ベストSF2004

★投票数 18★

ベスト 3


海 外 作 品
1 『最後にして最初の人類』 オラフ・ステープルドン(5点)
2 『犬は勘定に入れません』 コニー・ウィリス(4.9点)
3 『奇術師』          クリストファー・プリースト(4点)

国 内 作 品
1 『象られた力』       飛浩隆           (4.5点)
2 『推定少女』        桜庭一樹              (4.1点)
3 『空の中』         有川浩               (3.5点)

得点の詳細




  • 5点
    (海外)
    『最後にして最初の人類』オラフ・ステープルドン
  • 4.9点
    (海外)
    『犬は勘定に入れません』コニー・ウィリス
  • 4.5点
    (国内)
    『象られた力』飛浩隆
  • 4.1点
    (国内)
    『推定少女』桜庭一樹
  • 4点
    (海外)
    『奇術師』クリストファー・プリースト
  • 3.5点
  • (海外)
    『アジアの岸辺』トマス・M・ディッシュ
    『ふたりジャネット』テリー・ビッスン
    (国内)
    『空の中』有川浩
  • 3点
    (国内)
    『食卓にビールを』小林めぐみ
    『熱帯』佐藤哲也
    『膚の下』神林長平
    『復活の地』小川一水
    『夕焼けの回転木馬』眉村卓
    『裸者と裸者』打海文三
  • 2.5点
    (海外)
    『万物理論』グレッグ・イーガン
  • 2点
    (海外)
    『SF雑誌の歴史』マイク・アシュリー
    『ケルベロス第五の首』ジーン・ウルフ
    (国内)
    『蹴りたい田中』田中啓文
  • 1.67点
    (海外)
    『フェッセンデンの宇宙』エドモンド・ハミルトン
    (国内)
    『ネフィリム 超吸血幻想譚』小林泰三
    『針』浅暮三文
  • 1.5点
    (国内)
    『凹村戦争』西島大介
    『審判の日』山本弘
  • 1.25点
    (国内)
    『デスタイガーライジング』萩野目悠樹
  • 1点
    (海外)
    『エンベディング』イアン・ワトスン
    《キャプテン・フューチャー・シリーズ》エドモンド・ハミルトン
    『くらやみの速さはどれくらい』エリザベス・ムーン
    『スペシャリストの帽子』ケリー・リンク
    『地球間ハイウェイ』ロバート・リード
    『フューチャー・イズ・ワイルド』ドゥーガル・ディクソン、ジョン・アダムス
    『揺籃の星』J.P.ホーガン
    (国内)
    『ラー』高野史緒
    『リピート』乾くるみ
  • 0.5点
    (海外)
    『塵クジラの海』ブルース・スターリング
    (国内)
    『インナーネットの香保里』梶尾真治
    『蒼穹の槍』陰山琢磨
    『吉永さん家のガーゴイル』田口仙年堂
  • 0.25点
    (国内)
    『黄金蝶ひとり』太田忠司
    『空想科学少女リカ The dream science novels』岡崎弘明+柳田理科雄
    『好き好き大好き超愛してる』舞城王太郎
  • その他
    (国内参考作)
    『MADLAX』真下耕一監督・黒田洋介脚本3点

  • 各投票者の推薦作

    (50音順)

    天川 和久さん

    1.『アジアの岸辺』トマス・M・ディッシュ……2.5点 

     こんなに素直に楽しめる作家だったとは。

    2.『ケルベロス第五の首』ジーン・ウルフ……1点 

     十分に理解できなくても、ウルフを読むのは独特の体験です。

    3.『万物理論』グレッグ・イーガン……0.5点 

     現代SF作家のNo.1!だけど、未来社会の描写とメイン・アイディアの結びつきが今ひとつの様に感じられました。

    3.『ふたりジャネット』テリー・ビッスン……0.5点

     表題作のようなおおらかなユーモアがいいですね。

     

    3.『凹村戦争』西島大介……0.5点 

     これからの期待をこめて。アンシブル通信面白いですね。

      

     やっぱり若い頃のすり込みのせいか、どうしても古い作品に点数が高くなってしまうなあ。とにかく昨年の海外SF翻訳の質と量はうれしい驚きでした。翻訳家と出版社の皆さんに感謝。今年も噂通りに出版されることを祈っております。


