「ベストSF '97」集計報告


1998年3月3日現在(投票者数:47……うち参考票2)

ベスト10


(海外)


『火星夜想曲』イアン・マクドナルド(23.1点)


『火星転移』グレッグ・ベア(8.75点)


『消えた少年たち』オースン・スコット・カード(8.5点)


『ターミナル・エクスペリメント』ロバート・J・ソウヤー(7.5点)


『リトル、ビッグ』ジョン・クロウリー(7点)



『女王天使』グレッグ・ベア(6点)



『花粉戦争』ジェフ・ヌーン(5.75点)



『第81Q戦争』コードウェイナー・スミス(5.4点)



『あいどる』ウィリアム・ギブスン(4点)



『グリンプス』ルイス・シャイナー(4点)



『ブレードランナー3』K・W・ジーター(4点)



(国内)


『BRAIN VALLEY』瀬名秀明(12.5点)



『ちほう・の・じだい』梶尾真治(11点)



『光の帝国――常野物語』恩田陸(9.75点)



『星は、昴』谷 甲州(8.35点)



『ライトジーンの遺産』神林長平(8点)



『炎都』/『禍都』柴田よしき(4.5点)



『アルカイック・ステイツ』大原まり子(4.2点)



『新化』石黒達昌(3.5点)



『どこかへいってしまったものたち』クラフト・エヴィング商會(3.5点)


10
『天夢航海』谷山由紀(2.7点)



1位に輝いた方のお言葉


古沢嘉通様(海外部門1位『火星夜想曲』訳者)

森下一仁さま並びに拙訳に投票して下さったみなさま

 本日、森下さんオール直筆(!)の表彰状を拝受致しました。表彰状なるものをいただくのは、小学校以来のことで、驚きかつ感激しております。とりわけ嬉しかったのは、『火星夜想曲』の作者マクドナルドに対する表彰ではなく、訳者である小生に対する表彰だったことです。翻訳者というのは、黒子の存在を強いられることがままあり、言及されるときは、たいてい「翻訳が悪い」という苦言であることが大半なので、なかなかエゴブーの機会がありません。森下さんには、小説推理の書評でも、拙訳について好意的評価をいただいており、重ねて御礼もうしあげます。
 また、本作に投票くださった大勢の読者のみなさまに、心から御礼もうしあげます。プロ、アマそれぞれの各種ベスト投票類でぶっちぎりの強さを見せた『火星夜想曲』ですが、当ホームページのベスト投票の国内部門一位作品のおそらく数十分の一しか売れておらず、再版すらかかっていない事実に「日本のSFの現状」を見る思いがして、ときどき暗い気分に陥り、ああもう二度とこんなしんどい仕事をするもんか、と思ったりもするのですが、本作を読んで「SFを読もうと思った」というような嬉しいコメントを目にすると、がんばってみようかという気持ちが湧いてきます。
 現在の(販売)実績では、イアン・マクドナルドの長篇がこの先日本語になるのは、なかなか難しいことかもしれませんが、いつか良い風が吹いてくることを期待して、小生も翻訳技術(と速度(笑))の向上に精進していく所存でございます。
 今後とも、ご支援ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。

1998年4 月7 日

当分、ミステリ訳者(笑)の古沢嘉通


瀬名秀明様(国内部門1位『BRAIN VALLEY』著者)

森下一仁様、ならびに、ベストSF'97 に投票下さった皆様

 拙作『BRAIN VALLEY』が国内SF部門で一位となったこと、とても嬉しく思っております。先日、郵送にて表彰状をいただきました。そこには「あなたがお著しになった『BRAIN VALLEY』(角川書店刊)は、私どもで実施したベストSF'97 国内SF部門において、最も多くの支持を獲得、先端科学の粋と虚構を大胆に組み合わせた趣向によって、知的エンターテインメントたるSFの魅力を存分に堪能させて下さいました。慈にその栄誉を讃え表彰いたします」とありました。今回の投票結果は私にとって大きな励みとなりました。ありがとうございます。
 私は日本ホラー小説大賞でデビューいたしましたが、『BRAIN VALLEY』はホラー小説ではなく、強いてジャンル分けをするならばSF小説になると思っております。ただし前作の『パラサイト・イヴ』のときもそうでしたが、私はなるべくジャンル小説ではなく一般のエンターテインメントとして意識しながら書いたつもりでした。私はジャンル小説が好きですし(そうでなければ日本ホラー小説大賞に応募しません)、ジャンル小説の有用性を信じていますが、自分が小説を書くならばなるべく新しい試みをしたいと思い、常にふつうの小説とは少し違った書き方を心がけてきました。今回、SFの投票で『BRAIN VALLEY』がご支持いただけたことは、そういった新しい(あるいは少し違った)書き方をSFとして評価していただけたからなのではないかと思っております。
 ただ、『BRAIN VALLEY』の評価については、SFとミステリーとの絡みで少し戸惑ったところもありました。今回の投票結果とは直接関係ありませんが、説明させて下さい。
 ちょうど私が『パラサイト・イヴ』でデビューしたとき、主としてミステリー系の評論家の方々が「ノンジャンル・エンターテインメント」に強い関心を抱いていたこともあり、『パラサイト・イヴ』はミステリー分野からも注目していただくことができました。「このミステリーがすごい!」や週刊文春のミステリーベスト10でもご高評をいただきました。しかし、今回の『BRAIN VALLEY』は、ミステリー評論家からあまりよい評価を受けていないようなのです。面白くないからなのかもしれませんが、それ以前に、例えば「EQ」のミステリー新刊リストに取り上げられていないことなどから、もしかすると「広義のミステリー」として認識されなかったのではないかと思っております。『パラサイト・イヴ』の頃は、梅原克文さんの『ソリトンの悪魔』が日本推理作家協会賞を受賞したことからもわかるように、明らかにSFはミステリーの一部として評価されていました。しかしそれから3年が経過し、その間で(「本の旅人」での北上次郎さんの御発言がその代表ですが)、SF的な小説をSFとして扱うようにミステリー評論家の意識が変化してきたのではないかと感じます。
 これが良いことなのかどうか、私にはわかりません。もしかすると以前よりもジャンル偏重主義が蔓延してきているのかもしれません。あるいは作品の拠って立つところを正当に評価しようとする意識のあらわれなのかもしれません。ただ、私のようにジャンルをあえて外したところで小説を書こうとするものにとっては、評価される場所がこれから狭くなるような気がしています。クロスジャンル的な小説を書く(というよりその作家だけにしか書けない小説を書く)作家が増える傾向にあるだけに、ミステリー世界でのこういった最近の傾向は少し淋しく感じられます。
 そんな中で、今回の投票でSFプロパーでない私の作品を選んで戴いたことは、SFというジャンルが本来持っていた包容力を再認識させられた思いです。個々のコメントを拝読しますと、必ずしも絶賛というわけではないようですので、今回の結果に満足することなく。今後も精進して参りたいと思っております。
 どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

