ベストSF2013

★ 投票数……19








各投票者の推薦作

(到着順)


毛利 信明 さん

 昨年は日本SF作家クラブ50周年記念プロジェクトでSF関連の書籍の刊行以外にもさまざまなイベントがありました。実際に、そのいくつかには足を運びもしました。成功不成功は置くとして、その実現には前会長である瀬名秀明氏の並々ならぬ尽力があったのではないかと推測されます。会長職辞任に関してはいろいろあったようですが...。今年はどういう出来事が日本SF界に起こるのでしょう。
 いつものように読んだ順に5作選びました。いずれも個人的な思いが強かった作品です。
『たんぽぽ娘』ロバート・F・ヤング)・・・刊行されただけで十分満足です。いつ出版されるのかと鶴首して待っていましたから。

『夢幻諸島から』クリストファー・プリースト)・・・あまりにエピソードの数が多すぎて圧倒され、消化不良気味です。

『皆勤の徒』酉島伝法)・・・表題作を初めて読んだときの衝撃を今でも思い出します。本としてまとめられ、改めて読み返してもその驚きは健在でした。

『パラークシの記憶』マイクル・コーニイ)・・・『ハローサマー、グッドバイ』の続編というので期待大。前作以上にSF味たっぷりでした。

『うたかたエマノン』梶尾真治)・・・「30億年の記憶を持つ少女」という設定だけで「傑作」が保証されたシリーズ最新作。個人的にはシリーズ第1作「おもいでエマノン」がベスト1。
 上記以外にも記憶に残る作品が少なくありませんでした。タイトルだけ挙げてみても、『ブラックアウト』2部作『ヨハネスブルグの天使たち』『ガーメント』『クリュセの魚』『ブラックライダー』『know』『星を創る者たち』『誰に見しょとて』等々。世評に高い作品でまだ未読のものもありますし、読んでみたところ私には合わないという結果になったものもありました。



本橋 牛乳 さん

 あえて、次の2作に。
いとうせいこう 「想像ラジオ」 3点
クリストファー・プリースト 「夢幻諸島から」 2点
 「想像ラジオ」は、東日本大震災の津波で木にひっかかった死体をDJとした、想像のラジオ放送。あれから3年もたつのだけれども、何があったのか、覚えているだけではなく、自分が経験した外のことに対する想像を忘れないで欲しいという願い、あるいは祈りがあるのだと思う。実際に、3年前の震災で、ぼく自身もっとも心に残っている光景は、くりかえし言葉だけが届けられた「海岸に数百名の死体が打ちあがっている」というものだった。SFというものが、想像力の文学だとしたら、「想像ラジオ」はSFにそのことを問うことになってしまうと思う。

 「夢幻諸島から」は、どうしても技巧的すぎる部分を感じてしまって、個人的にはプリーストのベストではないのだけれども。それでも巧妙に構築された世界を旅することは、とても素敵な体験だった。世界をさまざまな角度から見ることで、ちがったものが見える、ということは、現実世界においても、違った角度から見るための想像力を求められているということでもあるのだと思う。

 SFかどうかは別にして、ミュリエル・スパークの「バン、バン! はい死んだ」エリック・ファーユ「長崎」ジャン・エシュノーズ「稲妻」辺見庸「青い花」保坂和志「未明の闘争」なども心に残る本でした。ここに記録しておきます。



