「ベストSF '96」集計報告


1997年2月17日現在(投票者数32・参考1)

ベスト5


(海外)


『ハッカーと蟻』ルーディ・ラッカー


『つぎの岩につづく』R・A・ラファティ


『ゴールド―黄金―』アイザック・アシモフ


『さよならダイノサウルス』ロバート・J・ソウヤー


『ヴォル・ゲーム』ロイス・マクマスター・ビジョルド


(国内)


『MOUSE(マウス)』牧野修


《星界の紋章シリーズ》(『星界の戦旗T』を含む)森岡浩之


『図南の翼』小野不由美


『デッドソルジャーズ・ライヴ』山田正紀


『東京開化えれきのからくり』草上仁

1位に輝いた方のお言葉


大森 望 様(海外部門1位『ハッカーと蟻』訳者)

 ありがとうございます。
 投票のことはすっかり忘れてて失礼しました(^^;)
 でもあの結果だと投票しないほうが正解だったかも(笑)
 自分の票で一位がとれても、あるいは逆の結果になってもあまりうれしくなかった気がするので。
 結果のほうはホームページで見て喜んでいたんですが、ほんとに賞状が送られてくるとは思わなかったので感動しました。

牧野 修 様(国内部門1位『MOUSE(マウス)』著者)

 嬉しいです。とにかく嬉しくてたまりません。
 拙作を選んでくださった方々に、また、このような場を提供してくださった森下一仁様にも、心から感謝いたします。
 ネオヌル以来、一度もSF同人というものに参加したことがなく、しかも周囲に本を読む人間がいないという環境で小説を書いております。そうなると、自分の書いているものが面白いのか面白くないのか、優れているのか下らないのか、なんら手掛かりが得られません。
 以前SFマガジン掲載中のMOUSEの一編を友人に読んでもらったことがあります。その時の感想は「こんな子供は嫌いだ。親の顔が見たい」というものでした。

 淋しい。あまりにも淋しい。

 このような状況の中で、表彰状に書かれてあった「最も多くの支持を集めました」の一文には思わず滂沱の涙を流し、妻と手を取り合い「よかったね、よかったね」と声を掛け合いながら近所の生国魂神社へ走り、神への感謝の祈りを捧げたのでした(ちなみにわたしの家の宗教は神道です。何の関係もありませんが)。

 というようなこともありまして、わたしは今後も執筆活動を続ける勇気を手に入れることが出来たのです。皆様本当に有り難うございました。次回作は五月発売のSFマガジン七月号『月世界小説』です。
 皆様もし、ご意見ご感想苦情等がございましたら、JCF11366@niftyserve.or.jp までご連絡ください。
 淋しい牧野がお待ちしております。

得点詳報


各投票者の推薦作(50音順・敬称略)

