ベストSF2003

★2月22日確定 :投票数 22★



ベスト4


海 外 作 品

1 『しあわせの理由』グレッグ・イーガン (9点)
2 『あなたの人生の物語』テッド・チャン (8.5点)
3 『真空ダイヤグラム』スティーヴン・バクスター (3点)
〃 『夜更けのエントロピー』ダン・シモンズ (〃点)

国 内 作 品

1 『第六大陸〈上・下〉』小川一水      (13.2点)
2 『水晶内制度』笙野頼子 (7点)
3 『神は沈黙せず』山本弘 (5.8点)
4 『アマチャ・ズルチャ』深堀骨 (5点)


得点の詳細

  • 13.2点
    (国内)
    『第六大陸〈上・下〉』小川一水
  • 9点
    (海外)
    『しあわせの理由』グレッグ・イーガン
  • 8.5点
    (海外)
    『あなたの人生の物語』テッド・チャン
  • 7点
    (国内)
    『水晶内制度』笙野頼子
  • 5.8点
    (国内)
    『神は沈黙せず』山本弘
  • 5点
    (国内)
    『アマチャ・ズルチャ』深堀骨
  • 4点
    (国内)
    『涼宮ハルヒの憂鬱』谷川流
    『マルドゥック・スクランブル』冲方丁
  • 3点
    (海外)
    『真空ダイヤグラム』スティーヴン・バクスター
    (《ジーリー・クロニクル》への投票も含めました)
    『夜更けのエントロピー』ダン・シモンズ

    (国内)
    『まろうどエマノン』梶尾真治
    『導きの星 4』小川一水
    『楽園の知恵――あるいはヒステリーの歴史』牧野修
  • 2点
    (海外)
    『遺伝子の使命』ロイス・マクマスター・ビジョルド
    『海を失った男』シオドア・スタージョン
    『不思議のひと触れ』シオドア・スタージョン

    (国内)
    『異国伝』佐藤哲也
    『記憶汚染』林譲治
    『忘却の船に流れは光』田中啓文
  • 1点
    (海外)
    『イエスのビデオ』アンドレアス・エシュバッハ
    『鈎爪プレイバック』エリック・ガルシア
    『カルカッタ染色体』アミタヴ・ゴーシュ
    『グリフィンの年』ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
    『J・G・バラードの千年王国ユーザーズガイド』J・G・バラード
    『星海の楽園』デイヴィッド・ブリン
    『地球に落ちて来た男』ウォルター・テヴィス
    『名医ポポタムの話――ショヴォー氏とルノー君のお話集〈2〉』レオポルド・ショヴォー(復刊なので参考作とさせていただきます)
    『ヨットクラブ』デイヴィッド・イーリイ

    (国内)
    『アリス Alice in the right hemisphere』中井拓志
    『いちご実験室』山名沢湖
    『似非エルサレム記』浅暮三文
    『ゲートキーパー(下)』草上仁
    『笑撃☆ポトラッチ大戦』かんべむさし
    『まぼろし綺譚』今日泊亜蘭
    『目を擦る女』小林泰三
    『約束の地』平谷美樹
    『ラピスラズリ』山尾悠子
  • 0.5点
    (海外)
    『蟻』ベルナール・ウェルベル(復刊なので参考作とさせていただきます)
    『ゴブリン娘と魔法の杖』ピアズ・アンソニイ

    (国内)
    『AZUCHI――剣の右京――』鈴木あきら
    『ZOO』乙一
  • 0.2点
    (国内)
    『蛍火の杜へ』緑川ゆき
  • 0.1点
    (国内)
    『撲殺天使ドクロちゃん』おかゆまさき

  • 各投票者の推薦作

    (50音順)

    天川 和久さん

    『不思議のひと触れ』シオドア・スタージョン……1点
    『海を失った男』シオドア・スタージョン……1点
    『J・G・バラードの千年王国ユーザーズガイド』J・G・バラード……1点
    『しあわせの理由』グレッグ・イーガン……1点