    今中 一時さん

     一年ぶりのご無沙汰です。締め切りを忘れててあわてて書いてます。

    『膚の下』神林長平……2点

     唖然としました。日本SFの現在形の最高峰ということで、一番にあげます。

    『象られた力』飛浩隆……1.5点

     素晴らしい作品集に違いはないのですが、『グラン・ヴァカンス』を読んだあとでは点が厳しくならざるを得ません。で、次点。
     とはいうものの、他の短篇群もまとめてほしいと切に願っているのですが。

     残りの点は例年どおり読まなかった傑作のために放棄します。
     なお昨年はストルガツキー兄弟の作品を読みこんだ年でした。『ソラリス』の新訳が出ましたが、英語圏以外のSFの新作も訳されるようになってほしいところです。


    大熊 宏俊さん

    (1)『夕焼けの回転木馬』眉村卓……3点

     「加筆、訂正を加えて完全版として出版」された本作品は、決断のたびに枝分かれしていく多元宇宙というSF的設定に戦前戦中戦後を生きた著者自身の体験を、まさに「自己投機」して、戦前戦中の大日本帝国的な「不自由」と、戦争末期や直後の無政府的な「自由」(焼け跡原っぱ)とを並置しつつ、それらが主人公(たち)の内面に及ぼした仮借なきストレスを抉剔した、おそらくは戦後派文学に連なるものであり、そのような自己と世界への苛烈な認識をくぐり抜けてきた果ての、二つの時間線が主人公たちの内で(胡蝶の夢のように)交差するラストは、そうであるがゆえにでしょうか、何ともいえぬ熱く深い感動をもたらします。著者の最高傑作といってよいと思います。

    (2)『スペシャリストの帽子』ケリー・リンク……1点
    (3)『ケルベロス第五の首』ジーン・ウルフ……1点

     この2作品は、ともに著者によって丹念に仕掛けが施されており、読み返すたびに新たな発見があってわくわくします。深読みすればするほど面白くなる本です。
     このような著者とのキャッチボールが楽しめる本即ち読むことそれ自体が悦楽である本が、昨年は多く翻訳出版されたように思いました(たとえばディッシュ『アジアの岸辺』やダンセイニ『世界の涯の物語』『夢見る人の物語』、あるいは河出書房奇想コレクションの一連の短篇集など)。その意味で、去年は私にとってとてもよい年でした。これもひとえに厳しい出版環境の中、編集者・翻訳者の方々の熱意と出版社の勇気の賜物と、ありがたく感謝感謝です! 今年も引き続きよい年でありますように(^^)


    北原 尚彦さん

    『犬は勘定に入れません』コニー・ウィリス……2.5点
    『奇術師』クリストファー・プリースト……2.5点

     人に勧めるという意味でも、ヴィクトリアン好きである自分には凄く面白かったという意味でも、このニ作が最高でした。
     その他、2004年は面白かった作品がたくさんあったのですが、この二つが図抜けていたのでこのような配分とさせて頂きました。


    古原 伸介さん

    1.『犬は勘定に入れません』コニー・ウィリス……2点
    2.『膚の下』神林長平……1点
    3.『揺籃の星』J.P.ホーガン……1点
    4.『くらやみの速さはどれくらい』エリザベス・ムーン……1点

     は何回読んでも面白い。読み直すと細かいところにもおもしろさがちりばめられていることがわかる。謎が問える爽快さも最高。時間SFが好きな人は必読。
     はさすが火星三部作の最後を飾る作品。人間とはを考えさせるSF。
     は災害SF。ホーガンのいままでの作品がいろいろ盛り込まれており、知っている人にはいつもの話しだが、集大成としておすすめ。
     は衝撃のラスト。SFらしくない作品だが未来の治療について考えさせられる点はまさにSF。


    鈴木 力さん

    『蹴りたい田中』田中啓文(2点)
    『万物理論』グレッグ・イーガン
    『最後にして最初の人間』オラフ・ステープルドン
    『熱帯』佐藤哲也
      (各1点)

     よくもまあこういうこと考えつくよなあ、と驚き感心した作品をチョイスしました。『蹴りたい田中』だけ1点多いのは趣味です。昔から一発ネタの悪ふざけ(しかも、その割に妙に手が込んでいる)には弱いのです。


