ベストSF2002

★2月23日確定 :投票数28★


ベスト 5

  ――――――――――  
海 外 作 品
  ――――――――――  
1 『最果ての銀河船団』 ヴァーナー・ヴィンジ(13.5点)
2 『地球礁』 R・A・ラファティ(8.3点)
3 『イリーガル・エイリアン』 ロバート・J・ソウヤー(6.5点)
〃 『クリプトノミコン』 ニール・スティーヴンスン(〃点)
5 『錬金術師の魔砲』 J・グレゴリイ・キイズ(4.5点)
  ――――――――――  
国 内 作 品
  ――――――――――  
1 『太陽の簒奪者』 野尻抱介(11点)
2 『グラン・ヴァカンス』飛浩隆(10点)
3 『ノルンの永い夢』 平谷美樹(6.5点)
4 『あしたのロボット』 瀬名秀明(5.5点)
5 『群青神殿』 小川一水(4点)

1位に輝いた方のお言葉


中原 尚哉 様(海外部門1位『最果ての銀河船団』訳者)

 読者のみなさまから得点を入れていただき、その結果が一位とのことで、たいへん光栄に思っております。
 翻訳作品が賞をいただくというとき、翻訳者は偉そうな顔をして許されるのか、あくまで原著者の代理人といてふるまうべきなのか、いつも微妙な立場にあります。とはいえ翻訳の場合でも、訳者はその日本語の一文一文に産みの苦しみを味わっていますから、作品が評価を得るのは、「我が事のように」ではなく、「我が事として」嬉しいというのが正直な気持ちです。
 じつはヴィンジの原文は、けっこう癖の強い難物です。語り口を生かしながら、しかし日本のスペオペの読者に対して訴求力のある文章にするのは、かなり難渋する作業でした。時間的にも空間的にもスケールが大きい話なので、各部の整合性にも神経を使います。くわえて、ラストにいたっても明かされることのない世界の成り立ちの謎のために、著者があちこちに配した手がかりを、見落とさずに(見落としているかもしれない!)拾いあげて、日本の読者の前に提示しなくてはならない。精神的にも体力的にもぎりぎりまで絞られる仕事でした。
 著者の描いたものがそれなりに読者に届けられ、楽しんでいただけたのだとしたら、翻訳者としてこれにまさる喜びはありません。森下さんとこのサイトに集まるみなさまに御礼申し上げます。ありがとうございました。


得点の詳細




各投票者の推薦作

(50音順)

石橋さん

『イリーガル・エイリアン』 ロバート・J・ソウヤー……1点

 法廷SFってなんですかと気になったので読みました。年間ベストを選べるほど新刊を読んではいないのですが、思わずベストSFに投票しようと思い立ちました。他の作品を押しのけてこれ1冊を推すというわけではないので点数は1点にしておきます。
 「もう死によったがな。どうすんねん。」「ははあそうきましたか。」「え゛、そうかいな。」「あ、あ。」「ハラハラ」「じ〜ん。」「おお〜!」という感じでした。語り口が巧いです。最後に心地よいカタルシスを味わわせてくれますし、無敵のストーリーテラーと言えましょう。


今中 一時さん

 二年ぶりのご無沙汰となります。今中@D.B.C.です。一昨年はあまりに新刊を読まなかったので昨年の投票は控えさせていただきました。実は昨年も状況はあまり変わらないのですが、私的オールタイムベストクラスの作品に出会ったので投票せずにはいられなくなりました。

『グラン・ヴァカンス』 飛浩隆……5点
 なんといっても描写がすばらしい! シリーズものとのことで物語的には端緒についたばかりですが、仮に今後失速したとしてもほのめかされる謎めいた全体の構図と鮮やかなイメージ喚起力で本作はずっと心に残ると思います。


インノミナートさん

・『グラン・ヴァカンス』 飛浩隆 ……2点

 長編での実力が未知数な作家さんをハヤカワJコレクションに入れて大丈夫なのか、という心配は杞憂に終わりましたが、まさに空が落ちてきて頭をガツンとやられたような衝撃が 残りました。

・『最果ての銀河船団』 ヴァーナー・ヴィンジ ……2点

 新訳のレンズマンには「うーむ、ちょっとなあ」と退いてしまったのですが、この作品を読んで『スペースオペラ』にはまだ脈がある、と再認識しました。

・『デイヴィー 荒野の旅』 エドガー・パングボーン ……1点

 本当はこんな古い作品には点数をあげたくないのですが、 見事な作品なので仕方なく。


大熊健朗さん

『ねじの回転』 恩田陸……2点
『最果ての銀河船団(上・下)』 ヴァーナー・ヴィンジ……1.5点
『錬金術師の魔砲(上・下)』J.グレゴリイ キイズ……1.5点

 なんの気なしに2002年に刊行されたなかから気に入ったSFをピックアップしてみたのが、どれも歴史にかかわる物語であることに、たった今気付いた。うーむ、SFの意志が、人類の無意識が、歴史の修正を求めているのだろうか。


大熊宏俊さん

 例年は投票に参加する資格もない私ですが、去年はめずらしくSFの新刊本をたくさん読みました。Jコレクションのおかげです。今回は初見参ではありますが、胸を張って(^^;投票させていただきます。

1)『ノルンの永い夢』 平谷美樹 (2.5点)

 後半、複数の並行世界が、ぐじゃらぐじゃりと互いに浸食し、混ざり合っていく描写が圧巻。妄想度(?)で他の追随を許さない和製ワイドスクリーンバロック。これぞSF読書の悦楽!

