいと思った一冊だった。(森下註:本書は〈はるこんブックス〉です)

『巨神計画』(シルヴァン・ヌーヴェル) アメリカ各地でロボットのパーツが発見された、という出来事をインタビュー形式で表現した作品。事態が展開するにつれて、インタビューから実況へと変わっていく様は臨場感に富み、思わず自分も物語の一員になったかのようだった。続編にも期待が高まる。

『日本SF傑作選1 筒井康隆』(筒井康隆) さすがはSF御三家の傑作選、何を読んでも面白かった。数多の傑作が一冊にまとまり、とりあえず人に筒井作品を勧めるときはこれを渡せばOKといった感じ。これからの日下さんの活動には大きく期待している。

『人間の顔は食べづらい』(白井智之) 東北大SF・推理研出身の推理作家である白井さんのデビュー作。食用人間クローンが合法となった世界において、そのクローンを殺人に利用したトリックは実に鮮やかだった。インモラルな作品の世界観は唯一無二、悪いとは思いながらも癖になる。
投票のために昨年読んだ本を考えると、ほとんど海外作品ばかりで偏りが目立ちました。今年は国内の作品にも積極的に挑戦していきたいと思います。




いたばし さとし さん

いたばしさとし文学賞2017より受賞作をここで改めて推させて頂きます。
・2点
「新しい塔からのながめ」野尻抱介
いたばし賞短編部門賞。岩手県庁と早川書房がコラボした短編集「ILC/TOHOKU」収録されたに一編。詳細に現地岩手を取材し、岩手とILCのあるべき未来を描いた希望の物語。
・2点
「夢をのみ」立川ゆかり
いたばし賞一般部門賞。光瀬龍の知られざる側面を、地元ならではの詳細な取材を通して明らかにし、光瀬の人物像と新たな作品像を浮き上がらせた。
(参考作)
「ホルケウ英雄伝」山浦玄嗣
いたばし賞長編部門賞。約40年ケセン語での創作に取り組んでいた山浦玄嗣の日本語による商業デビュー作。時代の風潮に流されない正統派の少年冒険物語を架空の東北を舞台に朝廷の葛藤を通して描く。とことどころに見受けられる山浦のキリスト教的な人間観が物語の緊張と感動を高めている。
( 森下註:2016年末刊行作なので、点数なしの参考作とさせていただきました )



放克軒(さあのうず) さん

『隣接界』クリストファー・プリ―スト 1.5点
著者の変幻自在の筆に酔わされる集大成的な作品。

『地下鉄道』コルソン・ホワイトヘッド 1.5点
現実の陰画としての改変歴史ものというSFの特性が十分に発揮された読み応えのある傑作

『母の記憶に』ケン・リュウ 1.5点
アイディア、ストーリーテリング、題材の幅広さと紹介されるごとに作者のポテンシャルの高さを思い知らされます。

『書架の探偵」ジーン・ウルフ 0.5点
ウルフとしてはちょっとオフビートな味もあって楽しい作品。

『シルトの梯子』は未読。直交三部作は難しかった(一作目は割と楽しんだんですが・・・)。最近は日本SFも面白そうなので気になっています。




nyam さん

2017年は、「パッセンンジャー」「ブレードランナー2049」などSF映画の当たり年でした。小説では、ローダンNEOや「マイルズの旅路」などシリーズものが記憶に残りました。(以下各1点)
ヤキトリ1 (ハヤカワ文庫) カルロ・ゼン
 新しいシリーズです。ちょっと期待できます。愛と勇気と鬱?

帝国宇宙軍1 (ハヤカワ文庫) 佐藤大輔
 続きが読みたいですが、もう読めなくなりました。

予言ラジオ (小学館文庫) パトリック リー
 前半は飛ばしてましたが、後半の展開がありきたり。

ジャック・グラス伝 (新☆ハヤカワSF) アダム・ロバーツ
 犯人はあらかじめわかってますが、倒叙ものではありません。

ダーク・ジェントリー全体論的探偵事務所 (河出文庫) ダグラス・アダムズ
 探偵がなかなか出てこない。あと、前書きはよく読んどけ!