得点詳報


各投票者の推薦作(50音順・敬称略)

赤尾杉 隆
『花粉戦争』ジェフ・ヌーン(2点)
『内海の漁師』A.K.ル・グイン(1点)
感想:
 ヌーンは、花粉症の同輩としてもやはり悪夢的という作品です。
 ル・グインもこういう普通のSFも書くのか、と思ってちょっと嬉しかった。

亜樹永生( 夢塵書舘
 あまり読んでない中からの投票なので、かなり偏っています。
『ライトジーンの遺産』神林長平(1点)
 こういう設定には燃えるのです。連作という形式が好きで、神林ファンなのです。
『火星夜想曲』イアン・マクドナルド(1点)
 古式ゆかしくなつかしいSFっぽさを感じました。
『光の帝国――常野物語』恩田陸(1点)
『3LDK 要塞 山崎家』太田忠司(1点)
 楽しい作品でしたので。
「天国の門」(亀井高秀『天使の化石』所載の短編・スコラ刊)(0.5 点)
 SF設定な少女マンガだともいえるかもしれないし、同人誌的雰囲気ややありだが、ともかく好きだったのです。台詞が重い。そして暗く、哀しくてやさしい。『天使の化石』に同時収録されている他の短編もいいです。
(番外)
『ターミナル・エクスペリメント』
 面白いんですが、前半と後半の展開のギャップが。
 それと挿入されている宗教系のスラップスティックの部分では、キリスト教ばかりで他の宗教が抜けてるのがちょっと不満。仏教の宗派の中には魂の存在を考えてないものなどあるので、どうせならそのあたりの反応も触れてくれると面白かったかな、と。まあ、そこまでやってしまったらそれだけで一冊になってしまいますが。
<準参考作>
『勇者王ガオガイガー』米たにヨシトモ監督・サンライズ
 映像作品は対象外だったので、参考として。
 随所にちりばめられたSF設定、燃える展開。実にすごい作品ではありました。
 アニメにも他にもっといい作品があるというかもしれませんが、『勇者シリーズ』という子ども向けの枠の中でここまでやったところは偉いと思います。
 『準』がつくのは、きちんと設定してるところとうっちゃらかしなトコとの落差が激しいのと、一部ご都合主義的すぎる部分に呆れたのと、ラストが自分にとってはちょっと(汗)な部分があるもので。

阿部敏子
『斎藤家の核弾頭』篠田節子(2点)
『滅びの都』ストルガツキイ兄弟(1点)
『オールウェイズ・カミングホーム』アーシュラ・K・ル・グィン(1点)
『月光魔術團』平井和正( 0.5点)
『恐竜のアメリカ』巽孝之( 0.5点)
 非常にひねた考え方なのですが、まず高得点を得ると思われる作品は除きました(ゆえに、 『フィアサム・エンジン』『火星夜想曲』『リトル・ビッグ』 は除外)。
  『斎藤家の核弾頭』 は、文句なく昨年のベスト。題が 『パパの原発』 をストレートに連想させるのは、損ですね。
  『滅びの都』 『オールウェイズ・カミングホーム』 は、作品を出版した出版社へ。『滅びの都』を始め、ストルガツキイ兄弟の作品を出版しつづけている群像社の努力は、もっと報われてもいいと思います(わたしもあまり本を買っていないのですが)。『オールウェイズ・カミングホーム』という実験的な作品を出版した平凡社にも、拍手。ただ、SFという語を避けたことには、ひっかかりを感じないわけではありません。
  『月光魔術團』 は、平井和正復活の兆しに(『犬神明』は復活というより決着だったので)。シリーズ開幕当初の予想とは、ずいぶん違った展開になっているのも楽しみです。
  『恐竜のアメリカ』 はノンフィクションですが、アクロバティックなまでの論理展開が実にスリリングで、楽しめました。

天川和久
1.『火星夜想曲』イアン・マクドナルド(2点)
2.『花粉戦争』ジェフ・ヌーン(1点)
3.『グリンプス』ルイス・シャイナー(1点)
4.『消えた少年たち』オースン・スコット・カード(1点)
 はじめての投票です。2から4は順不同。
 2と3は評判はもうひとつですが、ロックSF/ファンタジーとして非常に個人的には印象的でした。特に3はロックファンのためのファンタジーとして真摯なまでの「内輪受け」度が逆にリアリティを感じさせました。(訳者の小川さんの注釈にも感動!)
 4はもとの短編とあわせ、少し嫌味なくらいのうまさに1 点。(でもこれはSF投票だなあ……読書量が少ないのでお許しを)
 冬の時代らしいですが、僕はやはり「現代」のSFが読みたい。今に生きる人たちの肉声としてのSFが。
 絶対的な傑作とか不朽の名作ばかりがSFではないと思ってます。(ポップ・ミュージックの世界では廃れるものにも時代が感じられて面白かったりします)

伊東 顕
  (海外)
『オールウェイズ・カミングホーム』アーシュラ・K・ル=グィン(2点)
『火星夜想曲』イアン・マクドナルド(1点)
  (国内)
『星は昴』谷甲州(1点)
『どこかへいってしまったものたち』クラフト・エヴィング商會( 0.5点)
『プリンセス・プラスティック〜母なる無へ〜』米田淳一( 0.5点)
 冬の時代、氷河期、はたまた火星の時代なのかもしれませんが、これ以外にも選びたいものがいくつもある以上、97年はそれなりによかったような気もするし、さて、今年はどうでしょう?

伊藤俊治
 昨年はあまり新作を読んでいないので、どうしようかと思ったのですが、
『火星夜想曲』イアン・マクドナルド
『アルカイック・ステイツ』大原まり子
『第81Q戦争』コードウェイナー・スミス
『天使墜落』ラリー・ニーヴン、ジェリー・パーネル&マイクル・フリン
『光の帝国』恩田陸
 に1点づつお願いします。

今中一時(http://www.pluto.dti.ne.jp/~moment/
『女王天使』グレッグ・ベア(2点)
『火星転移』グレッグ・ベア(2点)
 待ちに待った二冊がよりによって同じ年に出版されてしまったため、点を分けなければいけないのがつらいです。
『第81Q戦争』コードウェイナー・スミス(0.4 点)
 とにかくまとまったので。
『果しなき流れの果に』小松左京(0.1 点)
 とにかく再刊されたので(なにしろ数年来捜していたものですから)。ただしオールタイムベストのトップというのはちょっと唖然としました(『夏への扉』もですが)。
 あまりSFを読んでいない中からの選択なので、残りの0.5 点は私が読まなかった傑作のために捨てることにします。