2)『あしたのロボット』 瀬名秀明 (1.5点)

 現・近未来社会を、単に設定として利用するのではなく、そのような未来社会そのものを、ロボットと人間の関わり合いというかたちで真摯に追求したところに好感。こういう作品は眉村卓以来ではないでしょうか。

3)『ウロボロスの波動』 林譲治 (1点)

 人間が宇宙に進出するということは、「社会」が宇宙に進出するということに等しい。本書はかかる視点を、まことにオーソドックスな工学的ハードSFに導入しようとしている。その意欲を買う。

 2)と3)は個別作品的には不満もあるのですが、それぞれめざす方向への深化を期待して挙げました。


加藤 逸人 さん

 ヒューガートとマーティンがまだ出ていないようですので,これは許せないということで投票させていただきます(笑)

『鳥姫伝』 バリー・ヒューガート
『最果ての銀河船団』 ヴァーナー・ヴィンジ
『クリプトノミコン』 ニール・スティーヴンスン
『七王国の玉座』 ジョージ・R・R・マーティン
『琥珀の望遠鏡』 フィリップ・プルマン

 各1点でお願いします.

 『鳥姫伝』については長年の愛読書でしたので,翻訳されたというだけで喜びもひとしお.5点全部とも思いましたが,顰蹙を買いそうですので,限りなく5点に近い1点とします^^)

 『最果ての銀河船団』は,様々なアイデアを貪欲に飲み込んだ現在のスペース・オペラの頂点として,お手本になるような完成度の高い作品だと思います.

 『クリプトノミコン』は,伝奇ものであり冒険ものでありネットワークものでありながら,おふざけもたっぷり楽しめるというコスト・パフォーマンスの高さが見事です.

 『七王国の玉座』は,トラディショナルなハイ・ファンタジイの現代における最高峰として,ハイ・ファンタジイにおける革命家チャイナ・ミエヴィルと双璧をなすものだと思います.

 『琥珀の望遠鏡』は,児童書の枠を破るものとして期待していたのに,結局児童書の枠内に着地してしまったということで,非常に不満が残るのですが,ナルニアと指輪に反旗を翻したと いうことだけでも一票に値します.おそらく2002年で一番重要な作品として歴史に残るのではないでしょうか.


狩田 英輝 さん

『錬金術師の魔砲』 J・グレゴリイ・キイズ(金子司訳、ハヤカワ文庫)……2点

 少年の成長と冒険や苦難の時代を生きるヒロインの物語など活劇としても十分でありながらSとFの両立がされており、大変に素晴らしいと思います。見事にハートに直撃を受けました。
 随所にちりばめられた史実のかかわりも面白かったですが、逆に言えばそこが人をえらんででしまう面もあるでしょうか?

『宇宙賃貸サルガッ荘1〜2』 TAGRO(エニックス・Gファンタジーコミックス)――コミックス……2点

 遥かな未来、人類は銀河に拡大して謎のトカゲ型宇宙人と戦争している世界。そのどこかにある、脱出不能とされている魔のサルガッソー宙域の原因である魔女のメウが、漂流物を集めてサルッガソー内に作ったアパート「沙流我荘」を舞台としたコメディ。
 重厚では無いものの、SとFの両立がしっかりしている良作です。マイナーなのが惜しいですね。

『こんびに さんご軒にようこそ』 あらいりゅうじ (エニックス・EXノベルズ) ……1点

 核戦争終結後、文明が緩やかな衰退に向かっていく中、ずっと地面を掘りつづけていたアンドロイドのアイレスは向ヶ丘村の少年と出会ったことをきっかけに「こんびに」を経営する事になって……という物語です。「サルガッ荘」をきっかけに発見しました。
 設定とその活用、つまりSの部分がやや弱いのですが、叙情性豊かで、胸が締め付けられるような懐かしさに満ちています。

 昨年の反省に基き、今年はなるべく翻訳SFを読むようにしたのですが……読んだのが例えて言うならば「牛丼特盛り卵味噌汁サラダ付き」ばかりで(T_T)
 あと、非常に斬新な創作料理もありましたが(苦笑)
 なお、SF映画では「MIBII」が傑作でした。


河本 さん

『アイオーン』 高野史緒(早川書房)……2点
「スズダリの鐘つき男」 高野史緒(井上雅彦編『マスカレード―異形コレクション』光文社)……1点
「浜辺にて」 ラファティ(ファンジン『らっぱ亭奇譚集 その弐』)……1点
『海を見る人』 小林泰三(早川書房)……1点

 『アイオーン』 : 「錠前屋」を読んだ際にも感じたのですが、高野さんの小説は読み終えた後幾つか疑問が残るのです。連作でなくても短編は何か長編物語の一部のような印象を受けて、この疑問に関係する話をもう少し読みたい・書いて欲しいと思うことがあります。
 『アイオーン』は連作ですから、物語の世界の説明は短編よりずっとましです。
 この世界からは随分と遠い平行世界の話ですが、違和感が無く居心地よくとてもリアル。「説明」こそがSFの本質なのに、それが足りない……、だからSFでなくてファンタジーなのかなと思いかけるのですが、そうではない。この小説のテーマはやはりSFだ。