中村 達彦 さん

また今年もあまりSF読んでいません……。
1 自殺卵  眉村卓  1.0点
2 星を創る者たち  谷甲州  1.0点
3 コロロギ岳から木星トロヤへ  小川一水  1.0点
4 夏葉と宇宙へ三週間  山本弘  1.0点
5 SF奇書コレクション  北原尚彦  1.0点
「自殺卵」は短編集ですが、1月先に発表された「たそがれ・あやしげ」があり、どちらを選出しようか悩みました。表題作は20年前なら笑って読めますが、今回はいささか恐怖すら感じました。他の作品も読みごたえあり、遥か未来や電脳空間に舞台を持っていかなくてもSFは成立すると改めて実感させられます。最近、眉村先生の学園作品が相次いで再映像化されていますが、ぜひ「ねじれた町」を映像化してもらいたいです。
(それで、眉村先生の司政官シリーズに相通じ、外惑星に関わる人の物語と言えば)
「星を創る者たち」。20年以上前に書かれた短編集を訂正の上で、新作を加えて、書き下ろしました。現場責任者の視点から見た、惑星開発で発生した事故に取り組む物語と思いきや、新作の話から意外な展開が待ち構えています。長く続いている「覇者の戦塵」シリーズも、同じような意外な展開に突入するのか気になります。
(それで、同じく未来を舞台に、人知を超えた存在を描いたと言えば)
「コロロギ岳から木星トロヤへ」は、ファーストコンタクト、時間SFでもあります。23世紀に小惑星のコロニーで放置された宇宙戦艦と、21世紀北アルプスの観測所があるもので繋がり、汚名を受けた少年と友人と観測員が互いに連絡を取るうちに、変化が始まります。ストーリーの流れはいささか定番ですが、長いシリーズもさることながら、「臨機巧緻のディープ・ブルー」と同じく書き下ろしをどんどん出してもらいたいです。
(それで、悩める若い2人が宇宙船で活躍する物語と言えば)
「夏葉と宇宙へ三週間」は、夏休み2人の小学生が宇宙船に吸い込まれ、船の人工知能に故郷の惑星まで操縦して欲しいと頼まれます。明らかにされる超技術、2人は宇宙文明の存亡にかかわる事件に巻き込まれます。子供向けですがSF設定やキャラクターも手を抜かず、また日常で悩んでいる姿も描かれ、唯のロードものに終わっていません。結末はこれで良いかと。
(それで、互いにブログや著作でエールを送り合ったと言えば)
「SF奇書コレクション」は、あまり世に知られていない近年のSF小説とその作者を取り上げています。読んだ時の裏話も含め、ユーモアを交えた文章は読みやすいです。隠れたSFの歴史を知る上でも、貴重な資料です。収集のための支出と行動には頭が下がります。機会があれば北原先生の創作も読んでみたいです。

※岩崎書店の21世紀空想小説シリーズは「夏葉と宇宙へ三週間」を含め全9冊、対象は小学生高学年以上ですが、読んでもらいたいです。コミックでは、業田良家の「機械仕掛けの愛」が、アニメは「サカサマのパテマ」「暁星のガルガンティア」がおすすめです。「怪獣文藝」は開田裕治の表紙イラストが圧巻ですが、もう少し怪獣ものらしい物語が欲しかったです。怪獣といえば、夢枕獏「大江戸恐龍伝」は、最終巻が今年2月に出たので来年の投稿に回します。



渡邊 利道 さん

 今年は本当にものすごい一年で、五作に絞るのが大変でした。

『皆勤の徒』 酉島伝法(東京創元社)
 なんといってもこの作品は外せないと思います。昔ボルヘスが、カフカがドン・キホーテに与えた影響があると語っていたことがあって、それはカフカを読むことでこれまでの文学史の中に「カフカ的」とでも言うような系譜を発見し、そこから文学そのものを読み直すことが可能になるのだ、という意味だと私は受け止めたのですが、その意味で、この作品が、筒井康隆や山尾悠子や山田正紀や椎名誠や北野勇作や円城塔やその他その他に与えた影響について考えることが出来るように思います。

『月と太陽』 瀬名秀明(講談社)
『深紅の碑文』 上田早夕里(早川書房)
 この二作(かたほうは短編集ですが)は現代SFをジャンル的に拡張する先鋭的で挑戦的で、しかも見事な完成度を示した傑作だと思います。酉島さんもふくめここにSFの希望があると思いました。