     スタージョンは決して読み易いとはいえない作家ですが、相性の良い作品では今でも衝撃を与えられます。
     バラードはエッセイでもバラード。「コンクリート・アイランド」の刊行は本当に嬉しかった。
     自分にはイーガンの方がチャンより面白いと感じました。

    今中 一時 さん

    テッド・チャン『あなたの人生の物語』…… 2.5点

     表題作にはぞくっとさせられました。小説でぞくっとさせられるのは本当にひさしぶりでした。しかし全体としては肌のあわない部分もあるので、点数としてはこれくらいで。

    シオドア・スタージョン『海を失った男』……1点

     「ビアンカの手」を初読できたことも含め、本当はこちらのほうが肌があったのですが、これを2003年のベストに押すのはうしろ向きな気がするので点数はこれだけで。

    大熊 宏俊さん

    『ゲートキーパー(下)』草上仁(「スターハンドラー」3部作完結に対して)……1点
    『アマチャ・ズルチャ』深堀骨……1点
    『記憶汚染』林譲治……1点
    『約束の地』平谷美樹……1点
    『神は沈黙せず』山本弘……1点

    *いま牧野修『楽園の知恵』読了。うーむこれも入れたい。とはいえ上記作品どれも落とすに忍びなく、泣く泣く断念。ああ残念。

    大澤 和彦さん

     「ベストを選ぶ」という程読んではいないのですが、去年印象に残った作品に点数を配分してみました。

    『しあわせの理由』グレッグ・イーガン……2点
    『あなたの人生の物語』テッド・チャン……1点
    『第六大陸』小川一水……1点
    『マルドゥック・スクランブル』冲方丁……1点

     イーガンとチャンを比べると短編集全体としてイーガンの方が上かなと思いましたので1点上乗せしてみました。

    こばげん さん

     今年も大して読んでいないのですが厚かましくも投票させて頂きます。

    『第六大陸〈上・下〉』小川一水……3点
    『導きの星 4』小川一水……1点
    『不思議のひと触れ』シオドア・スタージョン……1点

     第六大陸は夢を。ただひたすら描いていた夢の一部を形にしてくれました。
     導きの星は作者がここまで来たかと思わせるだけの力作になっていたと思います。
     不思議のひと触れは、ただ、私にも「ひと触れを」とだけいいたくなる古典的な魅力に満ちあふれる作品集でした。


    古原 伸介さん

    (各1点)

    『しあわせの理由』グレッグ・イーガン
    『神は沈黙せず』山本弘
    『記憶汚染』林譲治
    『イエスのビデオ』アンドレアス・エシュバッハ
    『あなたの人生の物語』テッド・チャン

     私は海外長編SFを中心に読んでいるのですが、その点昨年は不作でした。逆に国産SFでは長編が多数出ているようです。未読のものも多いので国産も積極的に読みたいと思った年になりました。

    サンゴ さん

    『水晶内制度』笙野頼子


    sugitaro さん

    『真空ダイヤグラム』スティーヴン・バクスター……1点
    『しあわせの理由』グレッグ・イーガン……1点
    『あなたの人生の物語』テッド・チャン……1点
    『夜更けのエントロピー』ダン・シモンズ……1点
    『蟻』ベルナール・ウェルベル……0.5点

     短編集が多いですね。各作品の魅力は言い尽くされてるように思いますが、なんかみんな「名手」という感じです。
     その中で、暴走してるなーと感じるのはバクスターかな。『プランク・ゼロ』と年が別れてしまいましたけど、気にしない。
     『蟻』は文庫化ですけど、とりあえず初めて読んだもんで。続編は買いっ放しなんですが、とにかく読んでてすごい楽しいです。もっといろいろ紹介してほしいです。

    タカアキラ さん

     今年は横浜市から投票いたします。

    『涼宮ハルヒの憂鬱』 谷川流(角川スニーカー文庫)……4点

     さすがはスニーカー大賞受賞! と30際付近や以上の読者(やおそらく選考者)に絶賛される一報で、20歳前後付近の読者の一部には、どこが気に入らなかったのかが良くわからないほどに反感を持たれたらしくて、ネットの感想を眺めるのも楽しい作品でありました。ぼくは大歓迎!
     でも続編は20歳前後付近で喜んで迎えた人向けに商売しすぎと言う感じがしますけど。これは良かった。