 「スズダリの鐘つき男」 : 短編なのに良く分かった。

 「浜辺にて」 : 無理に解説すると、猫と人間とのつき合いをひととETとの関わりの喩えに見れば、猫としては人間もまあそれなりに賢い生物なので気まぐれに一緒に遊んであげたりするわけですが、そうした結果が必ずしも彼の理解できる事態では終わらない、ということに相当するのでしょうか?
 あれれ、たしか前足に怪我をしていたのに、治っている。これはあの人間と遊んだことと関係があるのかしら?
 オリバーが地理錐貝一個見つけた、が最初で、オリバー錐貝が見つけられるのを待っているのが最後。ほんとに変なはなし。

 『海を見る人』 : たぶん、シュワルツシルドの障壁にとても近い星の話し。>近すぎるわ〜。そんなとこ、住まれへんやろ〜
 科学的な道具立ては溶けてなくなり、後には恋物語が残る。
 思い浮かんだ作品、「美亜に贈る真珠」梶尾、「タラッサ」クラーク。>タイトルあってる? 前者はイメージ、後者は物語から。
 若い頃の恋愛って、その場でしてしまわないと、またいつか会おうという約束が実現しても、それぞれの時間が経ってしまってもう前の続きにはならない。事象の地平線近くでなくても、この現実世界でも、この作品のようなことはあるのだ。


古原 伸介 さん

 毎年この投票を楽しみにしている者ですが、今年は新作も結構読めたので初めて投票します。

『イリーガル・エイリアン』 ロバート・J・ソウヤー……2点
『最果ての銀河船団(上・下)』 ヴァーナー・ヴィンジ……1点
『クリプトノミコン』 ニール・スティーヴンスン……1点
『鵺姫異聞』 岩本隆雄……1点

 やはりソウヤーは面白いと再認識しました。ヴァーナー・ヴィンジはこの作品で初めて読んで、『遠き神々の炎』も後で読みました。いずれも長編好きにはおすすめです。『クリプトノミコン』は私はコンピュータが専門なので楽しませていただきました。『鵺姫異聞』はスケールの大きさが良かったです。


斎藤 聡 さん

『空想科学エジソン1〜3』 カサハラテツロー(コミック)……2点

 懐かしい感じがする異世界冒険ジュブナイルSFコミックでした。
 主人公は技術職にある少女で、難局を知恵と「勇気」じゃなくて、知恵と「技術」で乗り越えろ、といった感じでしょうか。

『最果ての銀河船団(上・下)』 ヴァーナー・ヴィンジ……3点

 プログラマーの悪夢のようなプログラムライブラリの説明に抱腹絶倒し、チェンホーが雪辱を果たす瞬間の到来にドキドキし、集中化処理を受けたトリクシアの描写が「コンピューターオタク」そのままではないかと思いました。


sugitaro さん

 例年は本名で投票させていただいていたのですが、あいうえお順だと先頭になって恥ずかしいので(自意識過剰)、今年はハンドルネームにさせていただくことにします。

『ディヴィ− 荒野の旅』 E・パングボーン ……1.5点
『言の葉の樹』 A・K・ル=グイン ……1.0点
『太陽の算奪者』 野尻抱介 ……1.0点
『フリーウェア』 R・ラッカー ……1.0点
『ドラキュラ崩御』 K・ニューマン ……0.2点

 なんかビッグネームを並べただけっぽいリストになってしまった。
 パングボーンは、復刊された『オブサーバーの鏡』読んで感銘を受けた直後に出て感激しました。
 ラッカーのハチャメチャさは最高潮にして最高です!
 『太陽の算奪者』は『バビロニア・ウェーブ』以来で久々に熱くなれた(当社比)ハードものでした。
 『ドラキュラ崩御』。もうみんなこんな作品があったこと忘れてると思うので。
 バクスターの新刊が積ン読の山にいるのが残念。(ちょっとすぐ読む余裕無しなので)

sugitaro (似たお名前の方、他意は無いですので気にしないで下さい)


鈴木 力 さん

『グラン・ヴァカンス』 飛浩隆……3点

 高校の授業をさぼって読んでいたSFMで「象られた力」に接し、心の底からぶっとんだ記憶は今も忘れられません。その作者が、あの凄みを湛えたまま戻ってきた。もう何にもいりません。十分です。

『群青神殿』 小川一水……1点

 個人的好みでいけば『導きの星(T・U)』が一番なのですが、あいにく未完なので他の小川作品(『ここほれONE−ONE!(2)』『レインボウ・プラネット』『強救戦艦メデューシン(上)』)も代表させて1票。芸域の広さと視点の鋭さ、水準以上の作品を年間6冊も発表する力量には舌を巻きました。SF界に首位打者があったら、2002年のタイトルホルダーは間違いなくこの人でしょう。

