ベストSF2007

★ 投票数 12 ★


ベスト 3


海 外 作 品
1 『双生児』             クリストファー・プリースト(6点)
2 『ウォー・サーフ』             M・M・バックナー(3点)
3 『輝くもの天より堕ち』 ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア(2.667点)

国 内 作 品
1 『星新一 一〇〇一話をつくった人』      最相 葉月(9点)
2 『Self-Reference ENGINE』           円城 塔(4.167点)
3 『MM9』                      山本 弘(3.5点)



各投票者の推薦作

(到着順)

毛利 信明 さん

 今年は早々と投票します。いずれも順位は関係ありません。各1点で。

『星新一 1001話をつくった人』 最相 葉月
『虐殺器官』 伊藤 計劃
『オリュンポス』 ダン・シモンズ
『双生児』 クリストファー・プリースト
『すべての終わりの始まり』 キャロル・エムシュウィラー

 昨年は星新一氏関係の出版が目にとまりました。『星新一 空想工房へようこそ』『ひとにぎりの異形』(森下氏の「階段」、真っ先に読みました。結末がはっきりしなかったのですが。あの青年は老人のように再び戻っては来ないのでしょうか)など。
 これに伴って『日本SF・幼年期の終り』『幻想と怪奇の時代』『日本SF作家クラブ40年史』など、回顧的な本も出版されましたね。個人的には『新編 戦後翻訳風雲録』で取り上げられた福島氏の項が興味深かったです。
 またYAレーベルでのSF系の作家たちの執筆が目立ちました。これを読んだ少年少女が一人でも多くSFに関心をもってくれたらと願っています。
 上に上げた本以外で印象に残っているのは『[ウィジェット]と[ワジェット]とボフ』『沈黙のフライバイ』『プリズムの瞳』『擬態 カムフラージュ』『ゴーレム100』『Self-Reference ENGINE』など。


本橋 牛乳 さん

 いつもうっかり、締め切りを忘れてしまうので、今年は早めに。

 2007のベストはというと、
クリストファー・プリースト 『双生児』 2点
ジャネット・ウィンターソン 『灯台守の話』 1.5点
ジャネット・ウィンターソン 『パワー・ブック』 1点
アルフレッド・ベスター 『ゴーレム100 0.5点
 といったところで。

 『双生児』は構成の巧みさといい、背景の描き方や作者の思想といい、圧倒される話だし、結末もいかにもプリーストらしいものなので、文句無くベスト1です。
 『灯台守の話』は、初期の自伝とファンタジーが混じったウィンターソンがパワーアップして帰ってきたという本。どんな過去だって、灯台が見ているし語ってくれる、そんなお話になってしまうという。けっこうポジティブな気持ちになれる本。同時に、その語りのたくみさも。時間を越えた錯綜する物語として、優れたファンタジーになっていると思うので。
 けれどもその作品を書く前に『パワー・ブック』という、サイバー空間にどんどんとお話を投げ込んでいく、そんな作品を書く経験が必要だったのか、ということも感じています。ネットの世界、つまりオンラインの世界では、別の物語、別の人格がいくらでも紡ぎだされてしまう。そう思うと、灯台っていうのは、アクセスポイントだったのかって思い当たるのです。
 『ゴーレム100は、タイポグラフィがすごいっていうか、バラード以降、サイバーパンク以前の力強さっていうのでしょうか。中味よりも、そういうところで。


さあのうず さん

  1. 『双生児』 クリストファー・プリースト……2点
  2. 『虐殺器官』 伊藤 計劃……1点
  3. 『輝くもの天より堕ち』 ジェイムズ・ティプトリー・Jr……0.667点
  4. 『ゴーレム100』 アルフレッド・ベスター……0.667点
  5. 『Self-Reference ENGINE』 円城 塔……0.667点
1. 『奇術師』の映画(プレステージ)も公開されたから2007年はプリーストの年で間違いなし! 3月刊行予定の『限りなき夏』が楽しみ。
2. 死者が必ずしも優しくない、という苦さが印象深い。

 以下は同点で。

3. 晩年の作ということでもっと枯れたものを予想していたが、かなりド派手な宇宙SFでびっくり。不思議な熱情があふれ出すような作品で、ティプトリーのまた違った一面が感じられる。
4.功成り遂げたはずのベスターが放った一発。四半世紀経た上でもいかがわしい臭気が漂う。何はともあれエラいものを掴まされた気分。渡辺佐智江万歳。
5.全てが計算されているはずなのだが、計算についていけないこちらには得体の知れない一品である。とりあえずびっくりしたのでランクイン。


大熊 宏俊 さん

ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア『輝くもの天より墜ち』浅倉久志訳(ハヤカワ文庫)……1点
ケリー・リンク『マジック・フォー・ビギナーズ』柴田元幸訳(早川書房)……1点
筒井康隆『巨船ベラス・レトラス』(文藝春秋)……1点
堀晃『バビロニア・ウェーブ』(創元SF文庫)……1点
笙野頼子『だいにっほん、ろんちくおげれつ記』(講談社)……1点