    『ZOO』 乙一(集英社)……0.5点

     乙一は全く天才です!
     ホラーとミステリよりの作家だと思われているような気がしますが、実際はただのスタンド小説家なのでSFファンも安心してガンガン読むべきです。こんなにバランス感覚のいいおたく青年は珍しい! どこで何を書いても、乙一のまま飄々と面白い小説を書いて行くのだと思います。

    『蛍火の杜へ』 緑川ゆき(花とゆめコミックス)……0.2点

     短編漫画集ですね。ちょっと切ない話が良かったです。

    『しあわせの理由』 グレッグ・イーガン(ハヤカワ文庫SF)……0.2点

     イーガンとチャンの短編集が話題になりましたが、こちらの方がより好みなので(うまく説明できないのですが)片方だけ投票したいと思います。

    『撲殺天使ドクロちゃん』 おかゆまさき(電撃文庫)……0.1点

     上であげた谷川流と同時にでて、話題を独占していった電撃文庫の異色作です。これは2003年にでた事を記録にとどめておかないといけません。
     ぼくはすごく好きだけど、苦手な人も多いかも。

     以上よろしくお願いいたします。
     去年は国内も海外も短編集の当たり年でしたね。もう二月も後半ですが、今年はどんな年になるでしょう。

    とりこ さん

     駆け込み投票で申し訳ございません。今回は面白い本が多く、選ぶのにずいぶん迷いました。

    『水晶内制度』笙野頼子
    『いちご実験室』山名沢湖
    『楽園の知恵――あるいはヒステリーの歴史』牧野修
    『アマチャ・ズルチャ』深堀骨
    『しあわせの理由』グレッグ・イーガン

     奇しくも、『水晶内制度』以外は、短篇形式のものばかりになってしまいました。配点は、各1点でお願いします。

     その他、再刊のため外しましたが、レオノーラ・キャリントン『耳ラッパ』は、センス・オブ・ワンダーに満ちた痛快な作品でした。昨年大プッシュしたラファティ『地球礁』がお好きな向きには是非是非オススメしたいです。
     『アマチャ・ズルチャ』とどちらにするか最後まで迷いましたが、テッド・チャン『あなたの人生の物語』もたいへん素晴らしかったです。
     また、特に1巻がグイグイ読ませた小川一水『第六大陸』、続刊が待ちどおしい河出書房の奇想コレクションシリーズ(ダン・シモンズ『夜更けのエントロピー』、S・スタージョン『不思議のひと触れ』)など、読み応えある本がたくさん出たうれしい1年でした。

    中村 達彦 さん

    『神は沈黙せず』 山本弘 角川書店……1.8点

     近未来、世界を襲った超常現象群に巻き込まれた女性ライター優歌の手記の形をとって、話は語られています。「神とは?」「数々の超常現象の正体とは?」と言う謎について、膨大な資料を元にそれなりに納得が行く答えを出しています。力作です。
     SFとはいえ、差別問題やネット犯罪、出版界まで問いかけています。若干、山本さんの趣味に走っていますが(笑)。本作を読みながら、何度も考えさせられました。
     あちこちに泣かせたり、怒りを感じる複数の人間ドラマが用意され、ただの謎解き話に終わっていません。優歌の親友葉月は、一件クールながら熱い、主人公を喰ってしまうキャラクターです。他の流行作家や老超常現象研究家のドラマもうまいです。
     最後に優歌がたどり着いた結論、それは簡単なようで難しいことですが、なぜか安堵します。
    (点数 1.8 点のうち 0.1 点は中村が参加した「帰ってきたウルトラマン」同人誌で、山本さんの別文章を引用させてもらった御礼です。)