『イリーガル・エイリアン』 ロバート・J・ソウヤー
『東方ウィッチクラフト』シリーズ 竹岡葉月
 各0.5点

 娯楽小説ってなんだろう……というのが2002年の個人的こだわりでした。そこに引っかかってきたのが上の2作。ソウヤーの本領はSF作家というよりペイパーバック・ライターの部分にあると思うんですよね。でも本人は、そうだとはつゆ考えていないのでしょう。一部の読者がソウヤー作品に覚える違和感とか不満は、実はそのへんの落差に由来している気がします。『東方ウィッチクラフト』は、アニメの魔法少女ものを一捻りしたようなキュートな少女小説。アイデアや観念性といった部分の新味はないものの、とにかく上手い。読ませる。後味が爽やか。作者はまだ23歳ですが、「お話」を語ることについては無類の筋のよさを感じます。ウェルメイドな小説を楽しみたい向きには絶対にお薦め。コバルト文庫だからって敬遠するのはもったいない。新シリーズ『フラクタル・チャイルド』はさらにSF/ファンタジイ色が強い作品で今から楽しみです。アンケート葉書も出したぞ。30代の野郎に誉められて喜ぶかどうか知らんけど。

 推薦作は奥泉光『浪漫的な行軍の記録』と、上遠野浩平『あなたは虚人と星に舞う』。両者を読み比べると、作中で開陳されるヴィジョンが驚くほどよく似ていることに気づかされます。作家的資質においてまったく異なる、しかしある種の感覚に関してはおそろしく鋭敏な点で共通している奥泉と上遠野がはからずも同時に見てしまったのは、おそらく現代の無意識とでも呼ぶべき存在なのではないのでしょうか。
 (文中敬称略)


タカアキラ ウ さん

 新刊どころか古いのもSFは全然読めてないのですが、まあ読んだ本のうちSFっぽいものを選びました。

1.『赤城山卓球場に歌声は響く』 野村美月 (ファミ通文庫) …… 2.1点
 まあ、他に誰も投票しないでしょうけれど。
 卓球の神様におつかえする卓球の巫女とか、卓球魔人とか、大学の合唱部の女の子達が主人公なので、良く歌うのですが、盛り上がってるところでかかる脱力しそうなコーラスとかのセンスがぼくは好きです。
いろいろなタイプの女の子がでてくるキャラ小説かと思ってると。さわやかなラストが出てきてちっと感動させられて、結構良い話を読んでたんじゃないかと誤解させられたりして。(誤解っていうなー!)
 デビューした年に四冊出たのはそうとう偉いです。2003年も期待したいです。

2.『真 女神転生 if… 魔界のジン』 吉村夜 (富士見ミステリー文庫) ……1.3点
 Good Job! 吉村夜!!!
 女神転生シリーズというのもまさに世界が滅びそうな(以下略)という由緒正しいヤングアダルト的ゲームですけど、そのゲームの設定を殺さず、そしておぼれず、ゲームを知らない人にも楽しめるように、知ってるともう少しだけ楽しいように、上手ーく料理してあります。
 このオーダーは編集サイドからの要望だそうですが、難しい注文を受けつつ、それ以上のものを出してきているという感じがします。まさかこんな話になるとは!
 この後に、著者のほかのメガテンノベライズも読みましたが、そちらも傑作でした。富士見ミステリのベスト級ですよ。

3.『あなたは虚人と星に舞う』 上遠野浩平(徳間デュアル文庫) …… 0.9点
 なんか、上遠野作品にはいつも票をいれてるんじゃないかと思いますが、「世界が壊れそうな気分とも言える漠然とした将来への不安な気持ちとの折り合いをつけるのを補助するのに読む本」とでもいいましょうか。俺的ヤングアダルトの直球ど真ん中というか、要するに好みのタイプのシリーズなので投票します。
 今年はそろそろブギーポップシリーズも完結に向けて動き出しそうな気がしますね。期待してます。

4.『ここは魔法少年育成センター』 久美沙織(エニックス EX NOVELS) …… 0.6点
 まあ、久美沙織が今ごろハリー・ポッターブームに乗って、魔法使い学園ものを書くのかしら? ていうかそれ「呪禁官」だし! ちぇっ、男子が仲良くしてさーもーダメダメ! 不潔よ! 世間のお嬢様達はみんな大喜びしてるのかしら。フンだ!
 ネットで悪口書いてやるんだったら!とか思ってると(思ってませんよ)そこはやっぱり久美沙織! ライトに書いててもファンタジーでちゃんと落とすのだった! 続きも読みたいですね。

5. 『航路』 コニー・ウィリス(ソニーマガジンズ)…… 0.1点
 女性に例えるなら美人でスタイルが良く頭の回転が早くて性格も良くて実家がお金持ちでお料理も得意、読書も(SFも)好きで眼鏡をかけててどうやら俺が好きらしい。という言うことなしの完璧お付き合いしたい度ナンバーワン人気超絶美女って感じ。完璧! 完璧すぎる! 素敵すぎる! というか。
 でもその完璧さは少しの素質と、多くの努力と計算によってもたらされたものだったのだ!! それが悪いことは全くこれっぽっちもありっこないのだけれど、そんな完璧素敵超人には気後れしてしまったりするのだった。
 でも好き。
 でもでも、そんな超大人気美人もだけど、一応お嬢様学校には通ってて顔も可愛い(けど、学年一の美女とかじゃない)、成績は中くらい、ちょっとドジでおっちょこちょいで作ったお菓子はちょっと焦げてるときの方が多いって子もイイよね。(何の話をしているのだろうか…)
 とりあえず、ウィリス作品は大好きです。『ドゥームズデイブック』が文庫になったり、新たな翻訳作品がでたりと楽しみです。

