1 | 『シンギュラリティ・スカイ』 チャールズ・ストロス | (5点) |
---|---|---|
2 | 『デス博士の島 その他の物語』 ジーン・ウルフ | (4点) |
3 | 『わたしを離さないで』 カズオ・イシグロ | (2点) |
1 | 『天涯の砦』 小川 一水 | (6点) |
---|---|---|
2 | 『ラギッド・ガール』 飛 浩隆 | (4.5点) |
3 | 『アイの物語』 山本 弘 | (2.5点) |
〃 | 『ミッションスクール』 田中 哲弥 | ( 〃点) |
- こり さん
- 『つばき、時跳び』梶尾 真治……2点
- 『天涯の砦』小川 一水……1点
- 『銀の弦』平谷 美樹……1点
- 『時の眼』アーサー・C・クラーク&スティーヴン・バクスター……1点
- 『天涯の砦』以外は全部時間物です。時間物が好きなんですよね、やっぱり私は。 どれも甲乙つけがたいのですが、『つばき、時跳び』はご当地ですから(^^;)
- 大熊 宏俊 さん
- ○眉村卓『いいかげんワールド』は、「カルタゴの運命」以来8年ぶりの新作長編であり、新作を読めたこと自体大きな喜びだったわけですが、それ以上に教え子のとばっちりで異世界に飛ばされてしまった老教授が、ある意味末期の目ともいえる欲得を超越した態度で飄々と軽々と異世界を渡っていく、いわば<中高年のためのライトノベル>というべきコンセプトがユニークで新鮮でした。
著者は、『新・異世界分岐点』という作品集も上梓しており、集中の新作中篇「エイやん」は、SFという観点からすればむしろ「いいかげんワールド」以上の傑作だと思うのですが、作品集自体は旧作も含んだ自選集なので、ここでは「いいかげんワールド」の方を採りました。
- ○平谷美樹『銀の弦』は、「ノルンの永い夢」系列の多世界もので、その独特の「弦宇宙」のありようは「ノルン」にもまして精緻を極めており、なかなか手ごわかったのですが、一旦理解に及べばラストのイメージの美しさは「果しなき流れの果に」のそれに勝るとも劣らないものがありました。
- ○瀬名秀明『第九の日』は、ロボットに「心」は生まれ得るかという主題が、翻ってそもそも人間の心とは何かということについて再考を迫ってきて刺激的でした。この観測者問題ともいえる現象を主題とする困難に対する著者の苦闘がひしひしと伝わってくる作品集でした。
- ○ジーン・ウルフ『デス博士の島 その他の物語』は、まさにウルフらしさ全開の作品集で、解が不定となる方程式を解くような悪夢と論理が渾然一体となった独特のセンス・オブ・ワンダーが快感でした。
- ○グレッグ・イーガン『ひとりっ子』もまたイーガン節全開の作品集で、「銀の弦」のように多世界解釈的世界を設定してそのなかで「第九の日」のように心とは何かを考究するハードな哲学的スペキュレーションに惑溺させられました。
- 以上順不同。各1点。
- あと選外作品を列挙しておきます。
- ○まずは上記の眉村卓『新・異世界分岐点』。
- ○高野史緒『架空の王国』は、97年に刊行された同名長篇に新たに外伝が付加された完全版で、往年の荒巻義雄を継ぐような架空のヨーロッパの一小国を舞台にした幻想青春小説の佳品でした。
- ○ロード・ダンセイニ『最後の夢の物語』は、河出版ダンセイニ幻想小説集成の最終巻。全4巻の無事完結を喜びたいと思います。
- さあのうず さん(http://ishokuna-hanashi.cocolog-nifty.com/)
- 今年のベストは下記のようになりました。
- 1.『デス博士の島 その他の物語』 ジーン・ウルフ 2点
とにかく表題作が好き。とてもまだまだ全体像がとらえられている訳ではないけれど、繰り返しあらわれる孤独な少年のイメージと爪の先まで計算された作品世界に自分の読書体験を根本的に変えられてしまいました。
- 2.『ラギッド・ガール』 飛浩隆 1.5点
シリーズものの途中だし短編集だし、ベストには入れにくいが、予想を大きく上回る展開に一票。
- 3. 『ベータ2のバラッド』 若島正編 1点
NWSF史を改変しようとする試み?という話もあったようですが、いまどきNWSFネタのアンソロジーなんて驚き以外の何物でもない。いや別に「四色問題」を絶賛しようなどという野望のないいち凡SFファンですが。