    タカアキラさん

    『推定少女』桜庭一樹(ファミ通文庫)……4.1点

     過去に上遠野浩平滝本竜彦谷川流なんかに投票してこの桜庭一樹に投票しないわけにはいきません!
     ヤングアダルト世代向けの逃避小説の系譜でしょうか。
     しばらく逃避するけど、ちゃんと帰ってくる話なので好感触です。

    『吉永さん家のガーゴイル』田口仙年堂(ファミ通文庫)……0.5点

     2004年デビューで一番たくさん書いた新人!ほぼ2ヶ月に1冊ペースで立て続けに本がでたのも偉い!
    ガーゴイル君は一家に一人欲しいですよ!

    『犬は勘定にいれません  あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎』コニー・ウィリス(早川書房)……0.4点

     高いなぁ。でもウィリスだもんなぁ。『航路』の人だからなぁ。ダンワーシー先生だもんなぁ。(今回からダンワージー)と思ってえいや!と買ったら面白くて一気読みでした!
     わ、すごいSF! 気持ちよかった! 感動した! やっぱり、端っこでもにわかでもSFファンならハヤカワからハードカバーで出てくる作品は買って損にはならないね。と再認識しました。

    この投票までにエリザベスムーンが読めなかったのが残念無念!


    中村 達彦さん

    『空の中』有川浩(メディアワークス)

     相次ぐ飛行機事故。直後に少年瞬と幼なじみの佳江が、高知の海岸で発見したクラゲ状の生物フェイク。それは世界を襲う怪物出現の前兆だったのです。
     飛行機事故で父を亡くした瞬と友人の佳江、技術者の高巳と事件の真相を知る女性パイロット光希を軸に進みます。
     登場人物の行動に、森下先生も指摘したような「……」の部分もありますが、あちこちに平成ガメラをはじめ近年の特撮作品のオマージュを感じます。
     『ガメラ3』で描ききれなかった、家族を殺された者の悲しみと憎しみのドラマが表されているところに好感を感じます。
     ねたとしてはオリジナリティの欠如を感じますが、怪獣ファンに一読を薦めます。
     高巳に徐々にほぐされていく光希のドラマはほほえましいですが、彼らをちゃかしラストで祝福する自衛隊の仲間も笑います。
     もちろん瞬と佳江ドラマも良いですし、ハイジのおじいさんの様な宮じいさんもなかなかです。
     点数1.50点です。

    『審判の日』山本弘(角川書店)

     5本の物語で構成されたアンソロジーです。どの作品も、もしかしたら明日有り得るかもしれない恐怖を感じます。
     ホラーである「屋上にいるもの」は鈴木光司さんの短編や異形コレクション「水妖」で似た作品を読んでいますが、脳裏に浮かんだ結末のイメージは思わずぞっとしました。
     「夜の顔」、表題作「審判の日」は日常にそっと潜む魔を感じます。誰もが一度は考えたことがあるのでは? 「審判の日」のおちの付け方は、個人的に抵抗を感じます。
     どの作品も、安易な救いを許さず非情に徹したところに味を感じます。
     『神は沈黙せず』『ミラーエイジ』に比べ若干地味にも思えますが、長編やと学会としての活動と並行して、こう言った短編集も続けてもらいたいです。
     点数1.50点

    『デスタイガーライジング』萩野目悠樹(早川文庫)

     昨年完結した全4巻のスペースオペラです。荻野目先生のライフワークとも言える惑星間戦争シリーズです。高温化により人類の種が危ぶまれることで始まった星間戦争。
     一組のカップルと取り巻く人々の戦争絵巻、アメリカドラマ的な味付けをした物語です。
     戦争に翻弄されながら愛を守る2人が泣けます。
     挿絵も原作とマッチしています。角川スニーカー『双星紀』等の作品との併読をお勧めします。
     点数はハッピーエンドで終わったことも含めて1.25点。

    『インナーネットの香保里』梶尾真治(講談社)