 漫画では

『ふたつのスピカ』 柳沼行(メディアファクトリー MFコミックス)
『もっけ』 熊倉隆敏(講談社 アフタヌーンKC)

 が面白かったです。
 あ、メディアファクトリーと言えば、

『葉緑宇宙艦テラリウム』夏緑(MF文庫)

 が、イラストとか帯の煽りで持たされるイメージに反してちょっと良かったです。
 SFじゃないけど、SFファンにも読ませてみたいのは

『NHKにようこそ!』 滝本竜彦(角川書店)
『ラヴ☆アタック』 川上亮(角川書店)

 です。どちらもも大傑作。
 でもちょっと、ひとごとじゃないような。


タニグチリウイチ さん

『神様のパズル』 機本伸司 (角川春樹事務所、1700円)
『SPACE SHIP EE』 タカノ綾 (カイカイキキ、1600円)
『群青神殿』 小川一水 (朝日ソノラマ、552円)
『A君(17)の戦争』 豪屋大介 (富士見書房、620円)
『キぐるみ』 D (河出書房新社、1600円)

――各1点――

 タカノ綾は現代アーティストだが作品にSFからインスパイアされたものが多くSF好きの心をくすぐる。Dの「キぐるみ」はマンガと小説がごっちゃになったスタイルから浮かび上がるグロテスクな世界像とそして人の心の暗い部分が読み手をそのばにすくませる。『群青神殿』は徹頭徹尾エスエフ。『A君(17)の戦争』は完結していないがいかにもな展開の根本に揺るぎなく存在する超ハードな部分がしだいに見えて来て先に期待を持たせる。『神様のパズル』は表紙買い、 だけじゃなく論理で固めた空想の飛翔にわくわくさせられた。

ページトップへ

津沢 正晴 さん

『太陽の簒奪者』 野尻抱介……3点
(早川書房,2002.4.30発行.森下様のサイト「2002年5月のSF」で紹介)

 未来のSF史家が、ファーストコンタクト・テーマに新たな地平を見いだした記念碑的な作品、と評するかもしれない傑作です。「これが彼らのテクノロジー」という言葉に収斂され導かれる、環境・生物・文明の多様性。その組み合わせの数に応じた様々な最初の接触が語られていくのでしょう。
 むやみに長い小説が幅を利かす今日において、時空の広がりを300頁以内で語り通してしまう本書は、小粒でもピリリと辛い魅力を放っています。

『死都日本』 石黒耀……2点
(講談社,2002.9発行.第26回メフィスト賞受賞)

 南九州で破局的な火山噴火が起き、巨大火砕流、降灰、ラハール(火山土石流)により西南日本が壊滅的被害を受け、日本が国家として存亡の危機に立つ……。こう書くと安易なパニック・スペクタクルのようで、下手に映像化すると本当にそうなりかねない題材ですが、火山学の知識を的確に使いこなした地球科学テーマの力作です。著者は火山の専門家ではないそうですが、本書は現役の研究者たちにも高く評価されています。
 直径20km内外のカルデラを形成する巨大噴火が、日本列島全体で1万年に1回くらいの割合で起きています。頻度は非常に低いけれども、あの『日本沈没』に比べてより現実的な設定です。
 厚さ数10mの火砕流堆積物に覆われ異形の地と化した被災地から、主人公が脱出しようと苦心惨憺する場面。そして絶望的な状況ながら新たな世界が垣間見える終章。文章は荒削りで小説としての完成度は不十分かもしれないけれども、『幼年期の終わり』にも通じる衝撃と高揚感を味わいました。


とりこ さん

・『地球礁』 R・A・ラファティ … 3点
・『フリーウェア』 ルーディ・ラッカー … 1点
・『S倉迷妄通信』 笙野頼子 … 0.5点
・『ラッキー・ヌードル』 山名沢湖(コミック)… 0.5点

笙野頼子作品について:
 作中で「バカSF」との自称もありますし、エイヤっ、と入れてみます(勿論、たいへん面白かったからでもあります)。

山名沢湖作品について:
 『いちご実験室』の発売が、あと1週間早ければ……(2003年1月6日発売で、条件に合 わないのです)悔しいなあ。
 という訳で、「Ours LITE」6月号掲載の、読切作品に一票投じてみます。「運命の赤い麺」を巡る、タイムスリップ・メルヘンSF(?)の短篇マンガです。
 同誌3月号掲載『ヨル☆ノビル』も、主人公の夫が「伸びる」お話で、相当SFめいてい る、と個人的には思うので、どちらか迷ったのですが……。
 ちなみに、掲載誌は休刊してしまいました。たいへん惜しまれます。

 その他、『イリーガル・エイリアン』(ロバート・J・ソウヤー)、『内宇宙への旅』(倉阪鬼一郎)も面白かったです。
 また『傀儡后』(牧野修)、『太陽の簒奪者』(野尻抱介)を始め、ハヤカワJコレクションシリーズも、たいへん面白かったです。