『白熱光』 グレッグ・イーガン(早川書房)
 海外SFからはこれを。読んでいてワクワク楽しくってしょうがなかったですね。いかにもSFらしいオーソドックスなSFで大好きです。

『「世界内戦」とわずかな希望』 岡和田晃(書苑新社)
 評論からはこれを。SFを現代文学と同地平から読み解いて、現在の世界そのものに接続しようとする強い意志を感じさせるポレミークな批評の書だと思います。バラバラに発表された原稿を集めて作った本にも関わらず一貫したロジックとパースペクティヴに支えられていて、非常に見事な現代文学論になっていると思います。



荒川 健 さん

 国内2作です。

「皆勤の徒」    酉島伝法 4点

 迫力、造語の魅力に引き込まれ、圧倒されて読了しました。
 ほとんど独走。

「うたかたエマノン」梶尾真治 1点

 著者、シリーズともに最高であるのと、歴史上の人物が登場する山田風太郎・明治シリーズを愛読しているため、1点。 



山口 素夫 さん

 積ん読く本が相変わらず全然減らない2013年でした。
 買ってもすぐ読めないので、昨年出たSFは次の4作品しか読んでいません。

コロロギ岳から木星トロヤへ 小川一水
最終定理 アーサーCクラーク&フレデリックポール
ズーシティ ローレンビュークス
世界を変える日に ジェインロジャース
 各1点でお願いします。
 アーサーCクラークの作品を久しぶりに読めて嬉しかったです。
 新人も次々に出てきて、SFを堪能できた一年でした。
 これからが楽しみです。

   ※森下註:『最終定理』は文庫版が2013年3月刊。



小泉 博彦 さん

  順不同です。各1点。

「うたかたエマノン」 梶尾真治

 梶尾さんには不義理をしていて意外に読んでいない。これからボチボチ読みます。楽しみです。
「パラークシの記憶」 マイクル・コーニイ

 「ハローサマー、グッドバイ」と併せて読みました。意外性はないけれど好きな作品です。
「たんぽぽ娘」ロバート・F・ヤング 伊藤典夫編

 なにも言うことはありません。また逢えて嬉しいです。
「夢でまた逢えたら」 亀和田武

 最近お元気ですね。連載中のエッセイも単行本化されるのが待ち遠しいです。
「篠田節子SF短篇ベスト ルーティーン」 篠田節子

 直木賞作家を読んだのは久しぶりです。普通にSFで吃驚しました。
 「架空大海戦 武蔵と大和、最後の咆哮」(川又千秋)と「失踪日記2」(吾妻ひでお)は残念ながら外しました。他に「ハヤブサが守る家」ランサム・リグズ、「もうひとつの街」ミハル・アイヴァス、「クラーケン 上・下」チャイナ・ミエヴェル、「ガーメント」三島浩司、「革命の倫敦」ラヴィ・ディドハー、「見晴らしのいい密室」小林泰三など。



笛地 静恵 さん

【国内】
酉島伝法 『皆勤の徒』 東京創元社 3点
 酉島さんの懐には、実に深いものがあります。遠未来の惑星の終末から、現在のサラリーマンの鬱の心象風景から、中世の錬金術師たちの苦闘まで、まだまだ書ける人です。そのすべてに、東欧の手描きのアニメーションのように温かい、ぬくもりがあります。ここは、始まりにすぎません。彼の世界への扉は、開かれたばかりです。
宮内悠介 『ヨハネスブルグの天使たち』 早川書房 1点
 前作から、新しいフィールドへ。歩みを進めている作品。決して、同じところに止まらない人。これを取り上げないでいるのは、自分の時代を捉えるバランス感覚が、おかしいのではと思えました。国内で一作という投票形式では、限界があります。ここで、自分なりに、けじめをつけます。