    『第六大陸』 小川一水 ハヤカワ文庫……1.7点

     月に結婚式場を建設しようという試み、SF版「プロジェクトX」です。昨年のシャトル事故、相次ぐ日本ロケットの失敗と宇宙開発の暗いニュース続く中でのエールに思えます。なぜアポロの月着陸から36年が経つのに月に基地が建設されないのか? その理由も語られていますが、改めて宇宙開発の魅力と難しさを感じました。
     リーダーが財物令嬢という設定は最初戸惑いましたが、彼女の想いが語られていくうちに応援してしまいます。宇宙は動作一つの描写を書くのも、難しい本当に乗り出すにはまだまだ困難が伴います。

    『似非エルサレム記』 浅暮三文 集英社……1.0点

     自我を持ち活動を開始した古都エルサレムの暴走と最後を描いています。パニック小説、モンスター小説の臭いも強いです。エルサレムより、犬のブラッキーがこの物語の主人公です。翻弄されながら、駆け、泳ぎ、吠える犬の姿からは必死に生きる動が伝わるのです。
     歴史の重み、長い年月を経て、幾層にも連なる業が、文章にかいま見えます。
     浅暮さんには『石の中の蜘蛛』の続編を書いてもらいたいです。

    『AZUCHI――剣の右京――』 鈴木あきら 朝日ソノラマ……0.5点

     織田信長が天下を統一した異世界を舞台にした冒険活劇ものです。超能力やパラレルワールドが小道具として使われています。信長の子として生まれた少年の成長を描いていますが、あちこちに戦国ファンをにやりとさせる設定が隠されています。戦国時代の非情の中でもみ潰されたものの悲しみ、業も伝わってきます。
     鈴木さんには、持ち味の戦争や兵器感を活かした新作を書いてもらいたいです。

     他には特別推薦で、

    『ラーゼフォン完全攻略』 氷川竜介 (徳間書店)

     TV、映画で公開されたSFアニメ作品の紹介解説ですが、SF設定の謎解きや、キャラクタードラマについて、わかりやすくかつ鋭く語られています。ムック本とは何なのか考えさせられ、推薦します。必要な資料を使いつつ、文章による解説に惹き付けられます。画像カットの使い方や、文章編集の手法も上手です。表紙にはちょっとしたお遊びが隠されています。

    『22世紀から回顧する21世紀全史』 ジェントリ・リー (角川書店)

     テロ戦争で幕開かれた21世紀、それは苦悩の果てに見えてきた夜明けでもあるのです。
     人類がいかにして危機を切り開き、新たな生活圏を拡大していったかを、出来事をただ綴ったのではなく、人々のドラマも語られています。

    『フッケバイン 凶鳥』 佐藤大輔 (角川書店)

     3年前に発表された作品の文庫化です。第2次世界大戦末期のドイツを舞台にした。戦争もの+ゾンビものをUFOで味付けしています。続編で、日本で起きた事件の話が読みたいです。もちろん他に進行中の作品続編も読みたいですが。

    nyam さん

    1.『第六大陸〈上・下〉』小川一水(ハヤカワ文庫 早川書房)……2点
    2.『神は沈黙せず』山本弘(角川書店)……1点
    3.『遺伝子の使命』L.M.ビジョルド(創元SF文庫 東京創元社)……1点
    4.『導きの星 4』小川一水(ハルキ文庫 角川春樹事務所)……1点

    ●番外編
      『昏迷の都エウルコ(アグラファ 6)』三浦真奈美(中公Cノベルズ 中央公論新社)
      『あなたの人生の物語』テッド・チャン(ハヤカワ文庫 早川書房)
      『しあわせの理由』グレッグ・イーガン(ハヤカワ文庫 早川書房)
      『日本語に主語はいらない―百年の誤謬を正す』金谷武洋(選書メチエ 講談社)

    ●再発見賞
      『航路〈上・下〉』コニー・ウィリス(ソニーマガジンズ)

     2003年度の感想ですが、ひとことでいえば、ハヤカワJコレクションに騙されつづけた一年でした。 面白くないことはないんですが……(高い単行本を買わずに、文庫を買えば良かった)。
     ま、それはともかく、小川一水さんの2作品はとてもよかった。それぞれ古典的とも言えるテーマにあえて挑んだ心意気に3点!(合計ですが……)。
     『神は沈黙せず』も、トンデモ本研究の成果を生かしていますね。「山本弘は沈黙せず」かな?
     番外編にはファンタジーと短編集、あと日本語関係の本を入れてみました。
     再発見賞の『航路』については一言だけ。とにかく読め!

