ベストSF2005

★投票数 15★

ベスト 3


海 外 作 品
1 『銀河ヒッチハイク・ガイド』  ダグラス・アダムス(5点)
〃 『どんがらがん』    アブラム・デイヴィッドスン(〃点)
3 『なつかしく謎めいて』アーシュラ・K・ル=グウィン (4点)

国 内 作 品
1 『ストリンガーの沈黙』           林 譲治(7.5点)
2 『理屈は理屈神は神』        かんべ むさし (5点)
3 『ある日、爆弾がおちてきて』      古橋 秀之 (4.5点)

得点の詳細




  • 7.5点
    (国内)
    『ストリンガーの沈黙』林 譲治
  • 5点
    (海外)
    『銀河ヒッチハイク・ガイド』ダグラス・アダムス
    『どんがらがん』アブラム・デイヴィッドスン
    (国内)
    『理屈は理屈神は神』かんべ むさし
  • 4.5点
    (国内)
    『ある日、爆弾がおちてきて』古橋 秀之
  • 4点
    (海外)
    『なつかしく謎めいて』アーシュラ・K・ル=グウィン
    (国内)
    『老ヴォールの惑星』小川 一水
  • 3点
    (海外)
    『宇宙舟歌』R・A・ラファティ
    『ディアスポラ』グレッグ・イーガン
    《ネアンデルタール・パララックス》ロバート・J・ソウヤー
    (国内)
    『現代SF1500冊〈乱闘編/回天編〉』大森 望
    『シャングリ・ラ』池上 永一
    『四畳半神話大系』森見 登美彦
  • 2点
    (海外)
    『ヴィーナス・プラスX』シオドア・スタージョン
    『永遠を背負う男』ジャネット・ウィンターソン
    『太陽レンズの彼方へ』チャールズ・シェフィールド
    (国内)
    『もやしもん』石川 雅之
  • 1.5点
    (国内)
    『へうげもの』山田 芳裕
  • 1.25点
    (国内)
    『戦国自衛隊1549』福井 晴敏
  • 1点
    (海外)
    『栄光への飛翔』エリザベス・ムーン
    『輝く断片』シオドア・スタージョン
    (国内)
    『海の底』有川 浩
    『疾走!千マイル急行〈上・下〉』小川 一水
    『修正報告 銀河ツンデレ伝説』みやも
    『バースト・ゾーン―爆裂地区』吉村 萬壱
    『妖怪ハンター 魔障ヶ岳』諸星 大二郎
  • 0.75点
    (国内)
    『星空の二人』谷 甲州
  • 0.5点
    (海外)
    『みんな行ってしまう』マイケル・マーシャル・スミス
    (国内)
    『戦う司書と恋する爆弾』山形 石雄
    『七都市物語シェアドワールズ』田中 芳樹 原案(小川 一水・横山 信義 ほか)
    『バルバラ異界』萩尾 望都

  • 各投票者の推薦作

    (50音順)

    天川 和久 さん

    『ディアスポラ』グレッグ・イーガン……1点
     やはり驚かされました。分からないところばかりでしたけど。

    『宇宙舟歌』R・A・ラファティ……1点
     テンポ良く繰り出される奇怪なユーモアに一気読み。

    『どんがらがん』アヴラム・デイヴィッドスン……1点
     意外にリリカルな風味がある人なんですね。編者・訳者に感謝。

    『みんな行ってしまう』マイケル・マーシャル・スミ……0.5点
     通常のホラーともSFともつかない雰囲気が面白い人。


    u−ki さん

    『太陽レンズの彼方へ』チャールズ・シェフィールド……2点
      21世紀になってマッカンドルー航宙記の残りが出た、というのはなんとも今更な感じですが、やはり時勢に関係なく面白い宇宙SFでした。自分が入れないと誰も入れない気がするので。野尻さんの<クレギオン>とかもそもそもはこんな感じですよね。

    『老ヴォールの惑星』小川 一水……2点

      日本人にもこのような素晴らしいハード宇宙生物SFが書けるのか、と感心させられた表題作。初めてニーヴンと出会ったころのワクワク感を思い出しました。

    『修正報告 銀河ツンデレ伝説』みやも……1点
     副題がエロ小説にありがちな内容にそぐっていない客引き文句になっていますが、本題である「修正報告」を人類よりも上位の宇宙生命が行うりっぱなSF小説であり、細かいSFネタもピリリと聞いていて単なるエロ小説に留まらない内容に好感が持てます。