エスねこ
『ブレードランナー3』K・W・ジーター(3点)
 ジーターは化けましたねー。冒頭と結末を除けば、もはや映画『ブレードランナー』との接触点はありません。描写も、かつてのディックじゃありません。『ブレードランナー3』はカレル・チャペックの『RUR』の巨大な再話で、冗長だけど完全無欠な描写/シンプルでキカガク的な登場人物たちも、アメリカの流儀を遠く離れてチャッペックやレム、カフカ、ザミャーチンを想像させます。ディックを脱したジーターは、どこに行こうとしているんでしょう? 次作が待たれます。
『あいどる』ウィリアム・ギブスン( 1.5点)
 東京を舞台にして、密度の濃いサスペンスとギブスン流のジャパネスク描写が味わえるっすね。日本の読者は『作中の東京』と『ホンモノの東京』のダブル・ミーニングが味わえるという特典 (^_^; つき! ただ、テーマ的にはR・A・ラファティの短編『秘密の鰐について』(あ、コッチも浅倉久志訳だ)をサイバーパンク文体で引き伸ばしただけで、オイラとしてはラファティの方の豪快さを取りたいので、いい点は出せません。『ニューロマンサー』なんかよかファンタジーっぽくて、ずっとずっとずっと楽しい小説なのですが…惜しい1作。
『ジャンパー』スティーブン・グールド( 0.5点)
 古きよき超能力者テーマを「禁煙法が制定された後のニューヨークでやったろー」って意欲ある作品。『古きよき』部分だけを上手に取り出すことができず、『古き悪しき』部分…つまり、「アメリカ在住の白人男性によって書かれた」SF、と非難されていた点も引きずっています。後半になるほどこの傾向は強くなり、ラストで読者に投げかけられる問いは「アメリカの白人男性」以外にはあんまりピンとこないです。ただ、作者はその問題点をキチンと認識している。結末も、続きが書けるように工夫してあるので、もっと複眼的な視野を持った続編が出ることを期待して、選に入れました。
別枠・推薦SFリスト
『神鯨』T・J・バス
 20年以上前の作品というのが信じられないくらいに、古びない作品。テクノロジーの描写方法が際立っており、また複雑で巨大な地球そのものをテーマにする物語もスゴイ。
『ブロントメク!』マイクル・コニイ
 なんてコトはない田舎惑星の開発騒動を、叙情あふれるヒューマン・ストーリーにしてしまう手腕はミゴト。コミュニティというもののモロさを甘く、切なく描いています。
『ロードマークス』ロジャー・ゼラズニイ
 マンガの『ジョジョの奇妙な冒険』で色々ネタに使われてた、といえば通りがいいかも。「カッコいいキャラクター」ばっかで「カッコいいSF」を展開するとどうなるか……という頂点。
『JEM』フレデリック・ポール
 SFという文学ジャンルが到達した結論、と言ってもいい。他のSFの成果を盛り込みながら、人類そのものを描いてしまう。これを超えるマジメ作品は、なかなか見つからない。
《センシティブ・シリーズ》ハーバート・バークホルツ
毎度、1人称の中に3人称パートが混ざり込み、たとえて言えば『娯楽小説の無法規ドライバー』。文章テクニックはスタイリッシュで緊密。ただの超能力SFだけど、類似作品はどこにもない。
『ジュラシック・パーク』マイクル・クライトン
 説明の必要なし (^^; 。ただ、この作品の真価は、ウェルズやヴェルヌと比較されてはじめて見えてくるのでは……という持論を持っています。来世紀のSFを占う、試金石。

大熊健朗
『火星夜想曲』イアン・マクドナルド(1点)
『光の帝国』恩田陸(2点)
『天夢航海』谷山由紀(1点)
『レフトハンド』中井拓志(0.5点)
『妖都』津原泰水(0.5点)
 5作に絞るのがまず大変だった。色々考えた挙げ句、海外は『火星夜想曲』のみとして(本当は『リトル・ビッグ』とか『フィアサム・エンジン』等を入れたかったんだけど)、他4作は国内で目立った小説を選んでみた。
 『光の帝国』は国内SFのベストとして、『天夢航海』は97年の大穴(私にとっては)として選んだ。『レフトハンド』『妖都』は、首をかしげたくなるような箇所もいくつかあるのだが、これからに期待、ということで。
 小説以外では:
・『SF大将』
・「ねらわれた学園」(テレビシリーズ)
 が、よかったと思う。

岡田純一
『BRAIN VALLEY』瀬名秀明( 2.5点)
 終盤の展開が、いきなり過ぎるって言うか、制御不能になりかけているような印象がありましたけど、あの「神」や「奇跡」の説明はすごく気に入りました。
 私はプログルラマやってるんで、「ヴァーチャル生命体」による「シナプスの模倣」。ヴァーチャルブレインも興味深かったです。遺伝子アルゴリズムはラッカーファンのわたしにはお馴染みのものでしたけどね。
『あいどる』ウィリアム・ギブスン( 2.5点)
 一言で言えば「かっこいい」。理屈ぬきでそう思います。ストーリーを追っかけるのが大変だと思うときもありますけど。う〜ん、感想が言いづらいなあ。「とにかくかっこいい」としかいいようがないようなあ(^^;
 あと、職業柄ボキャブラリーが増えて便利ってのもありますけど(ジャックインとかエッジとか)。

岡原宏太
『花粉戦争』ジェフ・ヌーン(1点)
 冒頭が最高です。
『リトル、ビッグ』ジョン・クロウリー( 3.5点)
 これを読まずに1997年は語れない(かも)。
『火星夜想曲』イアン・マクドナルド( 0.5点)
 短編に比べるとまとまりを欠いているように思う。
 話題になった本がどうしようもなくトンデモだったりしたことが多かった年でした。今年こそ『エヂプト』が読みたいです。

岡元 訓(電猫庵
第1位『火星夜想曲』イアン・マクドナルド(早川文庫SF)2点
 今年は当然これです。これだけでも今年は満足。
第2位「本」(『人獣細工』所収)小林泰三(角川書店) 1.5点
 今年の日本SFは短編に収穫が多かったと思うのですが、そのなかでやはりこの話は呆気にとられたという意味でポイントが高いです。
第3位『SFバカ本 たいやき編』大原まり子・岬兄悟編(ジャストシステム)1点
 ウケルが勝ちってことで。「西城秀樹のおかげです」は読むべきでしょう(笑)。
第4位『Brain Valley』瀬名秀明(角川書店) 0.5点
 何だか近頃の社会の雰囲気をよく表していて、良くも悪くも「現在の」物語になっている気がします。でもまぎれもなくSF。