    講談社青い鳥文庫から書き下ろしでの新刊です。死にかけた青年と出会った少女は、彼と共に冒険へ踏み出します。舞台は九州の山へと移ります。
     青年の持つ心と心をつなぐインナーネットとは……。山を目指す青年の目的、少女との絆もインナーネットに不可欠です。
     次記の作品同様、子供向けに書かれた小説です。鶴書房のジュブナイルSFからSFへ入った世代としては、こういう作品がもっと、講談社ミステリーランドのSF版に登場してもらいたいですね。
     挿絵の鶴田謙二さんが好きなことも合わせ0.50点。

    『黄金蝶ひとり』太田忠司(講談社)

     ミステリーランドシリーズ書き下ろしです。
     一夏の冒険物語で、ミステリーに入る作品とは言え、物語の鍵を握る宝物はSFです。
     夏休みを過ごすため、祖父の実家で訪れた少年を、様々な出会いが待っています。
     太田忠司先生は、宮部みゆき先生と同様に、ミステリーの中で時折SF小道具を使用しています。また良心的なエンターティメント小説の書き手です。
     小中学生向けに書かれた本作品にも、さりげない優しさを感じます。
     点数は0.25点。

     すいません、読みたい作品はいろいろありますが、ちゃんと読み終えた作品が少なく、これしかピックアップできませんでした。

     他には特別推薦で

    『トンデモ本 違う、SFだ!』山本弘(洋泉社)

     雑誌に連載されたSF作品紹介のコラムが単行本化された1冊です。
     氏のギャグ、突っ込みを交えた絶妙な語りで、過去からのSFが紹介されています。
     面白いですが、自分がどれだけSFを知らないか痛感させられました。反省。
     同じ語り口による『山本弘のトワイライトTV』もお勧めです。

    『SF雑誌の歴史 パルプマガジンの響宴』マイク・アシュリー(東京創元社)

     改めてアメリカSF雑誌の凄さを思い知らされました。ですがアメリカ人の持つくだらない発想によるバカ本への情熱に対し、日本ではこういった柔軟な発想ができるか?
     価格の高さが気になりますが、翻訳の牧さんは大変だったことも合わせ紹介します。


    nyamさん

    ●2004ベストSF

    1.『ラー』高野史緒(ハヤカワJコレクション 早川書房) ・・・1点
    2.『復活の地 3』小川一水(ハヤカワ文庫 早川書房) ・・・1点
    3.『凹村戦争』西島大介(ハヤカワJコレクション 早川書房)・・・1点
    4.『フューチャー・イズ・ワイルド』ドゥーガル・ディクソン、ジョン・アダムス(ダイヤモンド社)・・・1点
    5.『地球間ハイウェイ』ロバート・リード(ハヤカワ文庫 早川書房)・・・1点

    ●番外編

    『EDEN』 第11巻 遠藤 浩輝(アフタヌーンKC 講談社)
    『騎士の息子』上・下 ロビン・ホブ(創元推理文庫 東京創元社)
    『王狼たちの戦旗』上・下 ジョージ・R・R・マーティン(早川書房)

    ●再発見賞

    『ゴルの襲撃者』ジョンノーマン(創元推理文庫 東京創元社)

     今年はなかなか良作が登場していたのであるが、多忙のためか、ほとんど読んでいない! はやく国書刊行会の本を買わなきゃ!
     『ラー』と『凹村戦争』はJコレクション中のお勧めです。
     『復活の地』は新潟地震と重なっていたため、読むのが苦しかったです。
     『フューチャー・イズ・ワイルド』は、意外に面白かった。進化というのはSFの中心的テーマだと思う。そう言う意味では、『マン・アフターマン』の方が好きですが。
     『地球間ハイウェイ』は、平行宇宙の大仕掛けにもかかわらず、善対悪の図式でがっかりした。
     2004年は、《氷と炎の歌》シリーズの影響で歴史ファンタジイばかり読んでました。番外編にこっそり置きました。ご興味があったらどうぞ!
     最後に一言。『万物理論』は駄作だ。


    林 芳隆さん

     棄権するつもりだったけど、推薦したいのが1冊だけあったので、投票します。

    『SF雑誌の歴史』マイク・アシュリー/牧真司訳……1点
     'Unleashing the Atom' by Mike Ashley(東京創元社)