     なお、『七王国の玉座』は下巻が未読につき保留。

    ねこち さん

    『水晶内制度』笙野頼子
     「神話の捏造」という思考実験が大変スリリングでした。作者の持ち味である狂ったような書き方が、狂った現実を裏から照射していき、その果てに現れる、矛盾をそのままひきうける「文章を書く人として私」が感動的です。

    『あなたの人生の物語』テッド・チャン
     乱暴にいうと、小説には structure 重視、texture 重視の二種類があって、この作者のは前者のようです。私は、今まで texture を楽しむような読書に慣れていたので、「地獄とは神の不在なり」をSFM誌上で読んだときには良さがわかりませんでした。短編集になって、ああ、すごいと改めて感心しました。綿密な強度計算を基に建てられた独創的な美しい建物の構造自体を愛でるべきであって、「装飾があんまりないじゃん」というのは的外れなのですね。

    『マルドゥック・スクランブル』冲方丁
     実は、くせのある文章とか、過去のトラウマから自分の殻に閉じこもった主人公という便利な設定とか、あまり好みではないタイプの作品なのですが、一種異様な熱気にねじ伏せられました。

    『ラピスラズリ』山尾悠子
     冬の夜、小さくて高級なお菓子とおいしいお茶を用意して、すわり心地の良い椅子に座り、電話は鳴らないように、ついでにトイレにも行っておいて、という万全の体勢を作ってからゆっくりと贅沢な時間をこの本と過ごしたいですね。

    『楽園の知恵――あるいはヒステリーの歴史』牧野修
     牧野作品で私の一番好きな路線のもの(濃いやつ)を全部集めてくれました。苦しくて可笑しい「踊るバビロン」、「バロックあるいはシアワセの国」の屁理屈の眩暈感、たまらないです。初出時にはちょっとベタすぎて気恥ずかしかった「逃げる物語の話」も、最後から二番目の位置に、ぴったりと収まっています。ところで、社会派にはほど遠いこの作者に「ロマンス法について」など書かせてしまう今の世の中はとても息苦しいです。

    林 芳隆さん

     去年は文庫の翻訳物長編は不作だった気がします。

    『グリフィンの年』ダイアナ・ウィン・ジョーンズ(浅羽莢子訳、創元推理文庫)……1点
    "Year of the Griffin" Diana Wynne Jones

    『ダークホルムの闇の君』の2作目。前作と違い、ずいぶん明かるい話になりました。学園ものです。

    『星海の楽園』デイヴィッド・ブリン(酒井昭伸訳、ハヤカワ文庫SF)……1点
    "Heaven's Reach" David Brin

     3部作の完結編。1作目のゆったりしたペースで延々と続いてくれても良いような気がしますが、ばたばたと終わってしまいました。

    『鈎爪プレイバック』エリック・ガルシア(酒井昭伸訳、ソニーマガジンズ)……1点
    "Casual Rex" Eric Garcia

     恐竜ハードボイルドの2作目。1作目の『さらば、愛しき鈎爪』の方が好きですが、出版された年に気が付かなかったので、投票しそこないました。
     とっても無理のある設定を力技で押さえこみつつ、ちゃんと話になっていて、すごいです。

    『遺伝子の使命』ロイス・マクマスター・ビジョルド(小木曽絢子訳、創元SF文庫)……0.5点
    "Ethan of Athos" LM Bujold

     マイルズ・シリーズですが、マイルズが出て来ない外伝で、話が地味。

    『ゴブリン娘と魔法の杖』ピアズ・アンソニイ(山田順子訳、ハヤカワ文庫FT)……0.5点
    "The Color of Her Panties" Piers Anthony