風野春樹(http://www.geocities.co.jp/Technopolis/2081/
『火星夜想曲』イアン・マクドナルド(ハヤカワ文庫SF)1 点
 やはり、97年はこれを入れなければ始まらないでしょう。
『火星転移』グレッグ・ベア(ハヤカワ文庫SF)1 点
『女王天使』よりオーソドックスで50年代的なこちらの方が好みです。
『魔の聖堂』ピーター・アクロイド(文藝春秋)1 点
 ロンドン版帝都物語。
『真夜中の弥次さん喜多さん』しりあがり寿(マガジンハウス)1 点
 ディックを思わせる優れたSFだと思うのですが。
『BRAIN VALLEY』瀬名秀明(角川書店)1 点
 力技で読ませる作品。国内SFでは文句なくベスト。

川島秀一
『火星夜想曲』イアン・マクドナルド(1点)
 本当は2点あげようかとも思ったんですが、おそらくぶっちぎりの1位だろうということで他の作品にまわすことにしました。印象に残ったエピソードは、ギタリストが雨を降らすものです。ロックファンとしては感動的でした。
『火星転移』グレッグ・ベア(1点)
 ベアの2作『火星転移』と『女王天使』は、どちらも90年代SFを代表する力作だと思います。テーマは違うものの両作品とも未来社会の詳細な描写から中心をなす大掛かりなアイデアまでSFてんこ盛りといった感じで堪能しました。ただ『女王天使』はブゥードゥー関係の予備知識がなかったことなどから多少読みにくかったので、よりダイナミックで分かりやすかった『火星転移』を選びました。
『光の帝国――常野物語』恩田陸(1点)
 こういう、ほろっとさせられる連作短篇はいいですね。続きがぜひ読みたい。
『BRAIN VALLEY』瀬名秀明(1点)
 全体としては不満もあるのですが、意欲作だと思います。
『ターミナル・エクスペリメント』ロバート・J・ソウヤー(1点)
 SFを読まない読書人にも自信をもって勧められる良書だと思います。
(参考作品)
『ワイルドサイド』スティーヴン・グールド
『ジャンパー』スティーヴン・グールド
 両作品とも新しくはないアイデアを面白く読ませる力量には感心しました。
『ウォーレスの人魚』岩井俊二
 予想外に面白かった作品です。

喜多哲士(http://www4.justnet.ne.jp/~tetsuji-kita/
『ブルー・マスク』菊地秀行(祥伝社ノンノベル) 2点
『炎都』『禍都』柴田よしき(徳間ノベルス) 2冊で3点
 「S−Fマガジン」にも書きましたが、どうもプロ諸氏の目は菊地秀行さんに対して厳しいと思います。 『ブルー・マスク』 は「マン・サーチャー・シリーズ」の中でも3本の指に入るできばえだと思うのですが。
『炎都』『禍都』 は本当は完結編が出てから評価すべきかもしれませんね。純SFとは言い難いですが、物語のスケールの大きさは最近のSF作家にはあまり見られないものがあると思うのです。

紅蘭るい(A HREF="http://www.geocities.co.jp/Technopolis/3244/index.html">http://www.geocities.co.jp/Technopolis/3244/index.html )
 昨年一年間でろくによめなかったので、一点がけにします。(^^;)
 梶尾真治『ちほう・の・じだい』に5点 お願いします。
 懐かしい感じでした。とても。おもわず、 『地球はプレインヨーグルト』 をひっぱりだしてきて連読してみたりしました。(リリカルSFをもう少し増やしてくれると良いのに……。)やっぱり、このカジシン感覚がすきです。

小久保 温
 順不同で、
『風車祭 -- カジマヤー -- 』池上永一著(講談社)
『リトル、ビッグ (I ・II) 』ジョン・クロウリー著 鈴木克昌訳(国書刊行会)
『福音を売る男 -- いまだ誰も神を見ず--』無比著(ジュピター出版)
『BRAIN VALLEY (上・下) 』瀬名秀明著(角川書店)
に1点ずつ投票します。
  『風車祭』 『リトル、ビッグ』 は、いわゆる普通の意味でのSF色は薄いものの、異界を描いた小説としては、文句無しの傑作でした。
  『福音を売る男』 『BRAIN VALLEY』 は、共に神秘体験を扱いながらも、その方法論は全く異なっています。
 あまりに偉大な One & Only の佳作( 失敗作?) 、 『福音を売る男』 は、作者渾身の一冊と言えるでしょう。あきれる程、荒削りながら、忘れることのできない強烈な印象を残します。
  『BRAIN VALLEY』 は、未来を語ることができた古き佳きSFの時代を彷彿とさせてくれる作品でした。

小林 泉
 ――新作SFはあまり読めなかったので、周辺書が多くなっています。まだ読めていない今年の作品も当然多いのですが……
『光の帝国――常野物語』恩田陸(集英社)
 全体の構成としては問題ありますが 1点
『長安牡丹花異聞』森福都(文藝春秋)
 遠心分離、細菌培養、プロスタグランジン……
 薬学出身の持ち駒を生かして自分の好きな唐やその前後の時代の中国歴史物に振りかけた短編集。→平成の『妖異金瓶梅(by山田風太郎<元医学生>)』(笑)
 今後の期待を込めて 1点
『そは何者』東郷隆(文藝春秋)
 鴎外編は東映の小林義明(あるいは澤井信一郎)監督的画面が思い浮かぶ。物の値段、新聞記事など、若干資料がかち過ぎている感じもしなくもない。 1点
『ライトジーンの遺産』神林長平(朝日ソノラマ)
 やや物足りない。(人間が意識としてすくいあげて認識する以前に肉体は存在する。“臓器”という概念は極めて人工的な物なので。胃と食道の境目なんて決め方は何通りもある。どの決め方に従って分けるか、というのは学会や人間の決めた約束事に過ぎない。あるホルモンを人間が発見したとき、研究を重ねていくうちに幾つもの違った機能が見つかるなんてことはざらだったりする。腕、なんていう臓器と皮膚という臓器を並列に語っているし。)眼の話はD坂〜みたいであった。 1点
『新化』石黒達昌(ベネッセ)
 (森下註:当初は姫野カオルコ『受難』でしたが後に『新化』へ変更) 1点
――次点・ならびに再刊本・周辺書の周辺書――
『第81Q戦争』コードウェイナー・スミス(ハヤカワ文庫)
 好きなもので……
『フィアサム・エンジン』イアン・バンクス(早川書房)
 ストレートな新作SFも一本くらい挙げておかないと。
『鳥玄坊先生と根源の謎』明石散人(講談社)
 奇天烈な本。(高橋克彦が裏表紙に書いていたとおり)確かに小説としては評価ゼロ。ネタは面白いがキャラクター≒作者が嫌な奴で感情移入できない。
『蔦葛木曾桟』国枝史郎(講談社文庫)
 一応、下巻は97年1月なので……
『暗黒旅人』大沢在昌(角川文庫)
 読んだのは文春文庫なのですが、角川版は97年なので……
 非常に好みなSF系ホラーアクションです。
『妖都』津原泰水(講談社)
 全体の構成としては破調。ややもったいない。
 華麗・けれんの永井豪、能力は榎木津。
『ヴァージン・システム』弓原望(集英社)
 デュマレストサーガや星界の紋章など、地球発宇宙移民何百何千年私は誰この慣習は何あなたたちは何者なのSFに含まれる一作。
『天山を越えて』胡桃沢耕史(双葉社文庫)
 読んだのは徳間文庫なのですが、双葉社は97年なので……
『カスティリオーネの庭』中野美代子(文藝春秋)
 この↑二作SFじゃありませんね。