- 4. 『グラックの卵』 浅倉久志編 0.5点
これまた結構癖の強い作品が多いので、今の短編集ブームのおかげですね。ギャラハーものはもう少し読んでみたい。
- 「SFが読みたい!2007年版」と同じような結果になってしまいました。とにかく国書刊行会にやられっぱなしといったところでしょうか。 ところで、〈あたらすいスペオペ〉なるものがあるそうじゃがどんなものかよく知らぬものでしてな・・・。
- nyam さん
- 『シンギュラリティ・スカイ』 チャールズ・ストロス
- 『火星縦断』 ジェフリー・A・ランディス
- 『明日への誓い』 エリザベス・ムーン
- 『メモリー〈上・下〉』 ロイス・マクマスター・ビジョルド
- 『天涯の砦』 小川 一水 ・・・・・・以上各1点
- ○番外編
- ――短編集――
- 『シャーロック・ホームズのSF大冒険』 マイクレズニック編
- 『ベータ2のバラッド』 若島 正編
- 『グラックの卵』 浅倉 久志 編
- 『ひとりっ子』 グレッグ・イーガン
- ――その他――
- 『チャリオスの影』 ロイス・マクマスター・ビジョルド
- 『時間はどこで生まれるのか』 橋元 淳一郎
- 『萌えよ! 戦車学校 02式』 田村 尚也 , 野上 武志
- 今年のSFはスペオペとサバイバルものとなったわけだが、これをSFの原点回帰とみるべきなのだろうか。現実に起こった「冥王星、格下げ!」の奇想天外さに比べればちょっと弱いか。ちなみに、『デス博士』と『時の眼』は未読。
- 森下 一仁
- 『ラギッド・ガール』 飛 浩隆……1
- 『わたしを離さないで』 カズオ・イシグロ……1
- 『きつねのはなし』 森見 登美彦……1
- 『ミッションスクール』 田中 哲弥……1
- 『逆境戦隊バツ[×]』 坂本 康宏……1
- ユーモアものを2作も選べたのは嬉しい限り。浅倉久志編『グラックの卵』も入れたいところでした。
- 森見さんは『夜は短し歩けよ乙女』を推す人もいそうですが、私は 『きつねのはなし』。
- カズオ・イシグロは小説がうまい。うまいという点ではビジョルド『メモリー』も相当なものでしたが……。
- 『ラギッド・ガール』は2つの世界の関係/対比が出てきて深みがぐんと増した。素晴らしい。
- 毛利 信明 さん
- 初めて投票します。去年は翻訳物では短編集に印象に残るものが多かったように思います。国内では筒井氏、眉村氏などベテラン勢の活躍でしょうか。また浅倉氏の『ぼくがカンガルーに出会ったころ』、小松氏の『SF魂』などエッセイ集の出版がうれしかったですね。
- 年を取ると記憶力が悪くなって、先週読んだ本の内容さえ覚えていない始末。読書メモを見ながら選んではみましたが、果たしてこの作品でいいのかどうか。順位は特に意識していません。
- ○『失われた町』三崎 亜記
- ○『ラギッド・ガール』 飛 浩隆
- ○『アイの物語』 山本 弘
- ○『遺す言葉、その他の短篇』アイリーン・ガン
- ○『デス博士の島 その他の物語』ジーン・ウルフ
- (森下註:各1点となります)
- 林 芳隆 さん
- 『シンギュラリティ・スカイ』 チャールズ・ストロス 2票
- 参加者が少なそうなので協力します。
- 去年読んだ数少ないSFのうち、推薦できるのはこれだけでした。
- 平林 孝之 さん
- 『アイの物語』 山本 弘……1.5点
- 『グリュフォンの卵』 マイクル・スワンウィック……1.5点
- 『天涯の砦』 小川 一水……1点
- 『シンギュラリティ・スカイ』 チャールズ・ストロス……1点
- (1)は、今時珍しいほど直球に主張が描かれる短編それぞれが素晴らしかった。
- (2)は個々の短編の質と方向性の多彩さに。
- (3>も面白かったが、小川一水にはさらなる向上が期待できそうである。
- ニュー・スペース・オペラで描かれる奇妙な世界観は、SFにしかなしえないものだと思うので、それに敬意を表してもっとも〈特異点〉後の世界を生き生きと描いた(4)に。
- 選外:
- 『ラギッド・ガール』 飛 浩隆
- 独立した短編・短編集として読んでも06年最高の作品だったと思うが、〈廃園の天使〉シリーズ完結を待ってこそ真の評価ができる気がしたので。
- 椋野 直樹 さん
- 『天涯の砦』 小川 一水……3点
- 『わたしを離さないで』 カズオ・イシグロ……1点