石山留美
『つぎの岩につづく』R・A・ラファティ(5点)…… 既刊の作品集に比べると、印象深い作品が少ない気もするのですが、好きな登場人物(怪物?)がまた増えたので、投票します。
これで、一気にラファティが上位へ躍り出てしまうのですね、責任かんじてます、、、、
上山弥生
『月の迷宮陽の迷宮』金蓮花(前・中・後編,集英社コバルト文庫――2点)…… 丁寧な作りで、素敵な話です。ちょっと甘いけど。
『図南の翼』小野不由美(講談社X文庫ホワイトハート――2点)…… 読むとあっという間にはまりました(^^)。
《星界の紋章シリーズ》森岡浩之(ハヤカワ文庫JA――1点)…… 私は基本的に「未来もの=宇宙もの」のファンなので、これは非常に楽しくよみました。
持ち点5点って、意外と配分難しいですね。いっそのこと全部同じ点数、と言うのも考えたのですが、コバルトコレクター(違うって)の私としては、やはりコバルトに高得点を(^^;; あげたくて。
大城譲司
(海外)
『女たちのやさしさ』J・G・バラード(岩波書店)…… 英語は読めませんが、日本語は読めます。この訳はもしかすると「ひどい」んじゃありませんか?
『M・D』トマス・M・ディッシュ(文春文庫)
『異形の愛』キャサリン・ダン(ペヨトル工房)
『Xのアーチ』スティーヴ・エリクソン(集英社)
『戦いの後の光景』フアン・ゴイティソーロ(みすず書房)
(国内)
『肉体のヌートピア』永瀬唯(青弓社)
『バベッジのコンピュータ』新戸雅章(ちくまプリマーブックス)
『ジェンダー城の虜』松尾由美(ハヤカワ文庫JA)
『パワー・オフ』井上夢人(集英社)
『蛇を踏む』川上弘美(中央公論社)
各0. 5点。ジャンルSFには、まるで目が向いていないという選択になってしまいますが……
太田芳彦
《星界の紋章シリーズ》森岡浩之(2点)
『東京開化えれきのからくり』草上仁(SFマガジン2〜7月号)(2点)
「ミューザック、ミューザック」草上仁(SFマガジン8月号)
『デッドソルジャーズ・ライヴ』山田正紀
『ハッカーと蟻』ルーディ・ラッカー
なんだか今年は海外SFよりも日本のものの方が面白いものが多かったですね。ラファティはどうも昔から波長の合うものと合わないものが分かれてしまうようです、私の場合。
大野克久(http://plaza3.mbn.or.jp/~paonyan/
『ハッカーと蟻』ルーディ・ラッカー
『アインシュタイン交点』サミュエル・R・ディレイニー
『つぎの岩につづく』R・A・ラファティ
点数は均等。ただ単に、好きな作家たちだからということでこの3つに投票します。ですから、もし万が一クリス・ボイスの新作なんかが出ていたら、一も二もなく「ボイスさんに5点全部」になったはずです。
岡田研一
『女たちのやさしさ』J・G・バラード(2点)
『ハッカーと蟻』ルーディ・ラッカー(0. 5点)
『肉体のヌートピア』永瀬唯(1点)
『蓮ちゃんの神さま』東郷隆(0. 5点)
『インターネット中毒者の告白』J・C・ハーツ(0. 5点)…… ノンフィクションですが、カッコイイSFです。バーセルミが書いた「インタネット・ライフ」、あるいは「マルコポーロの見えないネット」といった雰囲気が、素敵です。
岡元訓(http://www.ed.noda.sut.ac.jp/~j6294033/
『虚空のリング』スティーヴン・バクスター…… あんだけ壮大な話は今時珍しい。
『さよならダイノサウルス』ロバート・J・ソウヤー…… 純粋にSFらしさを感じさせる作品。
『ハッカーと蟻』ルーディ・ラッカー…… 前ほどハチャメチャな話でないのが残念。
尾山 則子
『MOUSE(マウス)』牧野修(3.5点)……配点のうち、3点は「ラジオ・デイズ」に。小説読んでぽろぽろ泣くなんてことは、このところありませんでした。大好きです。
『アインシュタイン交点』サミュエル・R・ディレイニー(1点)……配点のうち0.5点は、この20年間に。(にしては少なすぎるでしょうか……(笑))
『ハッカーと蟻』ルーディ・ラッカー(0.5点)
はっ、しまったあ! もう一日以上(涙)。でもお言葉に甘えて、投票です。(森下註:2月17日投票)
栢 伸一
『さよならダイノサウルス』ロバート・J・ソウヤー(4点)…… 古いパターンとはわかっていても、この手の小説には何かさわやかな読後感がついてまわるので捨て難いのです。
『ミラー・メイズ』(創元推理文庫)J・P・ホーガン(1点)…… 何にせよもっと僕らがただただ、へぇーと感心するしかないような理系の大ホラ話を読みたいのですが。『星を継ぐもの』以来の腐れ縁で1点だけ。