 アンソロジーなので外しましたが、『90年代SF傑作選(上・下)』(山岸真編)、特に、「バーナス鉱山全景図」(ショーン・ウィリアムズ)、「ルミナス」(グレッグ・イーガン)もとても印象的でした。
 『言の葉の樹』(U・K・ル=グィン)も、佳作だなあと思いました。

 また、「SF」でなくて「伝奇」だと思うので外しましたが、『蓬莱洞の研究』田中啓文も、とても楽しくて、たいへんお気に入りです。


中村 達彦 さん

『あしたのロボット』 瀬名秀明……2点
 優しく語られている近未来の物語。読みやすく、久しぶりにSFを読んだと実感させられます。アトムはじめ手塚作品へのオマージュがこめられ、小学校〜中学校で読んだ作品の各シーンが蘇りました。個人的には「亜希への扉」がお勧めです。未来はロボットだけの社会になりましたが、人間は滅んでいないと思います。

『五人姉妹』 菅浩江……2点
 臓器提供の問題を絡め、優雅に暮らす彼女を訪ねる他の彼女たちとのドラマは、ピアノの音色をイメージしながら思い描きます。菅先生のご主人の著作から娘さんがご病気と知りましたが、娘さんへの愛情も物語のバックボーンにあるのでしょうか? 電脳世界を舞台にした女性の話も面白かったです。

『仮面ライダー 誕生1971』……1点
 仮面ライダー龍騎、仮面ライダースピリッツでかつての感動を再び沸き上がらせてくれたことへのお礼も含めて1票です。TVのストーリーをリアルに再構築し、1971年の時代を描きつつ、変身の設定もナノテクノロジーを入れた点はニヤッとします。そしてラストシーン、仮面ライダーはやはりヒーローです。


nyam さん

1.『太陽の簒奪者』 野尻抱介
(ハヤカワJコレクション 早川書房) …… 1点
2.『ノルンの永い夢』 平谷美樹
(ハヤカワJコレクション 早川書房) …… 1点
3.『イリーガル・エイリアン』 ロバート・J・ソウヤー
(ハヤカワ文庫 早川書房) …… 1点
4.『最果ての銀河船団』(上・下) ヴァーナー・ヴィンジ
(創元社文庫 東京創元社) …… 1点
5.『ミラー・ダンス』(上・下) ロイス・M・ビジョルド
(創元社文庫 東京創元社) …… 1点
☆番外 『邂逅のハレス海』アグラファ4 三浦真奈美
(中公Cノベルス 中央公論新社)

 1と2は、Jコレクションというハヤカワの企画に対するご祝儀です。
 しかし、平谷美樹はショックだった。いや、本の内容じゃなくて、中谷美樹のイメージで考えてたもので、男性作家と知ったときの驚きといったら……
 3,4,5は無難なところでしょう。奇想SF主義者の私としては、少し食い足りない。ヴィンジも『遠き神々の炎』の方がずっとよかった。個人的な意見ですが、チェン ホー船団+鉄爪族の組み合わせで1作にしたほうがイイ!
 なお、『真空ダイヤグラム』が未読なので、『プランク・ゼロ』は保留。

 追伸: 以前の作品ですが……

☆再発見賞☆ 海外 『虚空のリング』(上・下) スティーブン・バクスター
    ハヤカワ文庫 早川書房
       国内 『ザオの騎士王」ほか 鋼馬章伝シリーズ 安彦良和
    徳間ヂュアル文庫 徳間書房


林 芳隆 さん

 基本的に翻訳物の長編だけです。読むのは。
 安心して読めるのは、お気に入りのシリーズ物。軽いものが好きです。 となると「丸ペ」が一番なのですが、10冊のうち特に良い1冊を選べるという物でも無いし、無条件で人に勧められるとも言いにくいので、リストには入れられません。(順番は読んだ順です)

『魔法使いの困惑』 ピアズ・アンソニー(山田順子訳、ハヤカワ文庫)

ザンスはたわいなくて、好きです。原書を読んで、かなり時間がたってから翻訳が出るので、二度楽しめます。

『銀河おさわがせアンドロイド』 ロバート・アスプリン&ピーター・J・ヘック(斉藤伯好訳、ハヤカワ文庫)

このシリーズも好きです。アスプリンは『魔法の地図はいわくつき!』もあったのですが、読んだ直後の判断でこっちが選ばれていました。何故だったかは忘れている。

『ホームズと不死の創造者』 ブライアン・ステイブルフォールド(嶋田洋一訳、ハヤカワ文庫)

不思議な世界の不思議な話で、印象に残っています。シリーズでないのは、これだけですね。

『戦乱の大地』 デイヴィッド・ブリン(酒井昭伸訳、ハヤカワ文庫)

『エンディミオン』も良かったのですが、あまり残酷な描写は好きでないので、こちらのほうが好きです。

『錬金術師の魔砲(上下)』 J・グレゴリイ・キイズ(金子司訳、ハヤカワ文庫)

まさかと思ったあんな事になってしまって、先が楽しみなシリーズです。

 なぜか全部早川でしたね。
まだ『最果ての銀河船団』と『エンディミオンの覚醒』が読みかけなのですが、たぶんリストには入らない予定です。
ディスクワールドの新刊(Night Watch)を読み始めてしまったので、 両方とも締切までには読み終わらないでしょう。
ディスクワールドが一番好きなのですが(ハードカバーを買ってしまう程度)、翻訳が出ないですね。