【海外】
ロイス・マクマスター・ビジョルド 『死者の短剣 地平線』<上><下> 小木曽絢子 訳 創元推理文庫 1点
 長編のシリーズ物が完結しても、顕彰できる場所がありません。こちらに投票します。四部作完結。新しい西部劇。騎兵隊はいるが、インディアンはいない。異なる民族の間の結婚。書き込まれる男女の愛のディテール。静かに、しかし、ジョーン・バエズの歌声のように、力強い。反戦のファンタジー。



放克軒(さあのうず) さん

 2013年は個人的に2012年よりは新作SFを読んだと思うのですが、傑作・話題作が目白押しで5作を選ぶのに迷いました。(順不同でそれぞれ1点ずつです)
『皆勤の徒』酉島伝法
 驚きの新鋭ですね。独特の言語感覚による強力なイマジネーション喚起力。
『ヨハネスブルグの天使たち』宮内悠介
 ビビットに世界を切り取るセンスと非常に完成された技巧のこれまた類稀な才能を持った作家と思いました。
『夢幻諸島から』クリストファー・プリースト
 はりめぐらされた伏線で、2013年のSFで最も遊ばせてもらった本です。まだ遊び足りていませんが(笑)。
『言語都市』チャイナ・ミエヴィル
 二つの音声を同時に出す言語を話す宇宙人という発想がいったいどこからわいてきたのか。感心しました。
『アサイラム・ピース』アンナ・カヴァン
 本書の登場で他の著作も再刊されるなどアンナ・カヴァンの再評価が進んだことも2013年の大きな出来事だと思います。

 その他『蛇の卵』『第四の館』ラファティ長篇2冊刊行にも驚かされましたし、『ブラインドサイト』『Gene Mapper』も面白かった。他の未読作も興味をそそられるものが多く、それらも少しずつ追いかけたいと思わせる年でした。



大熊 宏俊 さん

上田早夕里『深紅の碑文(上下巻)
 SF的世界観で「全体小説」をこころみたオールタイム・ベスト級の傑作。『華竜の宮』が本篇のプロローグにしか見えません。著者の微塵もゆるがない構築力に只々脱帽でした。
高野 史緒『ヴェネツィアの恋人』
 ヨーロッパ〜ロシア〜カザフスタンにかけての7つの土地に異界を幻視する、著者本領発揮の、たぐい稀なる趣向の幻想小説集。堪能いたしました。
平谷 美樹『風の王国(全10巻)
 10世紀、強国契丹に平和呆けした渤海はまさに併呑されんとしていた。その渤海へ、親の仇討ちに津軽より帰って来た渤海王族の遺児の主人公が、好むと好まざるとにかかわらず歴史の大波に呑みこまれ、津軽人の仲間とともに広大な沿海州・満州を駆け巡り、やがて史実のはざまに理想の国家像を幻視していくという、虚実のあわいに幻想の地図を広げた雄渾の歴史大作。
眉村  卓『自殺卵』
 ここ10年以上ひたすら内部に向かっていた著者ですが、本書では再び外へ向かう志向性を、私は感じました。眉村SFの新たな展開を予感させる最新作品集。
R・A・ラファティ『蛇の卵』(井上央訳)
 「いかれた爺さんの変な小説」みたいな従来のラファティ観に(もちろんそういう面もあると思いますが)、斬新なラファティ観で一石を投じ続けるラファティ翻訳家井上央氏が、満を持して翻訳上梓した長篇SF。キリストの再臨をダブルイメージさせつつ進行するメシア的革命小説の超傑作。
                      (あいうえお順)