    《キャプテン・フューチャー・シリーズ》エドモンド・ハミルトン/野田昌宏訳……まとめて1点

    <1>『恐怖の宇宙帝王/暗黒星大接近』
     'Captain Future and the Space Emperor''Calling Captain Future'
    <2>『挑戦!嵐の海底都市/脅威!不死密売団』
     'Captain Future's Challenge''The Triumph of Captain Future'
    <3>『太陽系七つの秘宝/謎の宇宙船強奪団』
     'Captain Future and the Seven Space Stones''Star Trail to Glory'
    <4>『透明惑星危機一髪!/時のロスト・ワールド』
     'The Magician of Mars''The Lost World of Time'
       by E Hamilton 1940-1941(創元SF文庫)

    『塵クジラの海』ブルース・スターリング/小川隆訳……0.5点
     'Involution Ocean by Bruce Sterling 1977(ハヤカワファンタジー文庫)
     該当なし……2.5点

     番外

    『マインドスター・ライジング』ピーター・F・ハミルトン……0点
     'Mindstar Rising' by PF Hamilton 1993(創元SF文庫)

     良いんだけど、翻訳が悪い。

    「接触は小さな振動をもたらし、電気流体作動機のぶーんという音が、ふたつのエアロックのチューブを結びつけた。」(上 p136)

     「ぶつかって、振動して、音がして、結合した」――だろう?


    fuchi-komaさん「fuchi-komaのSF系雑記」

    聞くところによると昨年は海外SFが豊作だったようですが、当方《奇想コレクション》と《プラチナ・ファンタジィ》の一部くらいしか読んでいないので、海外は諸兄にお任せして国内に絞って投票させて頂きます。

    (1)『象られた力』飛 浩隆……2点
    (2)『熱帯』佐藤 哲也……2点
    (3)『蒼穹の槍』陰山 琢磨……0.5点
    (4)『好き好き大好き超愛してる』舞城 王太郎……0.25点
    (5)『空想科学少女リカ The dream science novels』岡崎 弘明+柳田 理科雄 ……0.25点

     (1)ほど読んでいてSF魂を熱く感じたものは、ここ暫く皆無でありました。
     (2)に関する書評を書いたのだが何処にいったか不明事象。事象の地平の彼方? 上等ス。
     (3)陰山琢磨の見せる近未来テロリズムはとてつもなく魅力的で、身震いするほど恐ろしい。情報密度の高さも相まって、さながら小説版・士郎正宗。その向きが好きな方に大いにオススメ。
     (4)(5)は個人的にツボ。舞城王太郎は断じてライトノベル作家では無いが、登場する少年/少女の敵が内面に存在し表出されると対セカイに直結する点で「セカイ系」なのだろう、とか色々考えさせられるSF。かつての特撮に原点回帰し空想科学の面白さを体現/再現した(5)は、小・中学生の頃に誰でも考えた様な「運動会の時、もしも足が速くなる薬があったら――」等のド○えもん的発想が素直で楽しく、更にいつもの『空想科学読本』的冷静なツッコミで二重に楽しめる。とりわけ第4話「大迷惑 時をかけさせた少女」は抱腹もので必読だ。

     以下番外(なれど面白かったもの)

    『トリプル・スパイ』草上 仁
    『雲雀』佐藤 亜紀
    『イノセンス』山田 正紀
    『ラス・マンチャス通信』平山 瑞穂
    『アマゾニア』粕谷 知世
    『暗黒の城(ダーク・キャッスル)』有村 とおる

     漫画

    『ムーン・ロスト』星野 之宣
    『凹村戦争』西島 大介
    『PLUTO』浦沢 直樹
    『筒井康隆漫画全集』筒井 康隆

     最後に。
     『万物理論』はまだ自分の中で消化し切れていないので評価はペンディングです。消化不良? でも人が語るのを聴くのはとても面白い。まったく懐の深い小説ですねぇ。
     向平 真さんの言及された『MADLAX』は、なるほど量子論でこんなに面白く読み解けるのですネ〜、と吃驚。どう見ても駄作アニメだと思っていたのに。認識を改めさせられました。『EAT-MAN』みたいに真下さんがノベライズしたら傑作になる予感。『無限のリヴァイアス』みたいに黒田さんがノベライズしたら……怖いけど凄く読みたい!


    maririnさん

    『針』浅暮三文
    『ネフィリム 超吸血幻想譚』小林泰三
    『フェッセンデンの宇宙』エドモンド・ハミルトン

     他にも読んだけど、まぁこの3点で・・・
     よろしくお願いします。(森下註:各1.67点となります)