- 『ぼくがカンガルーに出会ったころ』 浅倉 久志……1点
- ○周辺書
- 『殺しの時間』 若島 正
- ○メディア部門
- 『涼宮ハルヒの憂鬱』(TVアニメ)
- 『武部本一郎SF挿絵原画蒐集』 加藤 直之
- fuchi‐koma さん
- 『ミッションスクール』 田中 哲弥……1.5
- 『パラレルワールド』 ミチオ・カク……1.5
- 『ラギッド・ガール』 飛 浩隆……1
- 『シンギュラリティ・スカイ』 チャールズ・ストロス……1
- 1 は、7年ぶりとなるファン待望の新刊。学園モノ短編集なのだがいずれも類をみないヘンテコな話ばかりでなんとも不思議な読後感。どんな不思議か表現できません。書き下ろし「スクーリング・インフェルノ」の読後感がとりわけてたまらない。あとがきは本文以上に面白いかも。この作家つぎJコレで登場してくれないかなあほんとに。
- 田中哲弥と同じ時代に生きることができてそしてその作品を母国語で読めるということを僕達はもっと誇っていいと思う。
- 2 は、正しくはサイエンス・ノンフィクションというべきところだが、前半で宇宙論の歴史を総ざらいしてから最先端のひも理論の発展版であるM理論に踏み込み、終いにはSFのような話に到達しちゃう。数千億年〜一兆年後にビッグフリーズを迎えたとき我々人類(の延長上の知性体)は果たして生き伸びられるか? たとえば情報だけになって別の宇宙へ脱出することは可能だろうか?……といったことを第一級の科学者たちが真剣に考察していくくだり――しかもその語り口の巧みさも第一級なのだ――には、最上のハードSFを読んだときと同じ知的興奮を味わえた。
- 似たようなところで、サイモン・シン『ビッグバン宇宙論』もポピュラー・サイエンスの解説書として抜群の面白さを誇ったが、こちらはより通俗的で、宇宙論史の確認に留まるものだった。
- どちらもSFをより深く楽しむための副読本として最上級の本ではないか。
- 3 で、『グラン・ヴァカンス』で構築した世界が、より深められた。続編でまたどう引っ繰り返されるかわからないので、これ以上の発言は避ける。シリーズ続巻がじつに楽しみ。
- 4 は、昨年矢継ぎばやに紹介されたNSO(ニュースペースオペラ)作品の中で最もカッコよく、笑えた一冊。空から携帯電話が雨のように降ってくる冒頭からもうシビレっぱなし。言いたいことを前半で言い尽くしたようで後半ダレるが、それを差し引いても魅力じゅうぶん。年末にでた続編『アイアン・サンライズ』は、16歳の美少女が宇宙を舞台に活躍するスパイ・アクション小説。第一作→第二作の作風の変化はアレステア・レナルズが『啓示空間』のつぎにより娯楽性の高い『カズムシティ』を書いたこととパラレルにみえる。どちらも第二作では小説技術がぐっと向上しており二転三転する物語で読ませる。今後が楽しみ。
- 以下番外
- 『ゴールデン・エイジT 幻覚のラビリンス』 ジョン・C・ライト
- 『デス博士の島その他の物語』 ジーン・ウルフ
- 『アイの物語』 山本 弘
- 『トンデモ本?違うSFだ!RETURNS』 山本 弘
- 『冬至草』 石黒 達昌
- 『カズムシティ』 アレステア・レナルズ
- 『銀齢の果て』 筒井 康隆
- 『天涯の砦』 小川 一水
- 『時間はどこで生まれるのか』 橋元 淳一郎
- 『レフト・アローン』 藤崎 慎吾
- 『マーダー・アイアン』 タタツ シンイチ
- 『日本沈没第二部』 小松 左京 + 谷 甲州
ベストSF2006 投票要領
今年もやりますベストSFアンケート。
じっくり選んで投票してください。2006年1月1日から12月31日までに国内で出版されたSF(奥付の日付で判断してください)で、あなたがおもしろかったと思うものをEメールで投票してください。要領は次のとおりです。
- 日本語で読めるもの。最終集計で翻訳作品と国内作品に分けます。
- 1人5作品まで推薦可能。もちろん、1作品でも構いません。
- 点数集計:推薦者1人が5点を所有し、推薦各作品に割り振る。指定のない場合は、均等に配分する。
- 例1:ボピー『今年こそ』―4点、ジョニー『完全復活』―1点
- 例2:いぬ『さよなら』、いのしし『こんにちわ』、ねずみ『まっててね』。(配点指定がないので各1.667点)
- 投票期間:2007年2月25日(日)24時まで。