    S W さん

    『銀河ヒッチハイク・ガイド 』ダグラス・アダムス(安原和見訳/河出文庫)

    (森下註:1作だけですので5点となります)


    大熊 宏俊 さん

     05年も前年に引き続き60年代アメリカNW系中心に翻訳が盛んで、とてもよい年でした(^^)。デーモン・ナイトはもっと評価されるべきだと思いました。今年もこのまま勢いを持続していってほしいです(^^;

     なかでも、わたし的にダントツは『輝く断片』で、これまで上梓されたスタージョン作品集の中でも最高の部類に入るのではないでしょうか。
     つづいて同じく奇コレのデイヴィッドスン『どんがらがん』が素晴らしかった。伏線張りまくりの超絶技巧の果てには「いまここにある」ことの不条理感があります。
     その不条理感はラファティにも共有されており、奇想ばかり喧伝されるラファティですが、奇想の皮を一皮剥けばそこにはデイヴィッドスン同様人生の哀感がしっかりと籠められています。『宇宙舟歌』はそれがストレートに出ていて、ラファティ作品としても口当たりがよく読みやすい長篇でした。

     そんな過去の名作傑作に抗する現代作品はなかったのか? ありました。いわずと知れたイーガン『ディアスポラ』で、とりわけラストの徒労感、無常感に痺れました。
     グウィン『なつかしく謎めいて』はタイトルが不当表示で萎えますが、内容はしっかりSFで、タイトルでスルーせずに読んでほしいと思います。
     あとハミルトン『反対進化』『眠れる人の島』で、ハミルトンがキャプテンフューチャーだけの作家ではないことがよく判りました。

     ライバー『妖魔と二剣士』『ランクマーの二剣士』は、待望久しかったファファード&グレイ・マウザーの新刊であり、そのアンチヒロイックファンタシー的ヒロイックファンタシーに酔いました。特に長篇の後者は傑作。
     ちょっと変わったところで、レオ・ペルッツ『最後の審判の巨匠』は実はSFなのでして、謎めいた「喇叭赤」とはドラッグで拡張した視覚が感じた色彩。またジーン・ウルフばりの「不定のパズラー」としても面白かった。

     それでは採点します。

    • シオドア・スタージョン『輝く断片』……1点
    • アブラム・デイヴィッドスン『どんがらがん』……2点
    • R・A・ラファティ『宇宙舟歌』……1点
    • グレッグ・イーガン『ディアスポラ』……1点

    • 選外)
      エドモンド・ハミルトン『反対進化』……0点
      フリッツ・ライバー『ランクマーの二剣士』……0点
      レオ・ペルッツ『最後の審判の巨匠』……0点
      アーシュラ・K・ル=グウィン『なつかしく謎めいて』……0点

     最後に小説ではありませんが、高井信『ショートショートの世界』は新書版ですが類例のないショートショート百科事典でSFファン必携!


    スズキ トモユ さん

    『ヴィーナス・プラスX』シオドア・スタージョン……1点
    『四畳半神話大系』森見 登美彦……1点
    『バースト・ゾーン―爆裂地区』吉村 萬壱……1点
    『もやしもん』石川 雅之……2点

     『輝く断片』もよかったのですが、やはりミステリよりのチョイスだと思うので、『ヴィーナス・プラスX』のほうを選びました。
     『バースト・ゾーン―爆裂地区』における吉村萬壱の鬼気迫る筆致もよかったです。
     マンガになりますが、菌類SFでありユートピア学園マンガでもある『もやしもん』はなんというのか、匙加減がちょうどよくて好きです。


    タカ アキラ さん

    『ある日、爆弾がおちてきて』 古橋 秀之……4.5点
    『戦う司書と恋する爆弾』 山形 石雄……0.5点

     わかってるねんで! ちょっとときどきごっちゃになるねん。貸金庫とかとかカジシンみたいのが「爆弾が落ちてきて」ええと、恋する爆弾が泣くのはええと、ええと、わ、わかってるねんで!