ひらやま ひろゆき さん

 いろいろ考えてみたのですが結局こうなりました。

『太陽の簒奪者』 野尻抱介 ……5点

 日本SF大賞は逃しましたが、やはり日本ハードSF史上に残る作品だと思います。

 今年は『太陽の簒奪者』が強すぎましたが、Jコレクションはいずれ劣らず傑作でした(でも配点は0)

『海をみる人』小林泰三
『ウロボロスの波動』林譲治
『妻の帝国』佐藤哲也
『アイオーン』高野史緒
『傀儡后』牧野修
『どーなつ』北野勇作
『グラン・ヴァカンス 廃園の天使』飛浩隆
『ロミオとロミオは永遠に』恩田陸
『ノルンの永い夢』平谷美樹

 以下の作品も傑作で、『太陽の簒奪者』がなければ2点以上を投じていたはず(でもやっぱり今回の配点は0)

『イリーガル・エイリアン』ロバート・J・ソウヤー
『最果ての銀河船団』バーナード・ヴィンジ


maririn さん

 今年いや 去年は通勤にJRを使用し、通勤時間も往復で2時間を越えていたため沢山本を読むことが出来ました。(ハヤカワSFシリーズJコレクションを全部読めたのは嬉しかったー)
 で、投票です。

『ノルンの永い夢』 平谷美樹……3点

 本の裏に書いてあるあらすじを読んだ時には、戦争物が苦手な私には読むのが辛そうだなぁ……と思って読み始めたのですが、これがまたどーして、とっても気にいってしまいました。
 ということで 2002年の一押しはこれ。

『鵺姫異聞』 岩本隆雄……2点

 やっぱ『星虫』ファンとしてはこの本は外せないでしょう。

 こうやって見ると私って時間物が好きなんですねー。
 週明けからまた異動になって 今度は車で通勤(通勤時間、15分)となりました。読む本の量が極端に減るだろうなぁ……
 せっかく古本屋巡って5冊も買ったのに(『闇の左手』『火星人の方法』『中性子星』『グランド・バンクスの幻影』『スタープレックス』)読み終えるのは随分先になりそうです。


本橋 牛乳 さん

 今年もベストSF、以下のように投票させていただきます。

『グローリアーナ』 マイクル・ムアコック(創元推理文庫)……3点
『世にも不幸なおとぎ話』 ステラ・ダフィ(角川書店)……1点
『鷲か太陽か』 オクタビオ・パス(書肆山田)……0.4点
『至福のとき』 莫言(平凡社)……0.3点
『地球礁』 R・A・ラファティ(河出書房新社)……0.3点

 『グローリアーナ』は、かなり昔、サンリオSF文庫で予告されていた本ですけど、サンリオがなくなり、それでも創元がようやく出してくれました。訳者も粘り強く翻訳を続けてくれたし。そうして、ほんとうに待ったかいがある本でした。ストリーテリングの巧みさや腰が抜けるようなラストなど、ほんとうに小説を読んでいて楽しいと思える本だということもあります。でも、それを裏で支えているのが、ムアコックのリベラルな思想だということも忘れてはいけないような気がします。ニューウェーブSFは政治的なものも多分に含んでいたけれど、その良質な部分が生きている、そう思うのです。具体的には、グローリアーナ女王が治める国の持つ思想ということですけど。
 パスの詩集をあえて選んだのは、ここに収録されている詩がニューウェーブSFと通底するものがあると思ったからです。「波と暮らして」はほんとうにいろんなアンソロジーに収録されているのですが、この波と部屋で暮らすというようなファンタジックで短い話が詩として多数収録されている、しかも若いパスがメキシコではなくフランスのパリでの生活を余儀なくされている中で書かれた作品は、「ニューワールズ」に掲載されたものだと言われてもなっとくするのではないでしょうか。ドナルド・M・トマスとかジョージ・マクベスなんかを思い出します。
 新しい作品として、『世にも不幸なおとぎ話』が良かった。王女さまは3つのカップルを別れさせなければならない、という。おとぎ話とはいえ、子供が読むものじゃないですね。とにかく、みんな不幸になってしまえ、というパワー全開なんです。幸福なんてもろいものだし、というのも、政治的な妥協の中にあるからだ、レズビアンである著者はそんなことを感じているのかもしれません。
 莫言の『至福のとき』はタイトル作が映画になったものです。が、おすすめは収録されている短編「宝の地図」、もう最初からめちゃくちゃな話なんです、これが。150歳の夫婦が経営する餃子屋で、みんながホラ話をしまくるという感じですか。
 選ばなかった作品をいくつかコメント。イアン・バンクスの『エスペデア・ストリート』(角川書店)は『ゲーム・プレイヤー』の作者による、とても泣けるロック小説。けっこう好きです。ジャネット・ウィンタースンの『オレンジだけが果物じゃない』(国書刊行会)も、面白かったんだけど、同じ作者の『さくらんぼの性は』には及ばないと思うので。バラードの『スーパー・カンヌ』(新潮社)は、『コカイン・ナイト』と同じ話を読んでいる気がしたので、これも選びませんでした。でも、三部作として完結したら、見方が変わるかもしれません。次は病院あたりを舞台にするのでしょうか。