     ザンスもこの辺から後は、特にどうという所のない手慣れた話が続くだけなので、読みやすくて好きです。
    アイダ(の月)は、これから(舞台として)大活躍します。

     (残りの1点)棄権

     昨年読んだ本のベストは、やはりプラチェットのディスクワールド・ シリーズでした。

    (番外)"Monstrous Regiment" Terry Pratchett / Doubleday (2003)
    戦争もの(女性)。Vimesや新聞屋さんも脇役で出ています。

    (番外)"Night Watch" Terry Pratchett / Doubleday (2002)
    Vimesが過去の世界で大活躍。

    ヒラマド さん

     タカアキラさんに強く勧められたので、初めて投票しますが、昨年は読書量が少なかった上に、新刊はほとんど読んでおらず、非常に申し訳ないないようになってしまいました。傾向も似ていますし……。

    『アマチャ・ズルチャ』深堀骨……2点

     「隠密行動」が最高。ツッコミがないまま、ストーリーはひたすら爆走していくのに、なぜかラストでは落ち着いてしまうギャップが素敵でした。

    『異国伝』佐藤哲也……2点

     あいうえお順に43篇も短編を書いてしまう労力もさることながら、(中盤やや中だるみするものの)一篇一篇のパンチもすさまじく、ただもう圧倒されました。

    『名医ポポタムの話――ショヴォー氏とルノー君のお話集〈2〉』レオポルド・ショヴォー(福音館文庫)……1点

     #復刊物なので、趣旨に合わなければノーカンにしてください。
     SFなのかどうなのかと言われると辛いのですが、上記2冊と同じくナンセンスほら話の傑作です。特に「ヘビの子の話」。鼻の穴に指を突っ込んだ蛇の息子と、それをたしなめて平手打ちにする母蛇との50ページに渡るおっかけっこがセンスオブワンダーでした(本当)。

    ひらやまひろゆき さん

    時間がないので、取急ぎ作品と配点のみ。よろしくお願いいたします。

    小川一水『第六大陸』(全2巻);ハヤカワJA……2点
    冲方丁『マルドゥク・スクランブル』(全3巻);ハヤカワJA……2点
    バクスター『ジーリー・クロニクル』(全2巻);ハヤカワSF……0.5点
    ビジョルド『遺伝子の使命』;創元SF文庫……0.5点

     (次点……配点0)
    チャン『あなたの人生の物語』;ハヤカワSF
    エシュバッハ『イエスのビデオ』(全2巻);ハヤカワNF
    ライバー『妻という名の魔女たち』;創元推理文庫
    イーガン『しあわせの理由』;ハヤカワSF
    秋山瑞人『イリヤの空、UFOの夏』(全4巻);電撃文庫
    小川一水『導きの星』(全4巻);ヌーベルSFシリーズ
    小川一水『強救戦艦メデューシン』(全2巻);ソノラマ文庫
    上田早夕里『火星ダーク・バラード』;角川春樹事務所

    V林田 さん

    『まぼろし綺譚』今日泊亜蘭
    『第六大陸』小川一水
    『しあわせの理由』グレッグ・イーガン
    『目を擦る女』小林泰三
    『アマチャ・ズルチャ』深堀骨

     『まぼろし綺譚』『アマチャ・ズルチャ』は並ぶもののない快作。
     『第六大陸』は真っ直ぐさが気持ちよかったです。
     『しあわせの理由』は特に表題作に惹かれました。
     『目を擦る女』は小林さんのイヤな味がよく出てるので。

     また、出版物ではないので番外ですが、実のところ去年一番楽しんだSFはWebサイト『ほわほわ』のマンガ(http://what.kir.jp/what/)だったりします。下ネタとパロディが多いんで苦手な人は苦手だと思いますが。

    maririn さん

    『まろうどエマノン』梶尾真治……3点
    『夜更けのエントロピー』ダン・シモンズ……2点

    向井 淳 さん

    『神は沈黙せず』山本弘
    『あなたの人生の物語』テッド・チャン
    『笑撃☆ポトラッチ大戦』かんべむさし
    『忘却の船に流れは光』田中啓文
    『楽園の知恵――あるいはヒステリーの歴史』牧野修