らっぱ亭 さん

 ラファティ・ファンサイト「とりあえず、ラファティ」らっぱ亭(@RappaTei)です。
 本年度はプレ・ラファティ生誕百周年にあたり、前年の『昔には帰れない』に続き、まさかの長編2作刊行! というラファティアン狂喜の年でした。この勢いで出版ラッシュを続けていただきたいなあ。
 というわけで、ラファティ『第四の館』『蛇の卵』の2作に持ち点を全部ぶっこみたいところですが自制して。
『第四の館』R・A・ラファティ 柳下毅一郎訳 国書刊行会 (未来の文学) 2点
『蛇の卵』R・A・ラファティ 井上央訳 青心社 2点
 ラファティは別枠として、本年度の海外・国内マイ・ベストSFにはいずれも0.4点で。いずれも目眩く幻惑の逸品。
『夢幻諸島から』クリストファー・プリースト 古沢嘉通訳 早川書房 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ) 0.4点
『皆勤の徒』酉島伝法 東京創元社 (創元日本SF叢書) 0.4点
 さて、あと1作をどうするか。例年はSFクラスタへの布教の意味もあって野崎まどを挙げてきたのですが、本年度は『know』『ファンタジスタドール イヴ』で見事SFブレイクを果たしましたね。熱烈マドラーとして嬉しいような、ちょっと寂しいようなw
 今年度は石川博品も『ヴァンパイア・サマータイム』と『後宮楽園球場 ハレムリーグ・ベースボール』と嬉しい2作刊行でしたが、どちらかといえばリテラリー・クラスタへ押したい作家なのです。

 海外SFでは、チャイナ・ミエヴィル『言語都市』、ピーター・ワッツ『ブラインドサイト』も良かったけど、うーんどうしよう。マイクル・コーニイ『パラークシの記憶』はハロサマと併せて読むとSFを読む快感に浸れること間違いなしの傑作なんですが、実は原書で読んでいて翻訳はまだ読めてないので投票できないしなあ。

 あー、そうだ。SFじゃないけど、SFクラスタを揺るがした超話題作があったー。これを私が挙げなくてどうするw
 というわけで。
『バーナード嬢曰く。』施川ユウキ 一迅社 (REXコミックス) 0.2点
 以上、よろしくお願いします。



すける さん

 2点

『言語都市』チャイナ・ミエヴィル
 意外なほどストレートな文化人類学的SFで、今後の作品にも期待。
 以下1点

『クラーケン』チャイナ・ミエヴィル
 こちらは遊びまくった作品で、幅の広さに驚きました。アナロジーに関しての言及は『言語都市』とあわせて読んでも興味深いところがあります。
『夢幻諸島から』クリストファー・プリースト
 プリーストにはこれまで微妙に距離をおいてきたわたしでも認めざるを得ない大傑作。
『蛇の卵』R・A・ラファティ
 短編においては奇想としか言いようのなかった個々の要素も、長編の一つの世界像の上で語られると、また違うビジョンを見せてくれました。



Takechan さん

 昨年も、F.ポール,R.マシスン,J.ヴァンスなどの旧ハヤカワSFシリーズ以来のなじみの作家がなくなった。最近では、眼も疲れやすいので読書量も減ったが、下記の5作品に1点づつ投票します。
1)P.Kディック 「空間亀裂」

  様々なアイデアをぶちこんだ、作者本人も認めているB級作品であるが、それでも面白く読めた。

2)C.プリースト 「夢幻諸島から」

  語り/騙りの名人である作者の連作集。わりとエロチックな感じもする。

3)P.ワッツ 「ブラインドサイト」

  宇宙船に乗り込んだフリークたちと、異星の構造物とのファーストコンタクトテーマ。意見は分かれると思うが、結構楽しめた。

4)M.コーニイ 「パラークシの記憶」

  待ち遠しかったハローサマーグットバイの続編。本編にてほとんどの謎は解明される。

5)上田早夕里 「深紅の碑文」

  破滅にひんした地球での3人の主人公の生き様を描いた本格的SFの傑作。同じようなテーマの作品でウインターズの「地上最後の刑事」があるがミステリーが主体である。



nyam さん

 昨年は体調を崩したこともあり、体力づくりも兼ねて古本屋巡りをしていました。そのためか、新作の情報をおろそかにしていたので、良作を見逃したようです。(以下各1点)