齋藤 聡
『女王天使』グレッグ・ベア(4点)
『天使墜落』ラリー・ニーヴン、ジェリー・パーネル&マイクル・フリン( 0.5点)
『輝く永遠への航海』グレゴリイ・ベンフォード( 0.5点)
ハイテク描写満載で技術によって変容した社会をカッコヨク描いてくれる作品がやはり良いですね。

斎藤樂(http://www.cyberoz.net/city/nonoi/
『KEY THE METAL IDOL』佐藤博暉(5点)
 自分にとって97年のSFは、これ抜きには考えられません。疵はそれこそたくさんあるのですが、それ以上の核をみせてくれたので。
 SFは“器”でも“物語を制限”するものでもないと確信できます。ほんとは0.1 点くらい「SFクズ対談」にあげてもいいのですが。
森下註:『KEY THE METAL IDOL』はオリジナル・ビデオ・アニメーションですね。投票対象は1997年に刊行された作品――つまり活字作品とさせていただいてますので、斎藤さんの票は、残念ながら、参考にとどめさせていただきます。

塩飽 利昭
『ブラッドジャケット』古橋秀之(電撃文庫)
前作「 ブラックロッド」 もおもしろかった。2.5点
『星は、昴』谷甲州(早川文庫)
やっぱ谷甲州はこうでないと。1.5点
『ミッドナイト・ブルー』ナンシー・A・コリンズ(早川文庫)
結構グロいけど緊張感たっぷり。 1点

白城弥生(WhiteCastle
各1点
『星は、昴』谷甲州
 これぞ正統派SFということで。読んで損はないです。
『敵は海賊・A級の敵』神林長平
 楽しい。相変わらずの神林です。
『Mother〜そして、いつか帰るところ〜』高野冬子
 あらけずりだけど、すごくいい。新井素子の「ネプチューン」を彷彿とさせる話。
『銀の刻印〜インテリジェント・チルドレン〜』橘有未
いろいろと発展させられそうなテーマを含んだ話。
『第81Q戦争』コードウェイナー・スミス
 昔、わくわくしながら読んだSFを思い出します。
 と思ったら、作品自体は古いんですね(^^;;
(選外)
『機械どもの荒野』森岡浩之
 元気でパワフルで荒れた未来の話。文章はひどいですが、話はよいです。
 昔の図子慧のように、「コバルトだとあなどったら痛い目見る話」がないのが、現在のコバルトへの不満でしょうか。
 でも、コバルトのSFは、意外と穴場だと思います。

新保 明(ashinbo@tecnet.or.jp
 SFを読み出して早30数年が経ってしまいました。あのころは出版数も少なく、1年間に出版されるSFのほとんどを読むことができましたが、現在の出版数ではとても読み切れません。
 私の少ない読書数から下記の通り選出させていただきます。
 順位なし、各作品に均等に点数振り分けて下さい。
1.『3001 THE FINAL ODYSSEY』
 2001を初めて映画で見た感激は今でも忘れることができません。この物語もいよいよ終わってしっまたかと思うと感慨深いものがあります。
2.『GLIMPSES』
 元ロック大好き中年としては、非常に楽しく一気に読み通してしまいました。
3.『ライトジーンの遺産』
 恥ずかしながら、SMマガジンのBEST選出まで気にしていませんでした。近所の図書館で借りてきて、一気に読み終わったところです。
 ぜひ続編を読んでみたいものです。
4.『DESOLATION ROAD』
 読みながら、各場面が頭の中に浮かんできました。現代の火星年代記 わかるような気がします。
5.『MOVING MARS』
 なにも言うことはありません。期待に違わずすばらしい作品でした。

タカアキラウ
『ちほう・の・じだい』梶尾真治
『天使墜落』ラリー・ニーヴン、ジェリー・パーネル&マイクル・フリン
『名誉のかけら』ロイス・マクマスター・ビジョルド
『BRAIN VALLEY』瀬名秀明
『ジャンパー』スティーヴン・グールド
 ・各1点

高橋征義(http://www.inac.co.jp/~maki/
『SF大将』とり・みき(0.5点)
 雑誌掲載時、「ソングマスター」の回を読んで奮えたのを思い出します。
『消えた少年たち』オースン・スコット・カード(0.5点)
 ぼろ泣き。
『BRAIN VALLEY』瀬名秀明(0.5点)
 批判したいところもなくはないですが、後半の「神」のシーンはSFが立ち上がってくる瞬間をかいま見た気分がしたので。
『ごむにんげん』浩祥まきこ(集英社コバルト文庫)(0.5点)
 浩祥まきこは、自然体で非日常を描けるところが いいです。雑誌掲載の短篇『冬眠する姫』もなかなかの佳作でした。
『レフトハンド』中井拓志(0.5点)
 話の組み方や語り口にぎこちないところがありますが、その意気は買います。
 ただでさえ読書量が少ないのに、去年は近年稀なほど読まなかったので、点数は抑えます。

Tanaka masaki
 今年はSFらしいSFをあまり読まなかったので、読んだ中からとにかくSFっぽいものを選んでみました。
『BRAIN VALLEY』瀬名秀明(2点)
 脳をテーマにしたことがとても現代的だなと思いました。傑作だと思うのですが、終盤の展開にはちょっと納得いかない部分があります。
『瞬間移動死体』西澤保彦( 0.5点)
 SF的設定のミステリというジャンルは完全に確立されましたね。これからも西澤氏にはこの手の小説をどんどん書いてほしいです。
『禍都 City Catastrophe 』柴田よしき( 1.5点)
 前作の『炎都 City Inferno』と合わせておすすめの伝奇小説です。
『3001年終局への旅』アーサー・チャールズ・クラーク著/伊藤典夫訳( 0.3点)
 一応、シリーズ完結(?)ということで。
『天夢航海』谷山由紀( 0.7点)
 宇宙船がでてくるのでSFでしょう(^^)。
 最近、心にズキズキすることをジュブナイル系の小説に 言われることが多い気がします。高校生の頃に読んでいたら まったく違う感想を抱いたかも。