●番外編 SF映画賞 「メッセージ」 : 科学賞 「バッタを倒しにアフリカへ」(光文社) 前野ウルド浩太郎




大熊宏俊 さん

 今年のマイベストワンは余華『世事は煙の如し』
 著者はベストセラー作家だ そうですが初期は幻想味の強い中短篇を書いておりそれが翻訳されたみたいです。一読圧倒されました。表題作は現実と夢の世界が混沌と癒着していて、ふつうは現実があって夢があるわけですが、この世界ではどちらが先かを問うのも不可能。夢でみたことが現実に起こる予知夢とはぜんぜん違う事態。夢がその存在によって現実に作用するというのは予知夢ではないですよね。
 なお本篇の登場人物たちは「7」とか「1」といった数字。これがまた難読性を弥増しにしちゃう。「7」や「2」にはそもそも属性がないじゃないですか。太郎とか花子という命名がいかに記憶を助けるかということを改めて思い知らされました。
 名前には属性をくっつけられるんです。それなりに(とりあえず性別は)イメージでき、記憶できる。ところが「7」や「3」ではそれが妨げられるので、この面でもページを捲り直して誰だったか確認しなければなりませんでした(そうか、メモしながら読めばよかったのか)(汗)。
 と書いていてはっと気づいた。この「7」や「4」を、ショートショートN氏みたいな風に考えていましたが、もしかして人間じゃない? 「7」は文字どおり「7」で、この世界は現実に数字が歩いたり生活したりしている世界なのかも。SFだなあ。

 あとは簡単に。

 小川哲『ゲームの王国』
 上巻はカンボジア現代史に材を求めた熱気に溢れた色彩豊かな物語。下巻は一転そのような地域性具体性から離れてゆき、色彩が失われてゆき、抽象的な対話劇の集積のような構成になっていく。まるで白黒の不条理映画を見ているような。
 私の妄想的読解によれば、本書は世界の始まりより続いている太陽神と水浴神の(ゾロアスター教のような善悪二元論ではないけれど)二神の対立→合一の神話物語(笑)。おそらくあらゆるレベルでその闘争は繰り広げられており、本書はその壮大な世界観のごく地域的な闘争を書き留めたものですね(汗)。素晴らしい力作で満足しました。

 上田早夕里『破滅の王』は日中戦争時の中国大陸が舞台。石井部隊が開発中の新種の細菌兵器は防御手段がなく、拡散すれば世界の破滅は必死だった。
 新兵器をめぐる争奪戦がメインストーリーですが、そういう言葉から惹起されるイメージとは異なり、話は地味に粛々と展開します。本書の読みどころは新兵器をめぐる人間模様というかその描写の確実性です。少なくない人物像をこれほど冷静に書き分け描き切る技倆と体力を持つ作家は著者を措いて他に思い浮かびません。そのオリジナリティ(私は全体小説と呼びたい)が遺憾なく発揮された傑作。

 眉村卓『夕焼けのかなた』で、著者はまた変貌しつつあるようです。
 集中の白 眉は本集では一番長い短篇「峠」。主人公がもろに著者と重なる、双葉文庫既刊の『終幕のゆくえ』『短話ガチャンポン』と同系統の所謂私ファンタジーなんですが、その他は、老人が主人公であるのは同じなんだけど、それに篭められたワタクシ性は希薄になってきています。今月発売の「新潮45」に掲載された20枚のエッセイ「『妻に捧げた1778話』のあとで」を参考にしますと、私ファンタジーを書いていた「未来滞在者」としての著者は、今や「未来転入者」となりつつあるらしい(「余生」から「別の生」へとも)。つまりずっと繋ぎ止められていた「80年に亘る過去」から自由になってきたということだと思います。それに伴い作品も「私ファンタジー」から「モーロク短話」(笑)へと。
 このモーロク短話という命名の可笑しみからも想像できるとおり、新傾向短篇の小説世界は明るくなってきている。この変化は喜びたいと思います。