『ブラインドサイト』ピーター・ワッツ(東京創元社)
面白いけど少し難解。また読み返してみたい。
『任務外作戦』ロイス・マクマスター・ビジョルド(東京創元社)
人ごとじゃないですよ、バイオテクノロジーの進歩は早すぎる。
『星を創る者たち』谷甲州(NOVAコレクション)
なんと土木SFじゃないんですよ、これが。
『ZOO CITY』 ローレン・ビュークス(早川書房)
SFというよりはダークファンタジーでしょうか。
『タイタニア4<烈風篇>』田中芳樹(講談社ノベルス)
とにかく出版されただけでうれしい。
●番外編 映画『パシフィックリム』 科学『STAP細胞』 あと、『リライト』法条遥、『見晴らしのいい密室』小林泰三も記憶に残りました。



林 芳隆 さん

 今年のリストを眺めていたら、読んだ本が珍しく6冊もあった。これなら投票できるなと。
『SF奇書コレクション』 北原尚彦  1.0点
『白熱光』 グレッグ・イーガン 0.8点
『死者の短剣 地平線』 ロイス・マクマスター・ビジョルド 0.5点
『空間亀裂』 P・K・ディック 0.5点
『パラークシの記憶』 マイクル・コーニイ 0.5点
 あと、たんぽぽ娘も読んだけど、いまとなってはつらいな。
 オールクリアは原書を読んだので、翻訳は読んでない。それでも良いなら 1.0点
 (ぺ)24冊は読んでるけど、点数は付けにくい。

 (森下註:国内刊行作対象ですので、『オールクリア』原書はカウント外にさせてもらいました)



森下 一仁

 一年のSFを思い返してみると、いちばん印象が強かったのはチャイナ・ミエヴィル『言語都市』になりそう。最初あんなに呑み込みにくかったのが、最後までいって、また読み返すとすらすらわかって、「ああ、そうだったのか」と膝を打ちながら楽しみました。言語と意思疎通と宇宙人とのコンタクトとを絡めたテーマも好み。

 素敵な読書時間を過ごせたという意味ではクリストファー・プリースト『夢幻諸島から』が一段上かも。変なことをしている人たちがいる怪しい地理ガイドといった趣きも、地図マニアの私の心をつかみました。

 日本のSFでは何といっても酉島伝法『皆勤の徒』。えぐいイマジネーションの魅力と造語を含めた言語感覚が抜群。これからもどんどん変的テコであり続けて欲しい。

 一方、高野史緒『ヴェネツィアの恋人』は、端正な幻想小説集。世界文学の最前列に並んで遜色ありません。

 もう1冊は會津信吾+藤元直樹『怪樹の腕〈ウィアード・テールズ〉戦前邦訳傑作選』。奇っ怪で愉快なこの本が今年のリストから洩れるのはしのびない。編者の解題も楽しい読みものになっています。

 ということで上記5冊に1点ずつ。



キュウちゃんさん

 毎年、月日の経つのが早くなって、気が付けば月末です。 森下さんが、すでに投票をすませておられますので、迷ったのですが、 入れておきたいものも有るので、投票します。
  1. 少年少女昭和SF美術館 大橋博之
  2. SF奇書コレクション 北原尚彦
  3. 失踪日記2 アル中病棟 吾妻ひでお
  4. 敵は海賊・海賊の敵 神林長平
  5. にすいです。冲方丁対談集 冲方丁
 以上に、各一点でお願いします。

 相変わらずSFのボーダーラインを浚っております。
 あまり皆さんとダブらないのは、好みの問題だと思っています。 小説は半歩遅れくらいで、出来るだけは読むように心がけているのですが、投票には間に合いません。
 以上で、よろしくお願いします。