タニグチリウイチ(http://www.asahi-net.or.jp/~wf9r-tngc
 「冬の時代」なんて大嘘とばかりに97年も面白く楽しいSFを沢山読むことができました。とても順位を付けて選ぶなんてことできませんが、折角の機会なのであんましSFフィールドではメジャーでない(失礼)中から印象に残った5冊を挙げさせて頂きます。
『ヴァンデミエールの翼』第1巻、第2巻 鬼頭莫宏(講談社 アフタヌーンKC)
『天夢航海』谷山由紀(朝日ソノラマ)
『プリンセス・プラスティック −母なる無へ−』米田淳一(講談社)
『メッセージ・ボード』藤原智美(読売新聞社)
『メイの天使』メルヴィン・バージェス(東京創元社)
 各1点。
といっても同列の次点として 『炎都』&『禍都』(柴田よしき、徳間書店) 『時を飛翔する女』(マージ・ピアシー、學藝書林)、『妖都』(津原泰水、講談社)、『グリンプス』(ルイス・シャイナー、東京創元社) などが並んでます。 『マックス・マウスと仲間たち』(松尾由美、朝日新聞社) も面白かったなあ。再刊物では 『SF集2 女と女の世の中』(鈴木いづみ、文遊社) 『幻魔大戦』(平井和正、アスペクト) をチェック。後者はとにかくファンだったものですから。半分再刊ですが 『遠くへいきたい』(とり・みき、河出書房新社)の第1巻と第2巻 はとり・みき節が炸裂して最高でした。漫画ではあと 『ひみつの階段1』(紺野キタ、偕成社) がほのぼのとして良かったですね。

辻久仁子
『火星転移』グレッグ・ベア(2点)
 読み終わってみればタイトルがすべてを象徴していたのに後半になるまでそんな結末 になるとは……。やっぱりマーズパスファインダーの火星着陸記念もあわせて2点でも少ないくらいでしょうか。
『新化』石黒達昌(1点)
 実は他の作品(この前の長いタイトルのハネネズミの前作を含む)もトータルで読んでしまうと素直に点を入れたくない気もするのですが、このストーリーは私にとってひどくインパクトのあるものだったのでやっぱり1点入れます。地味ではあるけれどなんか作者のこだわりがひしひしと伝わる気がしました。
『内海の漁師』(特に「物事を変えた石)アーシュラ・K・ル・グイン(1点)
 彼女の作品は、私にとってはより難解に思えるのですが。文化人類学的アプローチを素直に感覚的に楽しめないんですよね。ひどく好きなシーンがあっても、物語としてわかるかというと?。この短編集の中ではこのストーリーがタペストリーのようなモザイクが想像できて楽に読めた気がします。
『スペアーズ』マイケル・マーシャル・スミス(0.5点)
 どちらかというとファンタジーだと思うのですが。設定とかアメリカ映画が好きそうですよね。ギャップの描写が少し安っぽい感じがするのですが。ベトナム的というか。
 点数が少ないようなので、映画化への期待点も含めて。
 あと、点数は入れませんがホームページにも少しコメントがあったので『Brain Valley』について。
 端的に言えば『パラサイト・イブ』の方が物語としてよかった。前半の科学的な伏線が後半のストーリーに反映されているとは言えないと思う。せっかく上巻をちゃんと読んだのに後半はこれだけ?ってかんじでした。
 まあ、どうしても、『ターミナル・エクスペリメント』とか、『Brain Valley』とかは自分の専門ともだぶってしまうので点数が辛くはなってしまうのかもしれませんが。神の漠然とした存在とエイリアンという俗っぽい存在。そしてストーリーの必然性。どれもあまり有機的につながっているとはいいがたかった。
 ニューラルネットワークの”みえる”といういくつかのシーンでこれってニュータイプ(もちろんガンダムの)じゃないかと思ったのは私だけでしょうか。進化→認識力の拡大→ニュータイプ
 気になったのはあとがき。たんに科学者に真実ではないと言われないために物語の規模を小さくしたり、細かいことがらを記述するのであれば。それこそが作者指摘するところのSFの難解さにつながるのではないかと……。

とき
 読んで面白かったのは、文句なく オースン・スコット・カードの『消えた少年たち』 です。これに 3点
 残りの 2点 は、 恩田陸さんの『光の帝国』 に。
  ジョン・クロウリーの『リトル、ビッグ』 も面白かったですよ。
 それに、 鶴田謙二さんの『Spirit of Wonder』 も名前を挙げたい。
 あと昨年末に出る予定だったけど、今年にずれ込んだ 秋山完さんの『ペリペティアの福音』 は(まだ上巻しか読んでないけど)なかなかいいですね。

根木島 由子(http://www.fsinet.or.jp/~okko/
1.『火星幻想曲』イアン・マクドナルド(2.5 点)
2.『グリンプス』ルイス・シャイナー(2点)
3.『ターミナル・エクスペリメント』ロバート・J・ソウヤー(0.5 点)
 SFという枠で選びましたので、わたし自身、昨年読んだ中では『火星幻想曲』と並んで圧巻だと感じたジョン・クロウリー『リトル・ビッグ』は選外です。『グリンプス』は1960年代への思いも含めてなにより作者自身の物語でありながら、普遍性を持った作品になっているのが素晴らしい。『ターミナル・エクスペリメント』は予想を裏切る後半が楽しめました。

野田令子(A HREF="http://spinner.lab.nig.ac.jp/rn/rn.html">http://spinner.lab.nig.ac.jp/rn/rn.html/http://www.geocities.co.jp/Technopolis/1857/
1.『ターミナル・エクスペリメント』ロバート・J・ソウヤー(4点)
 4点というのは甘すぎる気もするのですが、パン属とホモ属を統合した功績で1点、魂にまつわる宗教関係のスラップスティックで1点、残りはファンのひいき目ということで。
2.『星は、昴』 谷 甲州(0.25点)
 ハードでかつ胸を締め付けられるような感覚を味わうことが出来た表題作から、コメディまで、隅々まで楽しめたので。
3.『天使墜落』 ラリー・ニーヴンet. al(0.25点)
 とてもストレス解消になったので。
 願望充足小説でしたが、夢を叶えてくれる作品も時には読みたいと思いまして。
4.『火星転移』 グレッグ・ベア(0.25点)
 女王天使も良かったのですが、やはり驚天動地衝撃の終幕が待つこちらに点を入れたいと思います。
5.『火星夜想曲』 イアン・マクドナルド(0.25点)
 皆さんが入れているので構わないかとも思いましたが、感動したのは事実なので。
#火星が並んでしまいました
番外
『ジャンパー―飛ぶ少年―』
 これも天使墜落のように(それよりはもう少し毒々しくなく)願望の充足が出来る作品でした。
『第81Q戦争』
 読みたかった一冊です。
 このほかにも山のように候補はあって、しかも読み切れなかった作品も多く(これから読みます)、97年も又充実した一年でした。
 ちなみに選外
 『ネアンデルタール人ミトコンドリアDNA配列の発表』です。
 現実離れした事件でした。何しろあのCell誌が進化の特集を組んだのですから。