《番外》最相葉月『星新一 1001話をつくった人』(新潮社)

 ティプトリーは最初の出会いが悪くて読んでなかったのですが、本書を読んでびっくりし、積読にしていた文庫本をすべて読破してしまいました。世評に偽りなきことを確認。
 リンクは前作ほどの喚起力はなかった気がしますが、それでもやはり圧倒的でした。
 『巨船ベラス・レトラス』は、小説・批評理論入門という感じで面白かった。
 『バビロニア・ウェーブ』は復刊ですが、私自身は初読。つまり懐かしさで採ったのではないということです。間違いなく「世界」レベルのハードSFの傑作であり、自信を持って07年のベストSFに挙げさせていただきます。
 『だいにっほん、ろんちくおげれつ記』は、SF的見地からはディストピア未来小説の範疇に入ると思いますが、プロパーなディストピア小説がエクストラポレーションで「らしさ」が装われるのに対して、そういう操作は端から無視されており、とんでもなくいびつなマジックミラー的ディストピアが現前しています。それはある意味筒井的擬似イベント世界が(著者が傾倒しているらしく本篇内でも言及されている)藤枝静男的な幻想空間に移植されたような印象があります。描かれたロリ少女スーツのリアリティに「うわーっ」と吐き気を感じました。
 星評伝は、私たちがまったく知らなかった、想像もできなかった星新一のダークサイドが照射されていて凄かった。ただ小説ではないので(番外)。


こり さん

『悲しき人形つかい』 梶尾 真治
『虐殺器官』 伊藤 計劃

 なんと2007年に出た本の中では2冊しか読んでいませんでした。
 2.5点ずつになるのでしょうが、もしよければ1点ずつで3点は棄権としてもらったほうがいいかも……です。
(森下註:お言葉どおり、各1点でカウントさせてもらいます)


中村 達彦 さん

 以下、各1点ずつでお願いします。

『時砂の王』 小川一水
『MM9』 山本弘
『魔大陸の鷹』 赤城毅
『日本SF全集総解説』 日下三蔵
『ひとにぎりの異形』 井上雅彦編

《番外》
 『押川春浪回想譚』
 『ほしのはじまり』
 『クジラの夜』
 『SF奇書天外』

 『時砂の王』は、古代日本に出現した人工生命体と姫巫女たる少女の出会いに始まります。二千数百年にわたる人類の存亡をかけた時間戦争。世界設定や敵の正体、ストーリーの展開などSFのアイデアが豊富に語られています。
 『MM9』は怪獣ものです。複数のエピソードで構築されていますが、超常現象や特撮への拘りが伝わります。怪獣が災害として常例と化した世界で活躍する気特対。第2話の怪獣(?)は、実は物語のおちでその存在は……。山本先生は、エッセイ集『宇宙はくりまんじゅうで滅びるか?』と、1月に文庫化された『シュレディンガーのチョコパフェ』もお薦めです。
 『魔大陸の鷹』は、大正時代を舞台にした冒険活劇シリーズで、昨年完結しました。タフな主人公と取り巻く仲間たちの痴話げんかや、読者を楽しませるサービスの数々はなかなか。第1巻は3作収録され、お得です。
 『日本SF全集総解説』は、50年代以降の日本SF史を語る上でも、手際よくまとめられた一冊です。日下先生の趣味も少し入っているのが、にやりとします。欲を言えば一部の作家に関して、もう少し紹介してもらいたかったです。
 『ひとにぎりの異形』は、異形コレクション発刊10周年を祝う意味も込めて入れました。こういう短編群がもっと注目されてもらいたいですね。

 《番外》は、先の2作は、良質の作品を単行本化してくれたことに感謝です。『クジラの夜』は、SFではありませんが2004年と2005年のベストで挙がった有川浩作品の後日談です。『SF奇書天外』は、隠れた名作迷作を紹介した功績が見逃せません。
 あと2007年は、アニメ・特撮は面白い作品群が小粒そろいでした。

 《追加》
 『図解 宇宙船』 新紀元社から出た本ですが、後半、空想の宇宙船を多数紹介しています。時折、マニア向けのコメントが語られているのが嬉しいです。


平林 孝之 さん

1) Self-Reference ENGINE (1.5点)
2) 進化の設計者 (1.5点)
3) 人類は衰退しました 2 (1点)
4) 沈黙のフライバイ (1点)

 1)は、SFでしか表現できない世界の構築という点でイーガンすら超えている、飛び抜けた一作。トークショーなどで著者の話を伺うと、本人が見えてる世界をそのまま文にしただけのように思えてくるのは不思議ですが。

 2)は分子生物学から生態学までを結びつけて提示される大胆な進化説が魅力。テーマはAADDシリーズと概ね変わらない。

 『人類は衰退しました』自体は毒にも薬にもならない作品だったが、続編の3)はSFガジェットの扱いが冴える傑作。『不思議の国のアリス』の山本弘的解釈の前半、時間ものガジェットの使い方がとぼけている後半の二部構成。