Kashiwagi,Kenichi
『重力の影』ジョン・クレイマー
『緑の少女』エイミー・トムスン
『ヴォル・ゲーム』ロイス・マクマスター・ビジョルド
『軌道通信』ジョン・バーンズ
『星界への跳躍』ケヴィン・J・アンダースン&ダグ・ビースン
川島 秀一
『ハッカーと蟻』ルーディ・ラッカー(3.5 点)
『大暴風』ジョン・バーンズ (0.5 点)
『ゴールド―黄金―』アイザック・アシモフ(0.5 点)
『ガイア』デイヴィッド・ブリン(0.5 点)
これでラッカーが一位に踊り出るでしょう(^-^)
神崎龍二
『星界への跳躍』ケヴィン・J・アンダースン&ダグ・ビースン(1点)
個人的嗜好はF派ですから、単純に楽しいという意味ならマキャフリーの96年出版本に各0.5 点というところ。
北千里
『ヴォル・ゲーム』ロイス・マクマスター・ビジョルド
木下充矢
『ナイチンゲールは夜に歌う』ジョン・クロウリー(2点)……もちろん「時の偉業」もいいのですが、屈折したユートピア譚「青衣」に惹かれました。
『東京開化えれきのからくり』草上仁(SFマガジン2〜7月号・1点)……語り口の生きの良さで。
『ハッカーと蟻』ルーディ・ラッカー(1点)……ソフト開発の熱気を伝えてとても面白かったのだけれど、いま少し「はじけた」結末が欲しかった。
『つぎの岩につづく』R・A・ラファティ(1点)……「太古の殻にくるまれて」が好きです。どうもウェットな話に弱いようです。
『アインシュタイン交点』と『図南の翼』をどうするか最後まで迷ったのですが、「わかった」気持ちになれなかったため『アインシュタイン交点』は見送り。大好きな『図南の翼』は、どうしても「SF」と呼ぶ自信が持てませんでした。
木之村長幸
『図南の翼』小野不由美
《ザ ナイトワールド・サイクルシリーズ》の完結:F・ポール・ウィルスン
『OKAGE』梶尾真治
小林 泉
『魔の国アンヌピウカ』久間十義
『アインシュタイン交点』サミュエル・R・ディレイニー
『韓国・反日小説の書き方』野平俊水
『特撮と怪獣 わが造形美術』成田亨(滝沢一穂編)
『テラフォーミング』金子隆一
・次点……『スミラの雪の感覚』ペーター・ホウ
・圏外:おすすめ&いろいろ……『刺青』藤沢周/『山妣』坂東眞砂子/『歴史を変えた偽書』ジャパンミックス/『シインの毒』荻野目悠樹
齋藤 聡(http://www.imasy.or.jp/~saitou
『永遠なる天空の調』キム・スタンリー・ロビンスン(2点)
『アインシュタイン交点』サミュエル・R・ディレイニー(1点)
『逆転世界』クリストファー・プリースト(1点)
『つぎの岩につづく』R・A・ラファティ(1点)
Sato,Shinya
『ゴールド―黄金―』アイザック・アシモフ(4点)
『この不思議な地球で』巽孝之編(1点)
高橋由巳子
「小羊」篠田節子(カドカワノベルズ『絆』所収。1点)
タニグチリウイチ(http://www.asahi-net.or.jp/~WF9R-TNGC
《星界の紋章シリーズ》森岡浩之(ハヤカワ文庫JA)
『真夜中の弥次さん喜多さん』しりあがり寿(マガジンハウス)
『遥かよりくる飛行船』井辻朱美(理論社)
『いつもの空を飛びまわり』スーザン・パルウィック(安野玲訳、筑摩書房)
『デッドソルジャーズ・ライヴ』山田正紀(早川書房)
各1点。次点というか、上記とほぼ横1線で『緑の少女 上・下』エイミー・トムスン(田中一江訳、早川書房)、『うつろな男』ダン・シモンズ(内田昌之訳、扶桑社)、『オズの魔女記』グレゴリー・マグワイア(廣本和枝訳、大栄出版)、『THE WHISTLING SONG』スティーヴン・ビーチー(渡辺伸也・近藤隆文訳、大栄出版)、『鬼哭。−続・晴明。−』加門七海(ソノラマ文庫)などが並びます。しりあがり寿さんでは年末に出た『瀕死のエッセイスト』(角川書店)も棄てがたい。
根木島 由子
『緑の少女』エイミー・トムスン(2点)
『死の姉妹』グリーンバーグ&ハムリー編(1点)
『逆転世界』クリストファー・プリースト(1点)
『ナイチンゲールは夜に歌う』ジョン・クロウリー(1点)
林 哲矢@名古屋大学
『つぎの岩につづく』R・A・ラファティ(2点)
『デッドソルジャーズ・ライヴ』山田正紀(1点)
『ナイチンゲールは夜に歌う』ジョン・クロウリー(1点)
『さよならダイノサウルス』ロバート・J・ソウヤー(1点)
・推薦作『小悪魔アザゼル18の物語』アイザック・アシモフ/『この不思議な地球で』巽孝之編
クロウリーの「ヱジプト」と「リトルピッグ」がでるはずの97年に期待。
林 芳隆