 眉村卓『日本SF傑作選3 眉村卓』をさっき読了しました(ベストSFに間に合った!)。
初期作品集成なので、当初は参考作で挙げるつもりだったのですが、あまりにも素晴らしいので予定変更。まず驚かされたのは、これらの作品群の元版であるハヤカワ文庫版(昭和48、49、50)のあとがきが収録されているのですが、それを読むとすでにして著者はその時点でこれらの作品群を全否定されていたということ。
 ところがですよ。何十年ぶりかで再読三読したそれらは、しかし著者がなんと思おうと、客観的にどの作品も秀作傑作としか言いようがないのですね(著者のアンビバレンツ、懊悩も含めて)。結果、本書はそれをあらためて再認識する読書となりました。著者の初期作品を読み返す貴重な機会を与えてもらい、この企画に感謝する次第です。

 各1点でお願いします。

 ということで割りを食ったのが、伊藤瑞彦『赤いオーロラの街で』。新人だそうですが可読性抜群。なんとなく初期の小川一水を思い出した。本書も『破滅の王』と同じで、発端となるSF的事象は、ストーリーに食い込んでいくものではなく、シチュエーションを作り出す発端でしかありません(とはいえその描写はとても魅力的でした)。その後の人間模様が本書の読みどころ。奇妙な設定で普通小説を書き上げています。人気が出そうです!




Takechan さん

一年が過ぎるのがだんだん早くなり、老眼のため読書量が落ちてきている。この一年間で読んで、面白かったものを選んでみた。あいかわらずハードなSF入れていない。下記の5作品に一点ずつ入れてください。

『時間のないホテル』 ウィル・ワイズ
イベント参加代理業のさえない男が宿泊した、昔風にいえば四次元ホテルを舞台としたSFファンタジー。後半に出てくる謎めいた女性と支配人とのからみが面白い。
『ブルー・マーズ』 キム・スタンリー・ロビンスン
前作の「グリーン・マーズ」が出てから16年、もう翻訳されるのではないかと思っていたときに訳された。テラフォーミングで水を得た火星の描写がすばらしい。今後はこれだけ長いSFを読むことはないであろう。
『母の記憶に』 ケン・リュウ
2冊目の短編集であるが、前回と同様に質の高い作品がえらばれている。
『書架の探偵 』 ジーン・ウルフ

ジーン・ウルフの作品は難解な感じがするが、本作品はパルプマガジンのパロディのような感じの作品で楽しくよめる。
『破滅の王 』 上田早夕里
本書は上海自然科学研究所を舞台とした架空の細菌兵器をめぐる人々の戦いを虚実入り混ぜて描いている。著者は初めこの作品はSFではないといっていたが、最後の一行を読めば、完全なSFである。これを読んで小松左京の「復活の日」を思い出した。
その他、J.ヴァンスの「スペースオペラ」 立川ゆかりの「夢をのみ」J.ウオルトンの 「わたしの本当の子供たち」等が印象に残った。