 4)は宇宙という大きなテーマを描く、肩の力が抜けたような独特の調子が魅力の短篇集。「大風呂敷と蜘蛛の糸」はあれよあれよという間に自分も宇宙に行けるような気がしてくる。


椋野 直樹 さん

 期日ぎりぎりで申し訳ありません。今年もベストSFに参加させて頂きます。とりあえず、作品名と点数のみ送付致します。

    2007年度ベストSF

『星新一、一〇〇一話を創った人』 最相葉月 新潮社 4点
『MM9』 山本弘 東京創元社 1点

    メディア部門

――映画――
『河童のクゥと夏休み』 監督/原恵一 シンエイ動画

――DVD――
『ブレードランナー25周年スペシャルエディション』 監督/リドリー・スコット ワーナーブラザース映画

 以上の作品になります。時間のやりくりが上手くいかず、海外作品や大長編、短編集も手が回りません。偏った選出で申し訳ありません。


森下 一仁

『星新一 一〇〇一話をつくった人』 最相 葉月
『双生児』 クリストファー・プリースト
『輝くもの天より墜ち』 ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア
『大失敗』 スタニスワフ・レム
『千の脚を持つ男――怪物ホラー傑作選』 中村 融

 各1点。年末に出た三島浩司『シオンシステム』日下三蔵『日本SF全集総解説』も外すにはもったいないのですが、入りきらず。残念。


小泉 博彦 さん

 昨年はSF関連の本を少し読みましたので、投票させていただきます。というか、読んだ本全てですが。

『星新一 1001話をつくった人』 最相葉月 3点
『MM9』               山本弘   1点
『日本SF全集・総解説』      日下三蔵 1点

『今日の早川さん』         COCO   0点

 投票とは関係ありませんが、昨年は『星新一〜』以外にも、『創造の狂気』ニール・ゲイブラー『みんなCMソングを歌っていた〜』田家秀樹)と評伝の秀作を読むことができました。


nyam さん

1.『ウォー・サーフ』 M・M・バックナー ハヤカワ文庫 ・・・3点
2.『Self-Reference ENGINE』 円城塔 ハヤカワ書房 ・・・1点
3.『老人と宇宙』 ジョン・スコルジー ハヤカワ文庫   ・・・1点

 今年は、老人(時間?)SFの当たり年であった。ひょっとして「老人」テーマがSFのなかに定着するかも???
 『火星の長城』、『銀河北極』アレステア・レナルズ『沈黙のフライバイ』野尻抱介も記憶に残りました(短編集のため、エントリーしていません)。レナルズは第一作(啓示空間)がだるかったので期待してませんでしたが、宇宙史として観てみると、なかなかのものでした。

 追伸 Ubuntu、始めました。
『LINUXを「読む」』こじまみつひろ マイコミ ・・・ SFより面白かった。


fuchi‐koma さん

1.『Self-Reference ENGINE』 円城塔…1点
2.『ゴールデン・エイジ』三部作 ジョン・C・ライト…1点
3.『日本SF全集・総解説』 日下三蔵…1点
4.『MM9』 山本弘…0.5点
5.『ポスト・ヒューマン誕生』 レイ・カーツワイル…0.5点

 1.2007年の日本SF大型新人ラッシュから、お気に入りの一冊を。神林長平、北野勇作あたりが好きなかたにオススメ。
 2.「オレの考えた遠未来!」の世界での知性のありかたを気ちがいのように書き込む偏執狂めいた気質はグレッグ・イーガンにも通じる(気がする)。小説としては異常に読みにくいが、ライトはSFでしか描けないことをやってのけた。それは間違いない。次はどんなライトノベルを書いてくれるのだろう。大期待。
 3.ノンフィクションでは最上葉月『星新一 一○○一話をつくった人』も素晴らしかったが、自分のような後追いのSFファンにとって、日本SFの五十年あまりにまたがるSF作家たちを網羅的かつコンパクトに解説した本書は最高のガイドブックでした。
 4.この本について思うところで、山岸真さんの以下の言葉より適切な表現が浮かびません。「こういう怪獣小説が読みたかった!」(〈本の雑誌〉2007年12月号「SF新世紀」コーナー)
 5.現代SFが描くべきテーマのひとつであると思われる「シンギュラリティ」について、現時点で最も詳しく解説している本。おおざっぱで、やたら楽観的な著者の態度にいらいらすることがあるかもしれないが、押さえておけばSFをより楽しめること請け合い。

 以下番外

『星新一 一○○一話をつくった人』最上葉月
『食卓にビールを6』小林めぐみ
『人類は衰退しました2』田中ロミオ
『虐殺器官』伊藤計劃
『ひとにぎりの異形』井上雅彦・編
『時砂の王』小川一水
『鯨の王』藤崎慎吾
『進化の設計者』林譲治
『ジャン=ジャックの自意識の場合』樺山三英
『ゴーレム^100』アルフレッド・ベスター
『火星の長城』アレステア・レナルズ
『残虐行為記録保管所』チャールズ・ストロス
『宇宙はくりまんじゅうで滅びるか?』山本弘
『超能力番組を10倍楽しむ本』山本弘
『今日の早川さん』COCO








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