野村真人(http://www.asahi-net.or.jp/~CI5M-NMR/sf/
 忘れっぽい上に、昨年前半は『SF書誌の書誌』にかかりきりであまり近刊を読まなかったので、思い出せるオーソドックスなタイトルをあげるのがやっとです。
 順不同、配点それぞれ1点。
『火星夜想曲』イアン・マクドナルド
 今となってみると、物語の記憶は断片的で、作品世界の雰囲気がそこはかとなく胸に残っているだけです。それでもひたった感覚はここちよいものでした。
『滅びの都』ストルガツキイ兄弟
 評者によって読み方が違うところもあわせて、おもしろい作家だと思っています。やはり、この作家は旧ソ連ことロシア出身ということで得をしているのかもしれません。それでもファンです。
「きょうもまた満ち足りた日を」ジョン・ヴァーリイ(SFM1998年1月号所収)
 世界がだんだんに開けてひっくりかえされていく感覚がよかった。
『BRAIN VALLEY』瀬名秀明
 生の科学とがっぷり取り組んだSFというものを感じさせてくれました。
『人獣細工』小林泰三
 かつて森岡浩之の傑作短篇「スパイス」は「はじめから人ならざる存在として作られたもの」が人間として認められる皮肉な過程を描きましたが、表題作は「はじめ人間と思っていた存在」が反対の過程をたどる点でおもしろい対照をなしていると思います。
 衝撃度はホラーに偏っていますが、クライマックスの哀しさは絶品。

林 哲矢
『星は、昴』谷 甲州(2点)
『火星夜想曲』イアン・マクドナルド(0.75点)
『花粉戦争』ジェフ・ヌーン(0.75点)
『光の帝国――常野物語』恩田陸(0.75点)
『フィアサムエンジン』イアン・バンクス(0.75点)
 本当は『リトル・ビッグ』と書きたいんですが、そうすると1作5点で終ってしまい、投票の楽しみも何もないので、あれはSFじゃないと、思うことにしました。ただ、それをはずしてもそれなりの作品が多かった年で、かなり充実していた気がします。選んだ作品はどれも、生涯ベストに入るような作品ではないのですが、年にこの辺が5冊あれば文句はないくらいのものです。
 昨年は上の5作に『リトル・ビッグ』『三月は深き紅の淵を』で楽しく過ごせました。今年も面白い本に出会えることを期待しています。
 #特に『ヱジプト』(笑)。

東 茅子
『名誉のかけら』ロイス・マクマスター・ビジョルド(2点)
『ミッドナイト・ブルー』ナンシー・A・コリンズ(1点)
『火星転移』グレッグ・ベア(0.5 点)
『第81Q戦争』コードウェイナー・スミス(0.5 点)
『内海の漁師』アーシュラ・K・ル・グイン(0.5 点)
 『名誉のかけら』 は作品としてはビジョルドのベストではないかもしれませんが、マイルズのお母さんは一番できてるキャラクターだと思います。続きにあたる 『バラヤー』 もはやく翻訳されることを希望します。   『火星夜想曲』 (イアン・マクドナルド)は悩んだのですが、他の方が挙げておられるので私が点を入れることもないかと思い、次点にしました。  また、SFではないような気がするので欄外なのですが、 『架空の王国』 高野史緒がとても楽しめました。

ひらやま ひろゆき(http://www.asahi-net.or.jp/~fq4h-hrym/
『SF大将』とり・みき(2点)
個人的には97年最大の収穫だと思うのですが…‥
『BRAIN VALLEY』瀬名秀明(1点)
とりあえずSFといっても良いのではないかと…‥
『ジャンパー』スティーヴン・グールド(1点)
古典的なアイデアでもここまでおもしろくできる!
『ターミナル・エクスペリメント』ロバート・J・ソウヤー(1点)
やっぱりソウヤー(^^;
○番外
『SFへの遺言』小松左京
『塵も積れば…宇宙塵四十年史』「宇宙塵四十年史」編集委員会
上記2册も97年の大収穫だと思います。
#創作ではなかったので配点0ですが。

細井威男(http://www.osk.3web.ne.jp/~hosoit
『火星夜想曲』イアン・マクドナルド(ハヤカワ文庫) (2点)
 これに出会って現代のSFを本格的に読もうと思いました。
『大日本天狗党絵詞』黒田硫黄(講談社アフタヌーンKC)(1点)
 Scienceじゃないですが,奇想が十分に生かされているので。
『ベイスボイル・ブック』井村恭一(新潮社) (0.5点)
 やや不満がありますが。
 残りの1.5点は期間内に読めなかった『リトル、ビッグ』と『光の帝国』に置いておきます。

水谷 真理子
『ライトジーンの遺産』神林長平
 おぞましい、けど、カッコイイ。
『敵は海賊・A級の敵』神林長平
 わーニワトリだ、ニワトリだ。
『アルカイック・ステイツ』大原まり子
 これは・・・凄い!
『戦争を演じた神々たちII』大原まり子
 まさにSFの美学。
『機械どもの荒野』森岡浩之
 機械がいっぱい出てくるので◎。
   (各1点)

Mizoguchi Tetsuro( 『書物の帝国』
『消えた少年たち』オースン・スコット・カード(4点)
色々な意味で感慨深い逸品、家族の愛、絆、信じることとはを再確認させてもらった一冊。そして、衝撃のラストは読む者の心に響きわたることになるでしょう。
『人獣細工』小林泰三( 0.5点)
日本ホラー作品の中でも短編を書かせたらピカ一ではないかと思います。特に闇にうごめく者どもを感じさせる所が凄い。
『火星夜想曲』イアン・マクドナルド(0.5 点)
侘、寂というのを感じさせていただきました。何というか、こういう作品がどんどん発売されればいいなと思うのですが。火星を舞台にした作品の中でもピカ一かなと思います。