らっぱ亭 さん

 今年は海外・国内のSF書籍、電書オリジナル作品、コミック、ラノベから各1作品を選んでみました。コメントは読了時のツイートを元にしています。

『隣接界』 クリストファー・プリ―スト(2点)
なんといっても今年のマイベスト。テロリストの不可解な新兵器により荒廃していく近未来から、第一次・第二次大戦中の英国と欧州、そして夢幻諸島まで、異なる時空と世界が少しずつ重なりあい、互いに浸食していく。そして、めくるめく幻惑の読書体験の果てに辿り着く至高のロマンス! 本作の幻惑とエモさは筒井康隆ファンにもオススメですね。
『ゲームの王国』 小川哲(0.5点)
容赦なく凄惨なカンボジア近代史と辺鄙な村のマジック・リアリズム的描写と先端脳科学のSF的アイデアが渾然一体となってまさに巻を措く能わずって圧倒的な読書体験。SFというよりは中島らも『ガダラの豚』なんかと同じ箱に入れておきたい傑作。
『水から水まで』北野勇作(1点)
惑星と口笛ブックスから電書オリジナルのシングルカット・シリーズとして配信。幻想と科幻、夢と現のあわいの語りのなんとも見事なことよ。どうどうどうと流れる水路を辿る道すじは、なぜかまた静謐で艶めかしくもある。どこかへ失われたものとその残滓は懐かしくも不穏だ。緩やかに連なる掌篇はいずれもほの昏く、あるいは闇のように暗く、はたまた冥い。
『うちのクラスの女子がヤバい』衿沢世衣子(1点)
3巻で青春SFコミックとしての見事な着地をみせた本作は、ゆるい日常系エスパーギャグマンガかと思ってスルーしたらダメだぞ。特に謎の級長ウィルコさんにスポットをあてたラストは鳥肌ものだ。
『少女妄想中。』 入間人間(0.5点)
ライトノベルからはこれを。うわあ傑作だよ。この連作短篇、ってか緩い長篇を紡ぐのは逃げ水を追いかける百合の話、心地良く百合めいたところで旅に出る話、そして百合は血よりも濃い話。大切な何かを失いまた別の大切なものを手に入れて。妄想と夢と過去と現実のあわいを軽やかに駆け抜ける少女に幸あれ。
その他として、 宮澤伊織『裏世界ピクニック』、オキシタケヒコ『おそれミミズク』、柴田勝家『ゴーストケース 心霊科学捜査官』は実話怪談系SFの記念すべき同時多発刊行というイベントとしても挙げておきたい。いずれもオススメだが、3作での推し順位としてはガールミーツガールな裏世界がイチオシで、ボーイミーツガールなミミズク、ボーイミーツボーイっぽいともいえるゴーストケースと続く(個人の嗜好です)実話怪談系では『裏世界ピクニック』にも影響したという我妻俊樹『奇々耳草紙』シリーズもSF者の琴線に触れますぞ。
国内作品では、松崎有理『5まで数える』うわあどれもこれも容赦ないぞ。これが理系ホラー、ってか紛れもなく凄いSFだなあ。動物実験が厳罰化され医師自ら人体実験の被験者となって伝染病と闘う改変歴史SFの白眉「たとえわれ命死ぬとも」はなんとも凄絶。似非科学者とニセ医療の殲滅に燃えるノーベル賞科学者と超絶マジシャンが結成した疑似科学バスターズ・シリーズもいいなあ。
電書では、西崎憲の「惑星と口笛ブックス」から配信された『ヒドゥン・オーサーズ』にも注目だ。「看過された書き手」を集めたというコンセプトだが、なんと深堀骨の新作「人喰い身の上相談」が!(リトルプレス『トラベシア』2号にも新作「セントミアリーメイドの永遠の処女」が!!) そして伴名練「聖戦譜」は傑作SF。文芸部の伝統ある部誌『北陵』第百号発刊の辞という形式で綴られた、謎と秘密と惨劇と百合に彩られた幻惑の部史であり、その背景では全人類的なスケールの茫洋とした不穏がみしみしと醸し出されると同時に、ラストでの寂寞としつつも凜とした語りがじんわりと染みいってなんだか感動的。そろそろ短篇集でないかなあ。
雑誌掲載の短篇では、小説すばる2,3,4月号に朱雀門出によるバイオ+超常・都市伝説系の短篇連作が掲載されていた。資源生態学専攻の学者俵直径と学生の米原琴、スポーツ誌記者超馬らがなんとなくまったりと怪異らしきものに対峙する。とぼけた味わいながら不条理で不気味な余韻が残る作風は健在で、書籍化希望!