    向井 淳さん

    『食卓にビールを』小林めぐみ……3点
    『リピート』乾くるみ……1点
    『空の中』有川浩……1点

     あまり他人が入れないであろう方向に投票してみました。
     小林めぐみはすばらしいバカSFです。肩に力の入った傑作も良いものですが、こういう作品にこそSFの妙味があるのかもしれません。……それは言いすぎか。
     『リピート』はグリムウッドの『リプレイ』をもとにした作品なのですが、非常にパズル的思考が味わえるSFミステリ。たいへんに面白いです。
     『空の中』は傑作ジュヴナイルSF。「SFが読みたい!」的には来年の枠なので、ひょっとすると忘れられてしまうのではないかと危惧して投票です。


    向平 真さん

     森下先生、エス猫さん、その他みなさまごぶさたしております。
     そろそろベストSF2004投票の時期ですので、今年は参加しようと慌ててメールさせていただいております。2004年は本当のことを言うと、一本のアニメ作品で決まりなんですが。

     『MADLAX』というのがその作品で、真下耕一という前衛的なスタイルで知られる演出家と、SF群像劇を得意とする脚本家の黒田洋介が組み、深夜枠とはいえおそるべき難解な傑作に仕上がりました。どう解釈するかは、ファンの間で今も議論が続いていますが、私自身としては、ペンローズの量子脳理論で明快に解釈できる、という立場を取り、HPで紹介しています。いずれにせよSFファンには大変興味深い作品なので、レンタルビデオ屋で見かけられたら、ぜひごらんください。

     この作品、量子論的な解釈が登場するのはクライマックスの21話になってからで、前半三分の二は鈴木清順ばりの荒唐無稽なアクションと難解な台詞が続きます。
     真に独創的なのはこの後で、どうやらグレッグ・イーガンの『宇宙消失』にヒントを得たらしい痕跡も見られます。そしてイーガンの理論も飛び越え、コンピュータと脳と量子論を統合したペンローズ的な世界にたどり着いてしまいます。
     量子脳理論の存在に気づいたのは、私もごく最近のことで、まだHPではほとんど書ききれていませんが、量子論や量子コンピュータを基盤にした解釈は何本かアップしています。もしご興味のある方はおいでください。

    「蜂列車を待ちながら」

     真下耕一監督のファンHPです。

     …ただ、どうしても出版でないと困る、ということでしたら、 「国書刊行会の出版活動」というのはどうでしょうか。一人NW派の私としては、国書刊行会に感謝状と表彰状と功労賞を差し上げたい気分です。
     職場にほど近い大型書店では、ちょっと信じがたいほどのペースで、『アジアの岸辺』がバカ売れしています。さすがに最近はちょっと落ち着きましたが、店内三カ所の平積み野山がみるみるうちに減っていき、補充しても補充してもどんどんはけていく、という感じでした。私のようにメールアドレスに「334」を入れ込むぐらいのディッシュ狂はともかく、一般の読書家にとって、ディッシュって、魅力的なんでしょうか?
     ディッシュに比べれば売れ行きはそれほどでもないのですが、個人的にはイアン・ワトソンの『エンベディング』も本当にワクワクする内容でした。「とにかく難解」と散々に脅かされていたのでこわごわ手に取ったのですが、こんなにグイグイ読ませる内容とは思いもしませんでした。確かに最後は少々腰砕けなのですが、八方破れな桁外れのスケール感には圧倒されました。このころのワトソンもいいですねぇ…
     もちろん『ケルベロス第五の首』も『最後にして最初の人間』も、《レムコレクション》も、すばらしいものでした。特に新訳増補版『ソラリス』は「なるほど、だからタルコフスキーの映画に怒ったのか」と納得させる内容を初めて見せてくれたという点でも画期的だと思います。まあ、これはどうみても映像化できる表現とはいえないので、タルコフスキーの演出はやはり当然だとは思いますが…

     というわけで、こういう投票にさせていただきます

    『MADLAX』真下耕一監督・黒田洋介脚本……3点(無効を承知の上で)
       (森下註:出版物ではありませんので、参考作とさせていただきます)
    『アジアの岸辺』トマス・M・ディッシュ……1点
    『エンベディング』イアン・ワトスン……1点
      (以上2点、国書刊行会の2004年の活動を賞賛する意志を代表して)