     えいや!っと思い切って二つに絞りました。
     古橋秀之『ある日、爆弾がおちてきて』は傑作ぞろいの短編集です。SFファンがにやりとするようなしかけもあるんですよ。ぼくは、「三時限目のまどか」が一番好きです。
     『戦う司書と恋する爆弾』の山形石雄は2005年にデビューした人のなかではピカイチ!その後二作目も出しています。異能力者バトルもの(スタンドバトルもの)なのかな。きっと、菊地秀行とかが好きだよね。と油断してたら予想以上の傑作でちょっと嬉しい一冊でした。どちらもしっかりと感動しました。

    とりこ さん

    『なつかしく謎めいて』U・K・ル=グウィン……2点
    『へうげもの』山田 芳裕……1.5点
    『妖怪ハンター 魔障ヶ岳』諸星 大二郎……1点
    『バルバラ異界』萩尾 望都……0.5点

    中島 小太郎 さん

    『理屈は理屈神は神』かんべむさし……5点

    (推薦理由)SFの根源たる宇宙的絶対存在について暗に言及しつつ、個のインナースペースの変質を語った日本SF大賞受賞作家の問題作!。


    中村 達彦 さん

    1. 『ストリンガーの沈黙』林 譲治……1.5点
    2. 『戦国自衛隊1549』福井 晴敏……1.25点
    3. 『海の底』有川 浩……1.00点
    4. 『星空の二人』谷 甲州……0.75点
    5. 『七都市物語シェアドワールズ』田中 芳樹原案(小川 一水 横山 信義ほか)……0.5点

    番外

    • 『星のダンスを見においで』笹本祐一
    • 『ローレライ浮上』
    • 『マンガでわかる小説入門』

     『ストリンガーの沈黙』はハードSFの設定と、時にはほほえましい人間群像がバランスよく書かれています。『戦国自衛隊1549』は、SFとしての評価が低い気もするのですが、豊田有恒先生や光瀬龍先生が書いた歴史SFの後継的作品だと思います。『海の底』は怪獣もの+サンライズアニメ(有川先生は十五少年漂流記とコメントしていますが)ののりですが、動かない潜水艦が舞台としてうまく料理されています。反面、事件の解決の付け方が甘い気もします。
     『星空の二人』は近年各誌で発表したアンソロジーです。ハードSFを加味したバカ話から背筋がぞっとするスペースホラーまで揃っています。谷先生がどの話にも、何かしらの救いを用意しているところに優しさを感じました。『七都市物語――』は超多忙な田中先生に代わって気鋭の作家陣が、それぞれの持ち味を活かして、世界観を壊さずに新しい物語を出しています。
     番外の『星のダンスを見においで』は14年前の作品のリニューアルですが、笹本作品の中で最も好きな話です。ちなみに小川一水先生は、少年時代に笹本作品を読んで作家になる決意を固めたそうですが、実は私も同じ感想を持った記憶があります(笑)。
     残る2冊は、物書きを目指している人に、立ち止まってちょっと読んでもらいたい本です。


    nyam さん

    《ネアンデルタール・パララックス》ロバート・J・ソウヤー(ハヤカワ文庫)……3点
    ――『ホミニッド―原人』『ヒューマン―人類』『ハイブリッド―雑種』――
    『栄光への飛翔』エリザベス・ムーン(ハヤカワ文庫)……1点
    『疾走!千マイル急行〈上・下〉』小川 一水(ソノラマ文庫)……1点

    ・ 番外編

    『マインド・タイム』ベンジャミン・リベット(岩波書店)
    『夢幻紳士 幻想篇』高橋 葉介(早川書房)
    『オクタゴニアン〈1〉』杉浦 守 / 大塚 英志(カドカワコミックス)

     レナルズもイーガンも面白くなかった、「銀河北極」はよかったのに。
     今年の作品はどれもすこし平凡でした。もっと奇想天外な小説の出現を期待します。そう言う意味では、番外編の方がよっぽど「SF」といえます。とくに『マインド・タイム』の内容はSFを超えている!
     なお、コリン・ウィルソンの「迷宮の神」が新訳でよみがえりました。みんな、買おう!


    fuchi‐koma さん

    (1)『四畳半神話大系』森見 登美彦……1点
    (2)『シャングリ・ラ』池上 永一……1点
    (3)『老ヴォールの惑星』小川 一水……1点
    (4)『宇宙舟歌』R・A・ラファティ……1点
    (5)『ディアスポラ』グレッグ・イーガン……1点