『月のしずくと、ジャッキーと』チャールズ・デ・リント(1点)
『虚空のリング』スティーヴン・バクスター(1点)
『惑星カレスの魔女』ジェイムズ・H・シュミッツ(1点)
『ガイア』デイヴィッド・ブリン(1点)
ひらやま ひろゆき(http://www.asahi-net.or.jp/~fq4h-hrym/
『さよならダイノサウルス』ロバート・J・ソウヤー(1点)…… ふーんという感じなのですがやっぱり捨てがたい。
『虚空のリング』スティーヴン・バクスター(1点)…… 『フラックス』とどっちにしようか迷ったのですが(今も迷っている)。
『ハッカーと蟻』ルーディ・ラッカー(1点)…… 仕事がコンピュータがらみなもので結構笑えた(笑えない?)ところがよかった。
『ブラックホールへようこそ!』クリフォード・A・ピックオーバー( 0.5点)…… 厳密には科学解説だけどとりあえず書名をあげたかった(^^;
『図南の翼』小野不由美(1点)…… 小野不由美さんは結構好きなので(^^;
『アフナスの貴石』野尻抱介( 0.5点)…… 「がんばってね」票ということで。
冬樹蛉(http://web.kyoto-inet.or.jp/people/ray_fyk/
『さよならダイノサウルス』ロバート・J・ソウヤー
『ハッカーと蟻』ルーディ・ラッカー
『デッドソルジャーズ・ライヴ』山田正紀
『大暴風』ジョン・バーンズ
『MOUSE(マウス)』牧野修
11月、12月にけっこういいものが出たので、SFマガジンへの投票とはかなり順位が変わっています。プリーストの『魔法』や日野啓三の『光』を入れたかったところですが、奥付では95年なんですよね。
古金ちあき(http://www.komaba.ecc.u-tokyo.ac.jp/~g610224/
『MOUSE(マウス)』牧野修(3.5点)…… 言葉と認識を題材としているのが好きなので。
《星界の紋章シリーズ》森岡浩之(0.5点)…… 近年の和製スペオペの一つの結果を評価して。
『ファウンデーションの彼方へ(上・下)』アイザック・アシモフ(1.0点)…… 文庫化され手軽に読めるようになった。
去年はあまりSFを読みませんでしたが、その中で好きなものを3作選びました。
宮澤泰正
『大暴風』ジョン・バーンズ(2点)
『星界への跳躍』ケヴィン・J・アンダースン&ダグ・ビースン(1点)
『重力の影』ジョン・クレイマー(1点)
『ハッカーと蟻』ルーディ・ラッカー(1点)
なんでもつめこんであるけど、どこかでこれからの行く末だとか未来だとかに思いをはせるような小松左京タイプのSFが好きです。
むろたともき
『星界の紋章/ 戦旗』森岡浩之( 5点)
boy meets girl風の作品が好きなんです.( これは少し( いや,大分) 違いますが…(^_^;)) 鬼のように多い振り仮名も,キライじゃありません.
森下一仁
『女たちのやさしさ』J・G・バラード
『つぎの岩につづく』R・A・ラファティ
『ハッカーと蟻』ルーディ・ラッカー
『ナイチンゲールは夜に歌う』ジョン・クロウリー
『M・D』トマス・M・ディッシュ
森山和道(http://www.moriyama.com/
『大暴風』ジョン・バーンズ
『虚空のリング』スティーヴン・バクスター (ただしジーリー・シリーズの代表として)
『フラックス』スティーヴン・バクスター
『ヴォル・ゲーム』ロイス・マクマスター・ビジョルド
『この不思議な地球で』巽孝之編
吉田仁美
『ゴールド―黄金―』アイザック・アシモフ
アシモフのファンなんです。彼のSFに投票できるのって、もうこの機会しかないでしょうか・・・。淋しいです。
依光秀志
『MOUSE』牧野修 (4.7点)
《星界の紋章シリーズ》森岡浩之 (0.1点)
『軌道通信』ジョン・バーンズ  (0.1点)
『緑の少女』エイミー・トムスン (0.1点)
本当は『MOUSE』に5点全部を入れようかとも思いましたが、次の3作品を捨てるのも心苦しく、気持ちだけの配点を。(^ ^;

参考(出版年度が違っていますので)
宇都宮斉(http://www2c.meshnet.or.jp/~hitoshi
『ハイペリオン』ダン・シモンズ
『ハイペリオンの没落』ダン・シモンズ
SFエッセンスの集大成という感じです(正直に言いますと、ミステリなどはともかく、SF長編をまともに読んだのはこの2冊だったりして……)。

投票・集計は次の要領で行いました。

 1996年1月1日から12月31日までに出版されたSFで、あなたがおもしろかったと思うものをEメールで投票してください。要領は次のとおりです。