- 1点
- ( 海外 )
- 『銀河之心T』 江波
- ( 国内 )
- 『推しはまだ生きているか』 人間六度
- 『鹽津城』 飛浩隆
- 『知能侵蝕〈全4巻〉』 林譲治
- 『マン・カインド』 藤井太洋
毛利 信明 さん
- 元日に能登半島地震で幕を開けた1年が終わりました。いろいろな出来事がありましたが右から左へと忘れていってしまいます。
- 齢のせいにはしたくはありませんが。ボケ防止のためクロスワードパズルをやっていても言葉がなかなか思い出せません、古い家電の起ち上げが遅くなるように。体の不具合は相変わらずですが、何とか入院もせずに1年を過ごすことができました。毎年神社で願うのは健康で過ごせるように、ということ。
- 令和6年のSF界の状況を箇条書きにしてみますと、
- @ 相変わらず中国(台湾)や韓国のSFの継続的な紹介が順調に。『台湾文学コレクション1近未来短篇集』『長安ラッパー李白』『派遣者たち』『無限病院』など。
- A 国内外の短編集やアンソロジーの出版も着実に。個人短編集では『射手座の香る夏』『ビブリオフォリア・ラプソディ』『わたしは孤独な星のように』『離魂心中』『生命活動として極めて正常』『銀河風帆走』『スメラミシング』『ミステリ・トランスミッター』『かめたいむ』『交差点の天使』など。アンソロジーでは『シリコンバレーのドローン海賊』『屍者の凱旋』『野球SF傑作選』『地球へのSF』『サイボーグ009トリビュート』『恋する星屑』『トウキョウ下町SFアンソロジー』『AIとSF2』『メロディアス』など。
- B 新訳本の刊行。訳文が今風にバージョンアップ。『歌う船 完全版』『10月はたそがれの国』『ロードマークス』など。
- C 若手作家では創元SF短編賞やハヤカワSFコンテスト出身の作家の短編集が多く出版される。なかでも坂崎かおるの活躍が目に止まる。純粋なSFとは言えないが独特の作風で『嘘つき姫』『海岸通り』『箱庭クロニクル』。SF界の立ち位置で言えば高山羽根子に近いか。
- D ノンフィクションの出版で目立ったもの。『SF作家はこう考える』『AIを生んだ100のSF』『ディストピアSF論』『SF評論入門』など。
- では、いつものように読んだ順に。突出した作品が少なく(言い換えれば粒ぞろい)、興味を持てる長編作品もあまりなく選ぶのに悩みました。短編集やアンソロジーにいいものが多かったような気がします。
- ○『マン・カインド』(藤井太洋著・・・連載完結後、すぐに単行本化されると思っていたが、その前に星雲賞とは。戦場ジャーナリストが取材していく中で遺伝子操作による出産が新人類の誕生に関係することがわかり・・・。藤井版『継ぐのはだれか』といえる)
- ○『推しはまだ生きているか』(人間六度著・・・タイトルからあまり期待していなかったが様々なジャンルのSF作品があり、それぞれに充実した内容で読ませる)
- ○『知能侵蝕 全4巻』(林譲治著・・・最近の作品には異星人とのコンタクトものが多いようだが、これも例にもれず。冒頭のつかみからぐいぐいと読ませる展開、4巻で終わるのかと心配されたが最後はSFらしい結末に。戦記物を得意とする作者だけに戦闘シーンは読み応えあり)
- ○『鹽津城』(飛浩隆著・・・文芸誌掲載のものが多い。そのせいか難読漢字が多用されたり、酉島伝法風の使われ方をしたり。どれもいいが特に表題作がある種神話のような作りで、異物に侵蝕され現実が変容していくさまが何とも言えず心に残る。寡作だが作風から残念ながら量産は無理だろうと推察される)
- ○『銀河之心T』(江波著・・・珍しや、中国版スペースオペラ。スペースオペラはとうに卒業した私も読んでみようという気になる。三部作なので評価はこれからだが一応満足。 翻訳に漢字が多用され、本家とは違う独自な感触の作品となっている。「銀河在上!」の言い回し、流行るか)
- ベスト5以外には 『一億年のテレスコープ』(若いころであれば宇宙の謎の探索というテーマにしびれ、迷わずベストに選んだのだが)『コード・ブッダ』(ユーモアある文章であちこちにくすぐりというかパロディがちりばめられていて部分的には楽しめたが自分とは相性が悪い)SFよりのライトノベルでは『未来経過観測員』『少女星間漂流記』『はじめてのゾンビ生活』などが印象に残った。巷では評判の『ここはすべての夜明けまえ』は水準作であるのは確かだが、平仮名づくしの文章の中、漢字の使い方に少々違和感をおぼえた。個人短編集でどちらもテクノロジーを中心に据えた『暗号の子』と『まるで渡り鳥のように』、大雑把な言い方を許してもらえれば前者はベースに流れるのは「悲観的」な哀しみ、後者は「楽観的」というか前向きな読後感を抱いた。
- さて、今年はどういう作品に出会えるのでしょうか。
ベストSF2024 投票募集のお知らせ
災害や選挙、政変など、さまざまなことがあった2024年。あなたはどんな読書生活を送られましたでしょうか。
この年に読んだSFで良かったものを教えてください。
どなたさまもお気軽にご参加を。2024年1月1日から12月31日までに国内で出版されたSF(奥付の日付で判断してください)で、あなたがおもしろかったと思うものをEメールで投票してください。要領は次のとおりです。
- 日本語で読めるもの(電子書籍のみで出版された作品は、活字デビューされている作家のものに限らせていただきます)。
- 最終集計で海外作品と国内作品に分けます。
- 1人5作品まで推薦可能。もちろん、1作品でも構いません。
- 点数集計:推薦者1人が5点を所有し、推薦各作品に割り振る。指定のない場合は、均等に配分します。
- 例1:オータニさん『50-50』―4点、はるか・北口『65m80』―1点
- 例2:タツ「ブフォーッ!」、ヘビ「ニョロニョロ」、ウマ「ヒヒ〜ン!」(配点指定がないので各1.667点)
- 投票期間:2025年2月28日(金)午後12時まで。
- 投票先:こちらのフォームを使い、タイトルに「ベストSF投票」と明記してください(スペースが足りない場合は、何通かにわけてお送りください)。
- 発表:投票があり次第、途中経過を発表してゆきます。
- ランキングとは別に、各人の推薦リストも掲載します。作品への簡単なコメントもぜひお書きください。お名前の他にSNSアカウントも併記できます(個人名を公表されたくない方は、その旨お書き添え願います)。
昨年の結果
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