    (1)昨年読んで最も面白かった小説の一つ。こういうものが読みたかった。臆病な自尊心と尊大な羞恥心を抱く大学生とかつて大学生だった人へ。
    (2)熱い。面白さでいけばこちらもベスト1。超高層都市アトラスのビジュアル・イメージ、登場人物の奔放さ(というか滅茶苦茶さ)、岡田芽武の漫画のようなアクション・シーンに圧倒され、それらがどんどん加速しインフレーションしハレーションを起こしていく快感。後半に浮き上がるテーマにも瞠目。また『SFが読みたい!2006年度版』掲載の著者インタビューも出色の面白さでした。
    (3)良質なSF短篇集。収録作中では「ギャルナフカの迷宮」が特に面白かった。本書で熟した印象の小川一水の、これからの活躍が本当に楽しみ。
    (4)ラファティの邦訳長編は難解という声が高かったようですが、本書の何と読みやすく楽しいことか。この豪快な冒険譚を読めば元気が出ること間違いなし。
    (5)『万物理論』がいまいちピンと来なかった自分もこれは面白かった。細部が理解できなくて穴だらけの理解を抱えたままラスト・シーンを読んでもSF的感動に到達できた…ように思います。

    ・ 番外(だけれど面白かった)

    『デカルトの密室』瀬名 秀明
    『神の血脈』伊藤 致雄
    《サマー/タイム/トラベラー》新城 カズマ
    『ブルースカイ』桜庭 一樹
    『どんがらがん』アヴラム・デイヴィッドスン
    『現代SF1500冊』大森 望
    『SFベスト201』伊藤 典夫・編
    『ショートショートの世界』高井 信


    marin さん

    『ストリンガーの沈黙』林 譲治……5点

     すみません、なんと去年は2005年に出た本でSFってこれしか読まなかったみたい! びっくり。なので1冊に5点です。
     でも5点付けて惜しくないほどの出来だったと思います。とても面白かったです。


    椋野 直樹 さん

    1. 『どんがらがん』アブラム・デイヴィッドスン……2点
    2. 『現代SF1500冊〈乱闘編/回天編〉』大森 望……2点
    3. 『シャングリ・ラ』池上 永一

    番外
    1. 『失踪日記』吾妻 ひでお
    2. 『そんなに読んで、どうするの?』豊崎 由美
    3. 『萌えの研究』大泉 実成

    メディア部門
    1. 『キング・コング』ピーター・ジャクソン監督

    本橋 牛乳 さん

     まずは、ジャネット・ウィンターソン『永遠を背負う男』(角川書店)に2点。

     新・世界の神話というシリーズの1冊なのだけれども、そういうこと抜きにして、ウィンターソン自身が抱えているものが、地球を背負うアトラスの抱える重みと重なっている。そのしんどさが、読者自身、神話として共有できるつくりになっている。「オレンジだけが果物じゃない」っていうデビュー作から、かなり洗練された内容にまで進化していると思うのだ。そして、ライカと一緒に荷を降ろすシーン、すごくほっとする。神話がもたらしてくれるもの、現代に必要なものとして、ある意味ではSFがすべきことをしている、そんなものではないかって思う。

     アーシュラ・K・ル=グイン『なつかしく謎めいて』(河出書房新社)にも2点。

     ささやかな本だし、短い話がいっぱい入っているけれど、どれももっと長い短編にできるくらいの密度。飛行機と次元をかけ、簡単に次元が移動できてしまう、わけのわからない世界って言う設定から、ほとんどジョークのような作品まで入っていたりして、エッセンスのつまったル=グインのショーケースといったところ。

     シオドア・スタージョン『ヴィーナス・プラスX』(国書刊行会)には1点。

     60年にこれだけのジェンダーSFが書かれているということだけで、ちょっとびっくり。勢いあまって、サンリオSF文庫の『コスミック・レイプ』まで読んでしまった。

    森下 一仁

    『現代SF1500冊〈乱闘編/回天編〉』大森 望
     SF書評をやっている身であるだけに、この仕事の凄さには脱帽するしかありません。

    『シャングリ・ラ』池上 永一
     メチャクチャで、しかも痛快。とんでもない小説とはこのことです。

    『ストリンガーの沈黙』林 譲治
     とぼけていて、未来社会へのビジョンや希望をきちんと盛り込んである。素晴らしい。

    『老ヴォールの惑星』小川 一水
     色々な傾向のSFを楽しんで書けるんですね。心地よい短編集。

    『四畳半神話大系』森見 登美彦
     語り口の面白さが抜群。

     それぞれ1点。
     国内SFの出来が良かったので、海外作品を入れる余裕がありませんでした。



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