     今年は、もう少し顔を見せたいと思います。またよろしくお願いします…


    椋野 直樹さん

    1位.『裸者と裸者』打海文三……3点
    3位.『空の中』有川浩……1点
    3位.『ふたりジャネット』テリー・ビッスン……1点

    〈番外〉

    『ライトノベル☆めった斬り!』大森望+三村美衣

    〈メディア部門〉

    『マインド・ゲーム』湯浅政明監督(アニメ映画)

     (森下註:コメントは後日掲載します)


    遅れて届いた 本橋 牛乳さん のお便り

     今年のベストSFの結果を見て、ちょっとショックだったというか投票しようと思っていて、当日近くなって、すっかり忘れてしまったというのがいけないのですが、クリストファー・プリーストの『奇術師』には3点を入れようって思っていて。
     もし、間に合っていたら、これが1位だったんだなあって、そう思いました。
     参考までに、あとは『アジアの岸辺』『すべてのまぼろしはキンタナローの海に消えた』1点ずつなんですけど。

     プリーストは、設定の強引さと話のうまさというのは、ますます円熟しているという感じがして、ほんとうにすごい作品なんじゃないかってそう思っています。
     それにしても、ディッシュやワトスンまで読めた2004年というのは、それなりにサンリオが好きだった人にとっては、いい1年だったのかもしれません。

     来年こそは、間に合うようにします。
     というか、投票できるほど作品を読むかどうかという問題はあるのですが。


    もりげさん

    『最後にして最初の人類』オラフ・ステープルドン……3点
    『万物理論』グレッグ・イーガン……1点
    『復活の地』小川一水……1点

     点数配分はこれで良いのかとか他に挙げる作品はないのかとか、自分でも考えないわけではないのですが、ともかく今年はこんな感じでした。
     ステープルドンは圧巻。もしかしたら彼の作品の中でも一番好きかもしれません。読破するためには気力が要りますが、覚悟を決めてかかったなら終盤は異様な興奮状態で読めました。小説というよりはむしろ交響詩なんかと並べて論ずるべき作品のような気も。
     イーガンは言うことなしの大傑作(だと個人的には思ってます)。彼一流の哲学問答と、論理的な奇想の大仕掛けがちゃんと絡み合って、しかもなんだか人間的な場所に着地しているのが大変好みでありました。
     小川一水は、毎度ながら魂が熱くなるハードSF。群像劇として、今までの作品になかった種類のヴィジョンが加わっていたのがまた良かった。これからも楽しみです。


    森下 一仁

    『最後にして最初の人類』オラフ・ステープルドン
    『SF雑誌の歴史』マイク・アシュリー
    『奇術師』クリストファー・プリースト
    『復活の地〈1〜3〉』小川一水
    『象られた力』飛浩隆
      (各1点)

     早川書房の『SFが読みたい!』の海外・国内で挙げた作品から取り混ぜた感じになってしまいました。
     全体的にはあまりパッとしない年だったように思います。翻訳作品が充実していたといっても、過去の作品がほとんど。新作がガンガン出て、SFの新しいうねりが押し寄せるような勢いが欲しいですね。


    山口 素夫さん

    『ふたりジャネット』テリー・ビッスン……2点
    『奇術師』クリストファー・プリースト……0.5点

    〈番外〉『アインシュタイン交点』サミュエル・R・ディレーニ

     昨年読んだ中で最高だったのはこの作品ですが、奥付を見たら1996年でした。なぜか本棚の本の山の底から発掘して読んだのですがぶっ飛びました。
     あとがきのメイキングを読んだら、訳者の伊藤さんも訳すのに二十年以上かかっているそうなので、読者の方も読むのに時間がかかっても無理ない(?)かも。
     それにしても、若い頃話題になっていた幻の名作をこの年になって読むことが出来るとは感無量です。


    ベストSF2004 投票募集のお知らせ


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    じっくり選んで投票してください。

     2004年1月1日から12月31日までに国内で出版されたSF(奥付の日付で判断してください)で、あなたがおもしろかったと思うものをEメールで投票してください。要領は次のとおりです。