渡邊 利道 さん

『シルトの梯子』 グレッグ・イーガン
「直交」三部作と迷いましたが、単発で読みやすいこちらを。第一部がそれだけで中編としてすごく完成されていて、第二部の結末の面白さが倍加するプロットが見事でした。イーガンは難解だと言われるけど物語はいつもストーレートに面白いと思います。
『エコープラクシア』 ピーター・ワッツ
『ブラインドサイト』続篇で、前作よりもシーン的にはかっこよさが増していると思います。デジタル物理学をこういうふうに使うかという性格の悪さ(?)もサイコーです。
『ブルー・マーズ』 キム・スタンリー・ロビンスン
待望の三部作完結編です。ヒロインのツンデレぶりが凄まじく好きです。
『破滅の王』 上田早夕里
魔都上海を舞台にした細菌テロ小説です。男達の誇りと妄念をかけた熾烈な戦いを静かに描いた長編。虚実皮膜を貫いていまここの現実に突き刺してくる問題意識も見事でした。
『大怪獣記』 北野勇作
『人面町四丁目』続篇のSFホラーです。怪獣映画をモチーフに幻想と虚構が渦巻になって氾濫する素晴らしく面白い小説でした。北野さんは電子書籍オリジナルの連作掌編『水から水まで』もとても興味深い試みでしたし、今後の活動も目が離せません。
以上です。よろしくお願いします〜。




森下一仁

  • 『わたしの本当の子どもたち』 ジョー・ウォルトン
  • 『三惑星の探究―人類補完機構全短篇3』 コードウェイナー・スミス
  • 『破滅の王』 上田早夕里
  • 『フォマルハウトの三つの燭台〈倭篇〉』 神林長平
  • 『コルヌトピア』 津久井五月
 『わたしの本当の子どもたち』は、一人の女性の人生の分岐が、世界そのものの分岐と深く関わり合っているところが凄かった。地味に見えるけれど、大変な力わざ。
 力わざといえば、上田早夕里さんの『破滅の王』も。いつの間にか別の歴史が広がってゆく締めくくりが見事。
 コードウェイナー・スミスは、これで全短編が読めることに。SFの真髄という気がしますなあ。
 『フォマルハウトの三つの燭台〈倭篇〉』は、文体と内容が見事にマッチして楽しく読めた。とてもいい感じ。
 『コルヌトピア』は、植物コンピューターというびっくりアイデアに喜び、緑あふれる未来都市のビジョンにうっとりしました。

 プリースト『隣接界』、ウルフ『書架の探偵』、田中啓文『宇宙探偵ノーグレイ』、柞刈湯葉『重力アルケミック』など、5作に入りきれない傑作もたくさん。このところ豊作がつづいています。




小泉博彦 さん

私が読んだ順に5作品。すべて1ポイントです。

重力アルケミック 柞刈 湯葉
「横浜駅SF全国版」もありましたが、こちらをとりました。
たゆたいエマノン 梶尾真治
エマノンの連作すべてを読んでいるわけではないので、旧作も 文庫を探しては少しづつ読んでいます。
あとは野となれ大和撫子 宮内悠介
のんびりとした」語り口が好きです。
猫は宇宙で丸くなる 中村融・編
なつかしいビッグネームが並んでいて、「猫」が主題だけにほのぼのとした読後感でした。
プラスチックの恋人 山本弘
主人公の「売春」に対する感覚に不自然さはあるが、せつなくて良かったです。
「ここから先は何もない」と「クトゥルー短編集 銀の弾丸」の 山田正紀さんもそれぞれに面白く読めたのですが、次点。
本当は「地下鉄道」コルソン・ホワイトヘッド が入る気がするのですが、まだ読み終わっていません。




山口素夫 さん

今年はあまり新刊本を読んでいません。ゆっくり本を読める日を待ち焦がれながら、こつこつ本を買い集める日々でした。

『ロボットインザハウス』 デボラ・インストール 1点
続編ですが、かわいさ倍増です。
『スペースオペラ』 ジャック・ヴァンス 0.5点
切れ者キューゲルやマグナス・リドルフに比べるとちょっとピンときませんでしたが、ヴァンスらしさは満開でした。

 












ベストSF2017
投票募集のお知らせ




 今年もやります、良かったSFアンケート。
じっくり選んで投票してください。

 2017年1月1日から12月31日までに国内で出版されたSF(奥付の日付で判断してください)で、あなたがおもしろかったと思うものをEメールで投票してください。要領は次のとおりです。


昨年の結果