向平 真
 今年は日本SFに収穫がたくさんありました。海外SF中心に読んでいる私としては、本当に異例のことで、「クズSF論争」をなぜこの時期にしなければいけないのか、理解に苦しみます。むしろ問われるべきなのは、「SF雑誌のあり方」なのではないでしょうか。
『どこかにいってしまったものたち』クラフト・エヴィング商會(筑摩書房)3点
 この作品については、今さら言うべきこともないでしょう。これほど明確で分かりやすく「SFとは何か」を提示してくれた作品もないと思います。一般読書評ではあちこち取り上げられたのに、SF側からの注目がほとんどなかったのは問題です。むしろ深刻なのは、作家ではなく、作品を掘り起こすSF評論家の不足なのかもしれませんね。
『ベイスボイル・ブック』井村恭一(新潮社)1点
 今回の日本ファンタジーノベル大賞受賞作。大森望先生は『ユニヴァーサル野球協会』じゃないかと言っておられましたが、私が思いだしたのはむしろ残雪の『黄泥街』でした。固有名詞から普通名詞へ、普通名詞から形容詞へと主語がするするとスライドしていく不可解さがグロテスクで強固な世界観を提示しています。ラストのスケールの大きさも含めて、SFはこうした「わけのわからなさ」があってほしい、と思う私です。優秀賞の『漕艇海域』は、何かどこかで見たような話で、あまりSFらしさは感じませんでした。
『火星夜想曲』イアン・マクドナルド(ハヤカワ文庫) 0.5点
『新化』石黒達昌(ベネッセ) 0.5点
 いかにもSFらしい「ホラ話」を正反対の手法で楽しませてくれた二冊に。
 このほかにも『リトル、ビッグ』『赤い館』『滅びの都』『虫の生活』など、楽しめた本は多いのですが、「SFではない」「こちらが作家の作風に慣れてしまい衝撃度が減った」など公的、私的さまざまな理由から取り上げませんでした。
 あと新刊ではありませんが、ジョン・スラデック『見えないグリーン』(ハヤカワミステリ文庫)が再刊されたので読んでみました。全然期待してなかったのですが、ミステリだろうがなんだろうがスラデックはスラデック、という感じでメチャクチャ面白かったです。米軍の陰謀とか、暗号解読とか、「第三世界のSFを紹介する季刊雑誌を作る編集者」とか出てきますもの。『Bugs』以来邦訳もありませんが、誰か「ロデリック」とか翻訳してもらえないものでしょうかね(笑)。

森太郎(http://ha2.seikyou.ne.jp/home/kawa/103_mori
『リトル、ビッグ』ジョン・クロウリー(2.5点)
 今年最大の、そして私の読書暦屈指の大傑作がこの本です。高い定価、読みにくい文章、SF度の低さという三重苦(?)を跳ね除けての2.5点です。
『アルカイック・ステイツ』大原まり子(2.2点)
 私好みの小説を書きつづけている大原まり子の今年の最大の収穫です。いろいろ批判はあるようですが、私は大好きなので2.2点。
『戦争を演じた神々たち2』大原まり子(0.1点)
 これは『戦争を演じた神々たち』よりやや面白くなかった(前作が極端に面白すぎただけですが)ので、0.1点。『アルカイック・ステイツ』との差が大きいのは2作に点を集めたかったからです。気持ちとしてはそんなに大きな差は開いていません。
『火星夜想曲』イアン・マクドナルド(0.1点)
  『リトル、ビッグ』より小説らしいし可読性も高い。値段もお手頃でSF度が高いけど迫力でやや負けている感じなので0.1点です。
『星は、昴』谷甲州(0.1点)
 日本人の手による活字SFの底力、みたいでいい感じです。SFファンになら誰にでも安心して勧められるいい感じの短編集でした。でも、上位2作に点を集めたいので0.1点。
 SFだとは感じなかったなどの理由で票には入れなかった大傑作がいくつかあるので書くだけ書いておきましょう。
『架空の王国』高野史緒
 前作の方が私好みなんですが、まさるとも劣らない傑作であることは間違いないでしょう。SFじゃないので入れませんでした。
『青ひげ』カート・ヴォネガット
 文庫版は去年出たので一応『1997年1月1日から12月31日までに国内で出版され』には該当すると思うんですが、SFじゃないので入れませんでした。
『戦争を演じた神々たち』大原まり子
 ノベルズで出直したので『青ひげ』と同じ理由で該当すると思うんですが、『戦争を演じた神々たち2』に入れるからいいや、てな具合でこちらへの投票は断念しました。
『Spirit of Wonder』
 実質的には復刊だということで入れませんでした。97年のSFマンガ最大の収穫ではあるんですが。

森下一仁(morisita@ca.mbn.or.jp
『星は、昴』谷甲州
『光の帝国 常野物語』恩田陸
『新化』石黒達昌
『グローバルヘッド』ブルース・スターリング
『火星夜想曲』イアン・マクドナルド
 各1点。
 うーん、5点に絞るのはむりだったかも。 M・M・スミス『スペアーズ』 はぜひとも入れたかったのだが……。
 並べたい作品がいっぱいあって、去年は大豊作というところ。

森山和道(独断と偏見のSF&科学書評
 各1点、順不同です。
『第81Q戦争』コードウェイナー・スミス
『ターミナル・エクスペリメント』ロバート・J・ソウヤー
『スペアーズ』マイケル・マーシャル・スミス
『Brain Valley』瀬名秀明
『ウォーレスの人魚』岩井俊二

柳庵
『第81Q戦争』コードウエイナー・スミス(1.5 点)
 スミスの華麗な世界がまた堪能できるこの喜び、この感動、エヴァから入った奴にはわかるめえ。
『黒いカクテル ジョナサン・キャロル短篇集』ジョナサン・キャロル(0.5 点)
 ジョナサンキャロルらしい珠玉のダークファンタジー。
『内海の漁師』アーシュラ・K・ル・グイン(0.5 点)
 さすが、SF海の女王、良き魔女の名は伊達じゃない。中編群のキレ、文章の豊穰さ、バランスのよさ、さすが。
『ライトジーンの遺産』神林長平(1.5 点)
 読み終えた瞬間97上半期のベストをしめた程の作品。設定の細やかさや魅力、作品中のキャラクター、うまいですな〜。
『鈴木いずみコレクション4 女と女の世の中』鈴木いずみ(1点)
 SF冬の時代、火星の時代に遅れてきた世代である我々20代SF者に鈴木いずみを読む機会を与えてくれた文遊社と、20年経っても古びない作品群を残してくれた彼女に感謝。
参考作
『いとしい』川上弘美
 王家衛の映画の如く壊れた人々を、彼の様なエッジの立った絵ではなく、限りなく暖かな視線で描いた良作、誰が何と言おうとヲレの中ではSFなのだ。

依光秀志
『花粉戦争』ジェフ・ヌーン(1点)
『ブレードランナー3』K・W・ジーター(1点)
・残り3点……棄権

匿名希望1
『ライトジーンの遺産』神林長平( 2.5点)
『星は、昴』谷甲州( 1.5点)
『火星転移』グレッグ・ベア(1点)

匿名希望2
『火星夜想曲』イアン・マクドナルド(3点)
『リトル、ビッグ』(2点)
『リトル、ビッグ』は未読なのでカウントしないっていうのはダメでしょうか。(森下註:認めます。『火星夜想曲』3点のみ有効ということで集計しました)

匿名希望3
『ちほう・の・じだい』梶尾真治(5点)


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