高槻 真樹さん

 今年はSFコミックの大当たり年!と主張した割にはあまり挙げ切れていないので、今回はあえてラファティも皆勤の徒も挙げずに(皆さん挙げてるだろうし)、コミック5本挙げてみました。

panpanya「足摺り水族館」
 超マイナー、本屋では売ってない(でもアマゾンで購入可能)かわいいのになんだか恐い夢の文学コミック。もよもよした感覚がステキ。
施川ユウキ「バーナード嬢曰く。」
 本を読むと言う行為そのものを検証してしまった衝撃のメタコミック。そうか、本を読むとは見えを張ることなのか(違)
kashmir「てるみな」
 虚構の「乗り鉄」ルポコミック。妄想度の高い強烈な虚構の数々がすごい。作者のいつものシュールギャグ路線も好きですが別の一面を見る思いでした。
速見螺旋人「靴ずれ戦線」全2巻
 ストルガツキー「月曜日は土曜日に始まる」を彷彿とさせる魔術世界なロシア=旧ソ連の独ソ戦。膨大な蘊蓄を駆使したにぎやかでコミカルな世界がすばらしい。
あfろ「魔法少女ほむら☆たむら 〜平行世界がいつも平行であるとは限らないのだ。〜」
 「魔法少女まどか☆マギカ」の公認パロディコミックですが、キャラクターの一人ほむらが、様々なパラレルワールドを渡っていくSF度の高い内容となっています。それはマミだらけの世界だったり、世界全体がテレビ中継されている世界だったり・・・明快なギャグコミックですが、各エピソードは微妙につながっていて、壮大なひとつのSF世界を作っており、好感が持てます。
 以上、各1点ずつでお願いします。



椋野 直樹さん

 
@『星を創る者たち』谷甲州 河出書房新社…3点
A『生存者ゼロ』安立正 宝島社…1点
B『神、さもなくば残念』小森健太郎 作品社…1点
 本当にSF読んでなくて、すみません。なにせ分厚い。何せ長い。短い作品でも、こちらの根気とイマジネーションは衰退するばかり。『ヨハネスブルグの天使たち』も非常に意欲的、挑発的、すごい作品だとは思うのですが、加齢とともにリアリズム的な作品を求めるせいか、何かがこちらの心にブレーキをかける。ごめんなさい。ちょっとハチャメチャなマジックリアリズムを読んで、感覚を叩き直さないといけませね。

メディア編

○コミック『疾走日記2アル中病棟』 吾妻ひでお イーストプレス
○映画

@『パラノーマン ブライスホローの謎』 監督クリス・バトラー、サム・フェル 脚本クリス・バトラー
A『ルーパー LOOPER』 監督・脚本ライアン・ジョンソン
B『パシフィックリム』 監督ギレルモ・デル・トロ 
               脚本ギレルモ・デル・トロ、
               トラヴィス・ビーチャム
C『クロニクル』 監督ジョシュ・トランク 
           脚本マックス・ランディス
D『キャビン』  監督ドリュー・ゴダード 
          脚本ジェス・ウェドン、ドリュー・ゴダード














ベストSF2013 投票要領


 今年もやります、良かったSFアンケート。
じっくり選んで投票してください。

 2013年1月1日から12月31日までに国内で出版されたSF(奥付の日付で判断してください)で、あなたがおもしろかったと思うものをEメールで投票してください。要領は次のとおりです。

  • 日本語で読めるもの。最終集計で翻訳作品と国内作品に分けます。
  • 1人5作品まで推薦可能。もちろん、1作品でも構いません。
  • 点数集計:推薦者1人が5点を所有し、推薦各作品に割り振る。指定のない場合は、均等に配分する。
    例1:H・G・ウェルズ『自伝補遺』―4点、カート・ヴォネガット『プー・ティー・ウィー』―1点
    例2:へび『ニョロニョロ』、うま『パカパカ』、ひつじ『モグモグ』。(配点指定がないので各1.667点)

  • 投票期間:2014年2月28日(金)24時まで。