     山本弘は本当に力作ですね。力みすぎという気もするのがちょっと残念ですが。
     チャンは今のところ全集ですが外れなしというのはすごい。
     かんべむさしのは青い鳥文庫fによる復刊ですが、初めて読んで感銘を受けたので。どの程度改稿しているかわかりませんが、良質のジュブナイルです。
     『忘却の船に流れは光』には田中啓文のすべてがあると思います。
     牧野修『楽園の知恵』は「踊るバビロン」をはじめとして傑作が多い短篇集ですが、末尾に付された「付記・ロマンス法について」は、SF/ファンタジー/ホラー/ミステリ読者にとって必読だと思います。

    もりげ さん

    『第六大陸』小川一水……2.5点。
    『真空ダイアグラム』スティーヴン・バクスター……1.5点。
    『忘却の船に流れは光』田中啓文……1点。

     私にとっては小川一水イヤーでございました。『導きの星』ももちろん大推薦の作品ですが、今回は第六大陸を。
     海外物は短編集が豊作で、テッド・チャン、奇想コレクションのダン・シモンズにスタージョン、どれもベスト級です(ですが、きっと私が入れなくてもたくさん点が入るでしょうし、入れないでみました)、それにグレッグ・イーガン。イーガン『しあわせの理由』は表題作が圧倒的な名作ですが、全体的に前作より弱かったかな、と。バクスターに敬意を表して。

     今年のJコレクションは出るはずだったものが出なかったり、全般的に破壊力に欠けた気がしますが、田中啓文の熱気あふれる猥雑の極みは今でも臭いが残っている感じです。あとは深堀骨『アマチャ・ズルチャ』、声に出して読みたい日本語。

     ほか、特記しておきたいのが中井拓志『アリス―Alice in the right hemisphere―』、あまり周囲で読んだという声をきかないのですが、こんな作品を書ける作家はあまりいないと思いました。

    森下 一仁

    『カルカッタ染色体』アミタヴ・ゴーシュ(DHC)
    『ヨットクラブ』デイヴィッド・イーリイ(晶文社)
    『導きの星』小川一水(ハルキ文庫)
    『地球に落ちて来た男』ウォルター・テヴィス(扶桑社)
    『アリス Alice in the right hemisphere』中井拓志(角川ホラー文庫)

     各1点。
     ベストというよりは、この作品もリストに並んでいて欲しいと思うものを選んでみました。本当はバクスターもチャンもイーガンもシモンズも田中啓文も牧野修も入れたかったんですけどね。もちろん、スタージョンも。

    山口 素夫 さん

     今日が〆切だったのですね。
     あわてて書いております。

    1.『しあわせの理由』グレッグ・イーガン……2点
    2.『あなたの人生の物語』テッド・チャン……1点

     昨年はあまりSFを読まなかったようです。

    番外 『レ・コスミコミケ』イタロ・カルヴィーノ

     すごく昔の本ですが、カルヴィーノとは相性が悪かったのか、いままで気になりながらもほとんど読んでなかったのです。昨年、『見えない都市』を読んでビックリして、本棚から発掘して読んだところ、すごい話なのでまたまた仰天! でした。
     勢いで、『マルコヴァルドさんの四季』まで読んでしまいました。「マルコヴァルドさん」は、SF研の例会でその名を聞いたような気がします。まったくの未熟者だった私は、森下さんをはじめ、岡田さん、野口さんなど先輩達の話をいつも感心しながら聞いているだけでした。
     野口さんの訃報を聞いたときも、ちょうど「マルコヴァルドさん」を読んでいるときだったので、シンクロニシティのようでとてもびっくりしました。そういえば、「いま中退してきたよ」と話していらっしゃったのを思い出しました。メガネの奥の優しい目が印象的でした。もうお会いできないのがとても残念です。
     いろいろ思い出してきましたが、このくらいにします。
    心からご冥福をお祈りしております。



    ベストSF2003 投票募集のお知らせ


     今年もやりますベストSFアンケート。
    じっくり選んで投票してください。

     2003年1月1日から12月31日までに国内で出版されたSF(奥付の日付で判断してください)で、あなたがおもしろかったと思うものをEメールで投票してください。要領は次のとおりです。