もりげ さん

『群青神殿』 小川一水……2点
『海を見る人』 小林泰三……1点
『あしたのロボット』 瀬名秀明……1点
『90年代SF傑作選』 山岸真・編……1点

 ということでお願いします。かなり「あえて」という選び方かもしれません。

 まず小川氏『群青神殿』は今年の個人的イチオシ。物語としてどうかは置いて、アイディアの大きさ、細部にまで設定を活用したプロットなど、すばらしいハードSF。
 「SFが読みたい! 2003年版」でそれぞれ国内1位・2位に選ばれた野尻・飛の両氏が、同誌のアンケートではともにこの『群青神殿』をベストにあげておられるのを見て、一層その意を強くしました。いずれにしろ、SFでしか描けない『群青神殿』の美しい光景は、感動的でした。 たとえば、このプロットや仕掛けをそのままでクラークが作品を書いたとしたら、おそらく『海底牧場』を超える海洋SFの傑作として記憶されただろうと思います。(実は今年は『導きの星』を読んでいないのは秘密です)

 『海を見る人』は特異な短編集で、小林氏にしか書けない味がぎっしり。
 Jコレクションからはこれ一冊になってしまいましたが、まっとうに選んでいたらほとんどがJコレクションになっていたかもしれません。
 ということでここでいくつか書くと、本来はベスト『太陽の簒奪者』
 『グラン・ヴァカンス』も美しい作品。シリーズ続編に大期待。
 『傀儡后』も大好き。本当は牧野氏のファンなんです。 『どーなつ』も同じく。本当は北野氏のファンなんです。
 『ウロボロスの波動』……これも楽しみなシリーズ。
 Jコレクションは今後も非常に期待しています。

 『あしたのロボット』、こうして世界を見つめ直すというのはSFの根本姿勢のひとつなのではないかと思います。作を追うごとに人気がなくなっていくようにも見える瀬名氏を、SF界はますます応援していかなくてはなりません!

 最後、海外からはこれだけ『90年代SF傑作選』。
 「イーガン以外読むべきものはない」というような評を目にしましたが、なかなかどうして。レナルズ、ウィリス、ウィリアムズ、レズニック、ビッスン、マクデヴィット、それぞれ非常に楽しめました。(これじゃ挙げられなかったのが可哀想みたいですね……)
 まさに最高級のアンソロジーだと思います。

・・・ほか、『最果ての銀河船団』はすでにかなり票が入っているようなので(『太陽の簒奪者』ともども)はずさせていただきました。完結待ちのデイヴィッド・ブリン、下巻が03年発売だったスティーヴン・バクスターなども、はずしました。
 また、今年は特に国内ものに読んでいない話題作が多く、『アラビアの夜の種族』『星の、バベル』など、まだまだ読みたい作品が残っているので楽しみです。


森下 一仁

『太陽の簒奪者』 野尻抱介
『あしたのロボット』 瀬名秀明
『世界の果ての庭 ショートストーリーズ』 西崎憲
『最果ての銀河船団』 ヴァーナー・ヴィンジ
『クリプトノミコン』 ニール・スティーヴンスン
  ――各1点――


Yamagata Hiroo さん

『地球礁』 5点


山口 素夫 さん

 久々にベストSF投票をさせていただきます。

1.『エンディミオン』 ダン・シモンズ……2点
2.『クリプトノミコン』 ニール・スティーヴンスン……1.5点
3.『最果ての銀河船団』 ヴァーナー・ヴィンジ……1点
4.『フリーウェア』 ルーディ・ラッカー……0.5点

 1はやっぱり泣かせるお話ですね。ダン・シモンズに脱帽です。2は脱線が多いところが逆に楽しめましたが、ついてゆけない人が多分多いでしょうね。3もなかなか楽しめました。4は良くこれだけネタが続くと呆れながらもおつきあいで。


依光 秀志 さん

『イリーガル・エイリアン』 ロバート・J・ソウヤー 2点
『クリプトノミコン』 ニール・スティーヴンスン 2点
『傀儡后』 牧野修 1点

 自分の琴線に触れた作品、読んでいて素直に楽しいと感じた作品、という基準で選びました。すご〜く素晴らしい傑作、かと考えると自信ありませんが、あくまでも自分の趣味ということで^ ^;


匿名 A さん

『最果ての銀河船団(上・下)』 ヴァーナー・ヴィンジ……2点
『グリーン・マーズ』 キム・スタンリー・ロビンソン……2点
 今年に入れて良いものかわからないのですが。
 (森下註 : 2001年12月発売なので参考票とさせていただきます)
『エンディミオン』 ダン・シモンズ……0.5点
『エンディミオンの覚醒』 ダン・シモンズ……0.5点

 超光速航法が入ってくると、特殊相対論における同時性の問題が解決できなくなるため、どうしても点が辛くなります。その点『最果ての銀河船団』はなかなかでした。

ベストSF2002 投票募集のお知らせ


 今年もやりますベストSFアンケート。
じっくり選んで投票してください。

 2002年1月1日から12月31日までに国内で出版されたSF(奥付の日付で判断してください)で、あなたがおもしろかったと思うものをEメールで投票してください。要領は次のとおりです。